このエントリーではトランプ関税は日本にとって得なのか損なのかを考える。話の持って行き方次第では意外と「日本にとっては喜ばしい動き」なのかもしれない。
トランプ大統領は関税交渉に応じる国と応じない国を分断する作戦に出た。保護主義化が進むアメリカ合衆国は新しいソ連といえるが日本はこの中に組み込まれる可能性がある。
一方でベッセント財務長官はドルの切り下げを求めてくる可能性がある。つまり我々の持っている預貯金の価格は相対的に上る可能性が見えてきた。自民党の権力基盤が崩壊すればこの動きを戦略的に利用することも可能になるが、新しい政治的リーダーの登場を待つ必要がある。
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トランプ大統領は世界を関税交渉に応じる国と応じない国に分断する作戦に出ている。トランプ大統領によれば日本は関税による強い働きかけに応じこれまでの不公平なあり方を反省したうえで「公平で正しい」道を歩みだしたことになっている。石破総理は交渉団を差し出しアメリカと「公平で正しい」国際ルールづくりを進める。
アメリカ英語では「公平で正しい」とは自分たちにとって都合がいいという意味である。そしてルールは強いものが決める。
ただし、アメリカ合衆国は中国に対して厳しい姿勢を見せている。分断構図を維持するためには「新しい同盟国」に優位性を与える必要もある。戦後すぐの日本は自由主義世界のモデルケースとしてアメリカ合衆国から優遇されていた。例えば安いエネルギーの優先供給などが考えられる。
ベッセント財務長官は「通貨」と「補助金」を交渉に含めるとしている。これまで日本の企業はアメリカ合衆国に多く投資をしてきたが今後は不況が予想される国に投資を貼り付けることになる。そして自民党・公明党政権はこれを助けてくれない。自民党・公明党政権の優先順位は権力基盤の確保であり国民経済の保護ではないからだ。つまりこれまでのように国内労働者に賃金を回さず国内投資もしてこなかった企業にとっては懲罰的動きになるかもしれない。
さらに「補助金」も攻撃対象になっている。これも主に自民党が権力基盤を維持するために利用してきたツールだった。例えばアメリカ合衆国は農業市場の開放を求めているが自民党はJA全農などに配慮して日本のコメ市場を守ってきた。おそらくベッセント財務長官は気がついていないだろうがこれは自民党政権にとってはかなり打撃になるはずだ。
ベッセント米財務長官は7日、トランプ米政権の一連の関税政策を巡る対日交渉を主導すると表明した。Xに投稿した。関税だけでなく、通貨問題や政府補助金なども議論する意向を示した。日本は、他国に先駆けて交渉開始の約束を取り付けたが、米政権は非関税障壁を問題視しており、厳しい交渉になりそうだ。
対日交渉、通貨問題も議論 財務長官が主導―米政権(時事通信)
トランプ大統領はアメリカの車にこだわっている。しかし、おそらく日本のメーカーがアメリカのメーカーに軽自動車のライセンスを無償提供しアメリカ製の軽自動車を輸出しても特に気にしないだろう。つまり形の上で日本のメーカーがアメリカの雇用創出に協力しているという姿勢さえ見せられればいい。数字が作れれば無理して嫌なものを買う必要はない。アメ車は高いというイメージがあるが通貨の関係が変わればそのイメージも変わるだろう。
主権国家としてのステータス(つまり関税自主権)さえ手放さなければ日本から中国にiPhoneを輸出しても問題にならない。つまり日本はアメリカ合衆国のオフショア生産地として機能することもできる。
つまり、今回のトランプ関税が日本に取って得になるか損になるかは今後の交渉次第ということだ。表面的にはアメリカに歩みを合わせつつヨーロッパや中国との通商も続けるという形が望ましい。
ただし、現在の動きが「新しいソ連」の形成につながる可能性もある。アメリカ合衆国が敵対するヨーロッパや中国と日本が仲良くするのは許さないと圧力をかけてくる可能性は否定できない。またアメリカのメーカーが日本向けの車を作ることなども当然許されず「アメ車」を購入するために道路規格をアメリカ並みに合わせろといってくるかもしれない。政府保護によってソフトな予算制約を課せられることになるアメリカのメーカーは次第に「アメリカ版トラバント」を生み出すようになってしまうだろう。