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関税延期の報道に振り回されるアメリカの株式市場

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ニューヨーク株式市場が一時株価上昇に転じた場面があった。関税が90日延期されるという根拠不明の報道を受けて人々が「買い」に走ったのである。ただしホワイトハウスがこれを否定したため株式市場は再び下落に転じた。

こうした噂によって株価が激しく上下動するほど市場はパニックに陥っている。その原因はトランプ大統領の拙速な意思決定にある。さまざまな噂が飛び交っているがおそらくトランプ大統領にはまとまった考えはないだろう。

つまりトランプ大統領の発言から何かを読み取ってもさして意味はないということになるが、問題は「ではどうやって正しい情報を掴むか」ということになる。まとまった人々のクロスチェックの場が必要になる。

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日本語でいち早くこの情報を拾ったのはCourrier Japonだった。噂にしか過ぎない投稿の影響で一時ダウ平均は急騰したそうだ。しかしこれをホワイトハウスが否定するとその後はまた株安が進んだ。

今回の噂はNECのハセット委員長の発言を都合よく解釈したものと見られている。「大統領だけが決められる=我々にはわからない」という発言が「大統領は決めるべきことを決めるだろう」と曲解されたのである。

It was not clear where the report originated. Asked earlier in the day about the possibility of a pause on imposing the expansive tariffs announced by President Trump last week, Kevin Hassett, the director of the National Economic Council, said on Fox News: “I think the president is going to decide what the president is going to decide.”

The New York Times(Live Update)

では大統領は何を目指して何を決めたのか。おそらくは陰謀論などにも影響を受けたごく狭い範囲の人々が近視眼的に決めたことがわかっている。ウォールストリート代表のベッセント財務長官はこの中で重要な役割を果たしていない。

関税案は主にトランプ氏側近の小人数のグループによって策定された。関係者によると、ベッセント氏は大統領執務室での会議で、さまざまな関税率に基づく市場と経済の潜在的なシナリオを提示したにとどまるという。

ウォール街、関税について大統領の翻意促すことをベッセント氏に期待(Bloomberg)

合理的な戦略がないため、トランプ政権の閣僚もきちんとした説明ができていない。仮に「ディール」のための道具だったとしても「一体何を目指したディールなのか」がよくわかっていないのだ。

さらにマスク氏のような自由貿易論者は関税はゼロにすべきだと主張している。これに対してナバロ米大統領上級顧問(貿易・製造業担当)は「マスクなど自動車組み立て屋に過ぎない」と批判している。自分の言う事を聞かずマスク氏を重用するトランプ大統領に腹を立てているのだろう。

議会共和党もトランプ大統領の真意を掴みかねており近く代表を派遣して意見を聞くことにしている。

こうした混乱状態の中でFNNはミラン論文という論文を引っ張り出してきて「トランプ大統領は安全保障と絡めてドルの切り下げを求めてくるに違いない」と主張している。米ドルの切り下げに応じないならば安全保障の提供を取りやめるのではないかという過激な内容になっている。

関税恫喝が出発点になっているためヨーロッパの反発は強い。さらに仮に製造業のためにドルを切り下げようとするとかなりの切り下げ幅となり景気悪化とインフレは避けられないだろうとする見方もある。TBS CROSS DIGは相互関税は失敗に終わるだろうという主張を掲載している。

トランプ大統領の政策に一定の合理性を見出すことで安心したいという人たちが様々な情報を発信するなかXのような断片的な短文メディアは情報収集には役に立たなくなっている。またメディア報道さえもSNSに影響され「玉石混交」といった感じだ。

こうなると改めてまとまった文章が読めなおかつコメントも充実している旧来型のSNSが役に立つということになるだろう。

おそらく一人で情報を収集していても不安になってしまうばかりだ。今回の一連の出来事を災害に捉えるならば「いざというときに役に立つオンライン情報源を普段から整備すべき」ということになりそうだ。

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