トランプ大統領の「解放の日」政策により、石破政権と自民党に動きがあった。手も足も出ないようだ。シンクタンクを作らず官僚システムにフリー・ライドしてきたツケが如実に現れている。
共同通信はGDPに与える影響は1.8%程度になるという大和総研の数字を出している。最もインパクトがある数字を引用したのだろうが数字の独り歩きは危険であると感じる。一方でREUTERSの記事を見てもだいたいどのくらいの経済損失があるかはコンセンサスがないようだ。
つまりまずはどの程度の経済損失が出るのかを考えたうえでないと具体的な政策が打ち出せないことになる。総理大臣は次の3つの指示を出した。
- 影響の十分な分析
- 米国に対する措置見直しの要求
- 国内産業への影響を勘案した資金繰り対策
分析が入っているのできちんとした数字が出てくることを期待したいところなのだがコメ問題ではきちんとした分析ができず後に「農水省の失策を隠蔽するものである」と批判が出ている。
江藤農水大臣は「理解ができない」と言っているが、そもそも論理的に算出された数字ではないので「理解ができない」のは当たり前でありなんの意味もない。
また石破総理は各党の党首を集め協力を要請するそうだが「対話」を重視する姿勢を見せておりあまり実効的な対応が期待できそうにない。
首相は官邸で記者団に対し、「世界貿易機関(WTO)協定や日米貿易協定との整合性に深刻な懸念を有している」と指摘した。適用除外を目指し、自らが訪米してトランプ氏との直接会談に臨むこともあり得ると強調。「最も適当な時期、最も適切な方法で働き掛けていくことは全くちゅうちょするものではない」と述べた。
相互関税で4日に党首会談 石破首相、協力要請へ(時事通信)
すでに分析した通りトランプ政権の関税額はアメリカ合衆国の貿易不均衡はすべて相手側政府の妨害のせいだという前提に基づいている。だから貿易不均衡の額がそのまま非関税障壁の代替変数として用いられている。
トランプ大統領にはカード(例えば米国債を売ることで財務に大きな影響を与える)などは響くだろうが、丁寧な説明はなんの意味も持たないだろう。さらにいたずらに報復をほのめかすのも効果的ではないだろう。粛々とできることを実行する必要がある。
すでに自民党保守派の中では「石破総理退陣論」が出ているそうだが、いかにもその場しのぎと言った印象。自民党は予算を通すために世耕弘成氏を差し出したが予算が通ると「本人に応じるつもりがなさそうである」と説明している。とりあえず今日がごまかせればそれでいいという姿勢。世耕弘成氏は自民党に対する対抗意識をむき出しにしており参議院選挙に自分に近い有田前市長を擁立することを決めた。
高市早苗氏ら保守派は「消費税減税くらいやらないと参議院選挙はもたない」という見解で一致したようだが、暴論を振りかざすアメリカ合衆国とどう対峙するかという具体論は出てきていない。
関税に関しては「誰が陣頭指揮を取っているのかわからない」との見解を発表するにとどまり「自分ならどうしたいか」という見解が聞かれることはなかった。
自民党の高市早苗前経済安全保障担当相は3日、米国の相互関税導入発表を巡る日本政府の対応を批判した。党本部で開かれた保守系議員の会合で「誰が陣頭指揮を執っているのか見えてこない。問題点があり、とても残念だ」と述べた。
高市氏、関税巡り「指揮見えず」 政府対応を批判(共同通信)
ヨーロッパやカナダのリーダーはアメリカ合衆国の政策はでたらめであると翻意を促しなおかつアメリカの経済と自国の経済を切り離す方向で話を進めている。カナダはおそらく歴史から学ぶならばこのような対策には一定の合理性があるが、常日頃から見識を蓄えておかなければ一朝一夕にこうした見解を導き出すことは不可能だろう。
そもそも少数与党状態で半ばパニックに陥っているためまとまった見識を示すことができない。結果的に産業界はこういう感想を持つに至った。もうめちゃくちゃだというわけだ。
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