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選挙至上主義主義 なぜ日本人は10万円商品券問題に固執するのか 

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石破総理がきっかけになった10万円商品券問題は書いていて気持ちが良かった。日本人の庶民感覚に合わせると割とこういう記事がスイスイと書けてしまう。一方で違和感も大きかった。この違和感の根幹は日本の選挙至上主義だ。この選挙至上主義は民主党の勃興期から政権担当時代にかけて徐々に形成されたものなのだが一旦できてしまうとなかなか崩すのが難しい。

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10万円商品券は許せない・ずるいという人は多いはずだ。自分たちの生活は苦しいのに国会議員だけ美味しいものを食べて10万円のお土産までもらっているからだ。自分たちも10万円は欲しいがなかなかそうは言い出せない。

政治(政策立案)にはお金がかかるというのもまた確かだが、

庶民は

  • 政治家が民のことを思えばおのずから正しい道が定まるはずである

と思い込んでいるのかもしれない。

実際の政治(政策立案)にはお金がかかる。まず統計を取り実地調査をする。さらに現在の法律を把握したうえで、識者の声を聞き、政策に落とし込んでゆく。このためには専従のスタッフや調査員が必要だ。

例えば日本銀行はこうした調査をきちんと行っているのだから「日本人は緻密な政策立案などできない」と決めつけることはできない。

ではなぜ政治は政策立案をないがしろにしてきたのだろうか。

バブル経済が行き詰まっても自民党は思い切った政策転換を打ち出すことができなかった。一度は非自民政権が作られるのだが小沢一郎らの露骨な社会党外しで混乱し政権は自民・社会・さきがけに移る。しかしこの政権も大胆な政策転換は行えなかった。

結果的に小泉純一郎というやたらに声の大きい政治家がワンフレーズポリティクスでテレビ視聴者を惹きつけるという手法を編み出した。これを逆手に取ったのが民主党だった。政府に批判的なテレビ番組で政権のムダを強調し「財源は確保できる」と主張したのだ。国民は一度はこの手法に期待する。

一方で「今までのような霞が関官僚依存は危うい」と考える政治家もいて「公共プラットフォーム」というシンクタンクが作られた。

ここで、再び出てきたのが小沢一郎だ。Wikipediaに当時の日経新聞の記事の引用が残っている。

2006年4月、党代表に就任した小沢一郎は党の資金を選挙活動に重点的に配分する方針をとったため、プラトンは活動をせばめていくようになった。

Wikipedia

時事通信によると鳩山総理は脱完了を目指し政権奪取後に戦略室を立ち上げるのだが小沢一郎らから反発され人員を確保できなかった。

鳩山総理大臣は脱完了依存で政党・官邸が主導する独自の戦略立案を目指したが、小沢一郎は選挙を第一に置き、分配を通じて党勢を拡大するという方針を取った。石破茂総理が「総合病院のようだ」と感心した田中派の選挙対策を民主党でも再現しようとしたということがわかる。

戦後の政党政治は高度経済成長からの収益を地方への分配が基礎になっている。つまり小沢一郎が悪いというよりは小沢が持っている田中派的DNAが亡霊のように平成に出てきたアメリカ型のシンクタンク政治を駆逐したことになる。日本ではこの時期にMBA型の企業統治が駆逐されており成長型の企業構造が作られることはなかった。

分配が支持の前提条件になっているのだから、当然分配がなければ支持もないということになる。

つまり少子高齢化が進めば進むほど国家財政は厳しくなり、当然縛り合いの気質が強まってゆくことがわかる。

立憲民主党も当然「縛られる側」に回ってしまうのだが野田佳彦代表は目先の参議院選挙のことで頭がいっぱいでこれに気がついていないようだ。さらには政党間で「選挙目当てのディスカウント合戦」が行われておりバスに乗り遅れたくない立憲民主党でも消費税の減免に向けた議論が始まっている。原資もないのに分配しなければ政党が支持されなくなるという焦りがあるのだろう。

Quoraのプラットフォームは現在フォロワーが8750人まで増えている。アメリカの事情を知り「政策にはお金がかかる」事がわかっている人から庶民感覚で政治を理解している人まで幅広くコメントが寄せられている。ネット民と言ってもその政治理解にはかなり幅があり一括りにできない。庶民感覚を持っている人たちは一応合理的な説明は理解するが「いやそれでも」と常識に戻ってしまうところがある。

日本の選挙至上主義は今に始まったものではなく徐々に蓄積されてきたようだ。ところが一旦蓄積されてしまうと「思い込み」をもとにした理解が支配的になり政治の側が「丁寧な説明」で押し返すことができなくなってしまう。

日本の政治はますます正確な意思決定のためにお金を使うのが難しくなり自らの首を締め続けることになるのだろう。自業自得とはいえ日本国全体にとっては決していいことではない。

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