10万円商品券問題が波紋を広げている。石破総理の不用意な商品券配布をきっかけに「岸田総理や菅総理もやっていた」ことが判明し自民党の金満体質が政治問題化しつつある。立憲民主党は庶民生活との乖離を訴え選挙戦を有利に進めたい考え。政権への擦り寄りが問題視されていた維新も「予算と商品券は別」として立憲民主党に同調し軌道修正を図っている。
読売新聞によると石破総理が国会で答弁し「ケチだのなんだの散々言われ、気にしていた」と答弁した。自身では距離を起きたかったが永田町の常識と同調圧力に屈していたことになる。石破主導による政治とカネの問題の解決は難しいことを印象付けた。清廉潔白という石破ブランドは完全に崩壊したといって良い。
この事件がきっかけとなり岸田総理も菅総理も商品券などの手土産を配っていたことが明らかになった。法令上問題がないのであれば堂々と「配っていた」といえばいいはずだが、双方の事務所ともに商品券配布の事実は認めず「法令に則ってやっています」とのみ主張している。法令が庶民感覚に合致していないことを意味するのだからむしろ法律を庶民感覚に合わせてますます厳しくすべきだろう。
一方で民主党政権の鳩山・菅直人・野田各総理にはそのような慣習はなかったということもわかっており、これが自民党に長年染み付いた慣習であるということも明らかになりつつある。日本がまだ貧しかった時代の相互扶助の伝統と説明することはできるが、現在の感覚には合致しない。自民党の意識が昭和から更新されていないことがわかる。
ここから更に浮かび上がってくるのが「選挙第一主義」の弊害だ。立憲民主党や維新も選挙対策としてこの問題を扱っており「予算とは別だ」「不信任案は安易に提出しない」と予防線を張っている。企業献金に固執するカネに汚い自民党の姿をあぶり出し選挙戦を有利に進めたいという思惑があり、野田代表は「構造的問題だ」としている。
庶民にも「高額療養費・年金・増税」など負担増を押し付けておいて、自分たちだ明け良いものを食べてお土産に商品券を貰っているのか?という反発があるようだ。
共同通信は地方の自民党員の声を紹介している。地方で真面目にコツコツと自民党を支えてきた人ほど強くこの問題に反発している。インフレや地方の過疎化などで苦しむ地域の人達にたいして肩身の狭い思いをしているのだろう。前回の総選挙でもお灸を吸えるためにわざと立憲民主党などに投票したという高齢者は多かった。参議院選挙への影響は大きいだろう。
富山市の男性党員(72)は「歴代首相も皆配っていたのだろう。庶民感覚とずれていて、許されない」と批判。派閥裏金事件から続く野党の攻勢がさらに強まると懸念し「選挙への影響は大きい」と語った。
商品券問題が拡大、参院選に不安 物価高「庶民感覚とずれ」と批判(共同通信)
一方でこの10万円という絶妙な金額がかつてのコロナ禍での10万円給付に重なって見えるのも確かだ。日本人は権利を主張すると叩かれるという意識を持っているため「庶民の生活が苦しいのだから10万円をくれ」などとはいわない。逆に「自分たちが苦しい思いをしているのだから相手がトクをすることは許さない」と社会的圧力をかけて譲歩を迫る事が多い。日本(特に地方にいる高齢の日本人)が本質的に持っているムラ的縛り合いの気質も浮かびあがる。
石破総理は「参議院選挙でも頑張りましょう」というメッセージを伝えるために一年生議員と会合を持ち「誠意の印」として10万円を配った。政治=選挙という意識が強くあることがわかる。と同時に野党もこの問題を選挙対策と考えている。また庶民も政策のことはよくわからず「なぜ配ろうと思えば配れる10万円をくれないのだろうか?」と密かに期待しているのかもしれない。
日本全体が政治=政策ではなく政治=選挙という考え方に傾いていることがうかがえる。
こうした選挙偏重の政治的環境に置いて石破総理が大胆な空気の入れ替えを通じて日本を改革することなど期待できない。自民党は間違った人に期待したということになるだろう。