「商品券石破」に新たな不安要素が浮上した。最側近の赤澤経済産業大臣に200万円の裏献金疑惑が出てきたのだ。
Quoraで石破商品券問題をみていると「なぜ側近は石破さんを止めなかったのだろう?」と疑問視する人が多いのだが、実は石破さんは周囲の言葉を聞いてしまったために商品券を渡した可能性がある。
石破総理が党内で孤立していることがよく分かると同時に、自民党が本質的に政治とカネの問題を解決できないのだろうなあと感じる。
かつて日本は貧しい国だった。新潟県で土建屋を営んでいた田中角栄氏は「困ったときには親分が子分を助けるべきだ」という貧しい時代の「昭和的親分気質(かたぎ)」を持っていた。そんな田中角栄氏に有名な「300万円の逸話」がある。昭和では美談として語られている。
「衆院選の中選挙区時代、カネに困った議員が角さんに『100万円を都合してくれ』とお願いに行った。角さんは『分かった』と言って300万円を渡した。そして『返す必要はない。300万円のうち、100万円は家族に苦労をかけているから、家族に使え』と言った」
「角栄」に並んだ岸田首相、生かせるか下野経験…「令和の名宰相」への道は険しい?(読売新聞)
石破総理は立候補するまでの間インターンのような扱いで田中派事務局に務めておりこの田中流の政治をよく知っている。しかしその後の田中角栄氏は政治とカネの問題で転落していった過程も目の当たりにしており石破氏自身はこうしたお金の使い方には懐疑的だったようだ。
ところが総理となり党内で孤立し始めた。石破総理は「自分はケチとして知られている」という自覚がありこれをなんとかしようとしたようだ。本人がこんな説明をしている。
14日に石破氏が出席した参院予算委員会で、自民の山下雄平議員は、合計150万円をポケットマネーで配布した石破氏の金銭感覚を念頭に、「どうしてそんな高価なものをそんなに大量に配ろうという発想になったのか、総理就任以降に始めたのか」と質した。石破氏は「実にケチだ、人づきあい悪いねというのが私の定評。総裁になって厳しい選挙があり、本当にすまなかった。ありがとうという思い以外の何ものでもない」と釈明した。
【石破総理が商品券10万円配布】法抵触を否定“自民から退陣論”政権運営に打撃は?(テレビ朝日)
また、最側近の舞立昇治参院議員も「総理大臣の慣行でした」と主張している。
ところが受け取った方の人たちはつい最近までは議員ではなく民間の常識を持っている。選挙期間中に有権者から政治とカネの問題について厳しい声も聞いてきただろうし、安倍派の議員たちが「上から言われた通り」にお金を管理して厳しい立場に置かれたことも知っているはずだ。そこで彼らは商品券を受け取らずに突き返すことにした。
政治資金規正法には明確な判断基準がない。有権者の反発を背景にして「有権者が嫌がること」を感覚的に禁止するという積み重ねだ。
このため追求する記者も政治家本人も「一体何がどんな理由で悪いのか」がよくわかっておらず会話は噛み合わないままだ。
有権者が腹を立てるたびに規制を継ぎ接ぎにしてきたために政治家は政治資金の調達に苦労している。本来であれば政策を円滑に進めるためにはお金が必要なはずだが、日本では「政治家は清廉潔白でなければならないから霞を食って生きるべきだ」ということになってしまっている。
また企業の方も「献金=後ろ暗いカネ」と感じているようだ。特に地方では政治にすがって生きるしかないのだろう。このため、個人献金を偽装して企業のカネを流すような慣行が生まれていたようである。
これが赤澤経済産業大臣に浮上した「疑惑」の貧しすぎる背景だ。
赤沢亮正経済再生担当相の後援会と自民党支部が2013年以降、選挙区がある鳥取県米子市のガス会社「米子瓦斯」とグループ企業の会長や社長ら少なくとも9人から個人献金計231万円を受けていたことが16日、政治資金収支報告書で分かった。15年を除いて会長らは同じ日付で献金し、最も多い年で8人が名を連ねた。金額も1回3万~5万円と近接し、岩井奉信日本大名誉教授は「事実上の企業献金と見なされても仕方がない」と指摘する。
【独自】200万円個人名使い企業献金か 首相側近の赤沢再生相側(共同)
そもそも「感覚」をもとにした法律でありなおかつ永田町の感覚と一般国民の感覚は全く違ってしまっている。おそらく自民党がこの問題を整理して国民の納得を得るのは不可能だろう。自民党は丁寧な説明をすれば企業献金も許容されるべきだと主張しているがこれまで法律の抜け穴を使って誤魔化しながらお金を集めてきたという前科・前歴がある。とても国民の納得は得られないだろう。
とはいえそもそも政治が無意味化してしまっているため、現役世代の人たちは一体何が起きているのかを理解できないようだ。Quoraでは石破の問題が許されるなら、石丸も斎藤(兵庫県知事)も許してやるべきだろうと指摘する人がいた。言っていることは無茶苦茶だが単に「権力に゙挑戦した弱いものがいじめられている」という理解が広がっているのではないかと感じる。
前回まで予算が4月1日までに上がらなければ予算策定は流動化するであろうと書いた。これを避けるために立憲民主党は「丁寧な説明」を要求することにしたようだ。要するに政治家が庶民と感覚が全く違っているということを強調し自分たちの選挙を有利に運ぼうとしている。
仮に維新が自民党の予算案に賛成できず案が流れても立憲民主党は独自予算案など立てられない。必ず財源の問題に触れざるを得なくなる。それよりも石破総理を吊し上げて議席を増やしていったほうが得策だ。
実はアメリカの民主党が同じようなジレンマに落ちている。連邦政府の閉鎖を避けるためにチャック・シューマー氏らが予算に反対しなかった。ところがトランプ政権に迎合するのかという反発が生まれ民主党は分裂状態に陥っている。
米連邦議会上院は14日、共和党がまとめたつなぎ予算案を可決した。これによって政府機関の閉鎖は期限の深夜を数時間後に控え、回避された。一方でトランプ大統領による大胆な権力拡大にいかにして抵抗するかを巡り、民主党内部では深刻な亀裂が生じている。
米政府機関の閉鎖を回避、共和党のつなぎ予算案が上院を通過(Bloomberg)
実は日本の野党も同じような状況に陥る危険性があるということになる。野党が自民党に対して対案を出せないために、つまり日本の有権者は「今の政治はなんか違う」という薄っすらとした疑念は抱きつつも応援する政党が選べないという状況に陥りつつある。
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