吉田内閣と細川・羽田内閣の事例を検討した。これを踏まえて石破内閣は年度内に予算を成立させることができるかを考える。
国民の間にはうっすらとした不満と閉塞感が溜まっている。これが爆発するきっかけ何でも構わない。石破内閣の場合は10万円商品券問題だった。確かに庶民感覚としては許しがたいという気もするが合計150万円で予算が吹っ飛ぶとすればあまりにもバランスが悪い。
自民党の中には「このままでは選挙に勝てない」という焦りが高まっていることは間違いがない。衆議院選挙の結果少数与党状態となったことで危機感も高まっているかもしれない。
しかしながら違いもある。吉田内閣では鳩山派というまとまった集団が主流派回帰を狙っていた。また細川・羽田内閣では小沢一郎が同様な野心を抱いていた。ところが現在の自民党にはそのような勢力がない。また野党第一党の立憲民主党も同様に望みのない状況に置かれている。
時事通信が「40歳代の自民支持、初の1割切り 時事通信3月世論調査【解説委員室から】」という分析記事を出している。極めて深刻な内容だ。
- 自民党を支持する40歳代は9.6%しかおらずはじめて1割を切った。就職氷河期世代とそれ以下の年代の支持を集めることができていないことがわかる。
- 立憲民主党の支持率はさらに悪い。18~29歳は0.9%、30歳代は1.6%、40歳代は2.5%しかない。
微妙なのが国民民主党と維新だ。
- 国民民主党
- 18~29歳が21.3%、30歳代が10.0%でいずれも自民を上回る
- 40歳代は9.6%と初めて拮抗
- しかし50歳代と60歳以上はこれまで同様に自民が大きく上回った
- 維新
- 高校無償化が好感されたが支持率は回復しなかった
政治が現在の状況に打開策が見いだせないまま(当ブログでは「解がない」と表現している)年齢による分断が起きているだけということがわかる。
吉田内閣、細川・羽田内閣の共通点は「今だったら主流派を逆転できる」というまとまった勢力の存在だった。つまり国会議員は国民生活ではなく自分たちの勢力拡大にしか関心がない。だから政界再編が起きる可能性は極めて低く予算を妨害する動機がない。
小選挙区制で自分たちの代表が出せないという状況が続き現役世代は選挙への関心を失っている。このため政治の言語を理解しようとする動機が阻害され「政治の無意味化」が進んでいる。
保守も革新も理論的支柱を失っている。保守は輝く日本の再生を訴えるがそれが具体的に何を指すのかはさっぱりわからない。またリベラルも財務省を解体すれば国家の借金を自分たちから切り離すことができるというわけのわからない理屈にすがっている。
誰が保守で誰がリベラルで誰が革新かはさっぱりわからないが、とにかくみんな「右だ左だ」と主張している。もはや人間動物園といった様相である。
政治と有権者の間に共通言語がなくなったことで政治は「自分たちが何を訴えれば国民にアピールできるのか」がわからなくなってしまった。
結果的に「予算成立を待ってから石破総理が退陣すべきだ」という空気が生まれている。もはや予算には理屈はない。ただ「年度内に成立させなければだめ」という気持ちが唯一の動機である。つまり4月1日を超えてしまった時点で「ちゃんとしなきゃだめだ」という唯一の動機が失われてしまう。
だから野党も「なんか違う」石破総理を追求しつつ衆議院解散につながる動きは避けたい。ここで石破総理が解散を選択してしまうとおそらく立憲民主党も惨敗するだろう。
これに対し、立憲民主党の小川淳也幹事長は静岡市で記者団に「進退に直結しかねない深刻な事態だ」と配布を問題視。内閣不信任決議案提出については「(衆院で)自公が過半数割れしており、非常に重い決議案だ」と述べ、今後の推移を見極める考えを示した。
石破首相、「違法性なし」重ねて主張 商品券配布、沈静化図る―野党、進退・予算で圧力(時事通信)
立憲民主党としては国民民主党か維新が「自民党・公明党の共犯者」になってもらったほうがありがたいという気持ちがあるのだろう。
参議院自民党も石破総理をおろしたからといって自分たちが主導権を握れると考える勢力がない。しかし選挙の看板として石破総理のままでは困る。結果的に次のような表現になる。石破総理には悪役を背負ってもらいこのまま消えてもらいたい。そして新しい総理への期待が剥落しないうちに「しれっと」選挙を済ませたい。
そもそも、夏に選挙を控える参院自民側には「今の体制では参院選を戦えない」(西田昌司参院議員)との危機感が強い。予算の成立を花道にした首相への退陣圧力が強まることは避けられそうになく、参院自民幹部も「問題は予算成立後だ。何らかのけじめはつけなければいけない」とくぎを刺す。
首相、自らの「政治とカネ」で求心力低下が浮き彫りに 参院選へ予算成立後の退陣論加熱も(産経新聞)
こうなると難しい立場に追い込まれるのが維新だろう。万博は赤字の可能性が高く自民党政権に尻拭いを期待したい。しかしこのままでは自民党の共犯者として恨まれる可能性がある。仮に衆議院に予算が戻ってきた場合「賛成すべきか反対すべきか」は極めて難しい問題だ。
結果的に「石破総理がみんなが納得するような解決策を提示して自ら身を引いてくれる」のが一番良いことになる。だが石破総理は「せっかく予算が通ったのだからしばらくは好きにやりたい」と考えるだろう。
仮に維新が対応を間違えると石破総理が行きがかり上「解散」に追い込まれることになる。まともな政治家ならそんな馬鹿なことはしないと思うが維新の国会での代表はあの前原誠司だ。
考え方の核になる明確な方針を持った政治家は一人もおらず、仮に持っていたとしても「政治の無意味化」が進んでおり現役世代を中心に政治家のメッセージは届かなくなっている。政治と現役世代は話す言語が違っていてお互いに意思疎通ができない。
こうなるととりあえず流れの赴くままに「やるだけやってみる」ということにしかならないだろうということがよくわかる。「ああこれはもう出口がないな」とみんなが納得するまでやりたいように大騒ぎしてもらうしかない。
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