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西田昌司氏が石破総理の退陣を要求

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自民党の西田昌司参議院議員が仲間たちの前で石破総理の退陣を要求した。記者団に対する説明では高市総理大臣を熱望しているようだ。しかし、おそらくはこの退陣要求は大きくは広がらないだろうと見られている。石破総理は結果的に「解のない問題」を押し付けられており、火中の栗を拾おうとする人はいない。

そもそも、なぜ高市総理待望論があるのか。そしてそれはなぜ再現不可能なのか。

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自民党の西田昌司参議院議員が石破総理の退陣を要求した。場所は「党参院議員総会」だったそうだ。仲間たちの前で「みんながそう言っている」と主張したあとで記者たちに高市早苗総理を待望していると説明したようだ。

石破政権側は「おそらくこの主張は大きくは広がらないだろう」と見ているそうだが、これは正しいのではないか。

理由は2つある。

第一に高市早苗・小林鷹之氏ともに今の自民党を背負って立つ気概はない。むしろ渦中の栗を拾いたくないと考えており石破政権から距離をおいているようにみえる。そしておそらくこの読みは正しい。

前回分析したように日本全体に「持ち出しをしたくない」「最初に変わる人になりたくない」という極めて消極的な空気が漂っている。現役世代を中心にして合理的というより生理的な欲求になっているようだ。自分から動けば損になると確信している人が多い。

国民が変わりたくないのだから少子高齢化と地方の過疎が止まるとは考えにくい。また企業の生産性も上がらないだろう。かといって現在の社会保障政策も変えたくない。

結果的に誰かの負担が増えることになる。

これが象徴的に現れているのが年金の議論である。企業が持ち出しを嫌い正社員を減らしつづけたせいで国民年金に依存しなければらならない人が増えている。このため国は国民年金の負担を厚生年金にも負わせようとしている。仮に国民年金が変わらなければ結果的に福祉給付が増え税負担が増大するだろう。

自由民主党は立憲民主党・維新・国民民主党に協議を呼びかけたが3党から「国会で議論すべきだ」と断られている。負担増を推進する自民党から距離を置きたいのだ。

「解のない問題」は自民党に押し付けて自分たちは悪者になりたくない。だから自民党の中「石破総理からは距離をおいておきたい」という人たちが増えたとしても不思議ではない。

第二に高市早苗氏は安倍晋三氏の代わりにはならないだろう。

そもそも安倍晋三氏にはなぜ人気があったのかの分析が進んでいない。中には「保守的な政策を取らなくなった石破総理が悪い」と分析する会社もあるようだが、保守的な政策とはなにか?

誰も定義していない。

日本人は戦略的施行が苦手な人が多く情緒的に問題を捉えたがる。結果的に安倍氏の人気を再現することができていない。そしてこれからもできないだろう。

安倍氏の人気はどこにあったのだろうか。考えてみた。

第一に安倍氏は「民主党時代に変化を突きつけられたが、皆さんは悪くない」としたうえで「皆さんは変わる必要はない」という一貫したメッセージを送り続けた。保守といえば保守だが「変化できる自信がないたち」の劣等感を救済した。

さらに、下野時代にこれまで傍流だった雑誌保守と直接対話をしている。じつはこの「直接対話」が大きかったのではないかと思う。

かつて民主党が好まれたのは「テレビを通じて私達の問題を語ってくれる政党」とみなされていたからである。しかし現在の立憲民主党は「テレビを通じて誰か困っている(私達ではない)人たちの話しかしない」政党とみなされている。

さらにいえば立花孝志氏、保守党、参政党に人気があるのは「ネットを通じて私たちに語りかけている」という実感を持っている人が多いからだろう。

つまり日本人は極めて寂しがり屋で自分たちの変われる力にも自信がない。そして「自分たちが気にかけてもらっていること」にきわめて敏感に反応している。

生活困窮者も外国籍の人たち「自分たちではない誰か」である。彼らが生活困窮者が外国人を攻撃するときに本当に言いたいのは「もっと私達を見て、私達を気にかけて」ということなのではないか。

国民民主党が支持されたのは「私達と対話した結果政策を変えてくれたから」なのかもしれない。

もちろんこれらは仮説に過ぎない。こうした仮説を一つひとつ確かめつつ精緻化・言語化してゆくのが戦略的思考だが、日本人はこうしたアプローチが極めて苦手である。さらに「皆さんは自信がなく寂しがりやなんですよね」などと指摘されても認められないという人がほとんどだろう。

この仮説を総合すると「あなた達は変わらなくていい」というメッセージと「国民意識の変革なしに社会問題は解決しないし変化する日米関係にも対応できない」というメッセージは明らかにコンフリクトする。

結果的に次世代リーダーが自民党から登場することはなく、眼の前の社会問題は何も解決せず、大波の上を漂う小舟のように「次はトランプ大統領から何を言われるのだろうか?」と怯えることになるということがわかる。

西田参議院議員はおそらく戦略的な分析ができておらず「安倍総理に代わる看板がなければ選挙に勝てない」と考えている。小泉政権、民主党政権、第二次安倍政権時代まではテレビ時代だった。地道な党員獲得や政策立案が好まれず「政党や党首のイメージ」で選挙結果が大きく変わった時代である。おそらくこの間に自民党は議員が先頭に立って地道に党員獲得をするという伝統を失っており「ネットの向こう側にいる人達を気にかけてあげる」という新しい伝統も獲得できていない。

自民党幹部はかつて党員が汗をかいて地域住民と直接対話していた時代に戻って欲しいようだが安倍チルドレンと呼ばれる人たちはそもそもこのような時代を経験していない。

これに対し、党幹部は「退陣を要求する暇があったら地元を回るべきだ」と不快感を隠さない。

自民、石破首相へ不満表面化 参院改選議員が退陣要求(時事通信)

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