アメリカ合衆国の株価が絶賛暴落中だ。「このままではトランプセッション=トランプ氏が原因になって起きるリセッション」間違いなしと市場は考えている。かといって他に資金の逃避先もないのが現状で中国や短期債権に人気が集まっている。カ
ナダとの間に「戦争まがい」の状態も生まれており「鉄鋼に対して50%の関税をかける」とか「だったらこっちは電気を止めてやる!」などという激しい議論がある。
この「ガチの経済戦争」の中で武藤経済産業大臣が「丁寧な対話をしましょう」と出かけていった。何もしていないと言われるのが嫌だったのだろうが単に出張費の無駄遣いに終わっている。
ニューヨーク株が大幅続落中だ。11日午前は600ドル安から始まったそうだ。前日は890ドル安で終わっている。「誰かなんとかしてくれ」という気がする。
一時的に株価は犠牲になるかもしれないがアメリカ合衆国が栄光を取り戻すためには多少の犠牲は仕方がないと言っている。「大きな成果のために多少の犠牲は仕方がない」というのは正しい。だが関税の使い方と経済の理解はめちゃくちゃだ。
第一段階としてトランプ大統領は記者たちの前に姿を表さなくなった。おそらく何らかの軌道修正が入るだろう。
正しい方向に政策が修正されるためには「正しい人たち」の意見を聞かなければならない。だが、トランプ氏は1980年型の企業経営者でマクロ経済には疎いようだ。またまともな人達はトランプ政権では遠ざけられている。このため正しい判断をしようにも正しいインプットが得られないかもしれない。
トランプ大統領が戦っているのは金融市場だけではない。
カナダに対して鉄鋼・アルミの関税を50%にすると息巻いている。カナダが電力に関税をかけることに決めたための報復なのだが、もはやまともな理屈はどこにもない。カナダ側(オンタリオ州首相)は「だったら俺達は電気を完全に止めてやるぜ」と息巻いている。
メキシコは関税戦争を回避したがカナダとの間では戦争状態になっている。武藤経済産業大臣はそんな中(おそらく状況はわかっていたのだろうが)出かけている。丁寧に説明したところで聞いてもらえる状況ではないことは火を見るよりも明らかだが「日本政府は何もしていない」と言われることは避けたかったのだろう。
他国の労働市場について心配しても仕方がないのだがかなり不安な動きを見せている。人々は「転職すれば給料が上がるし転職しなければインフレに押しつぶされる」という状況。このため労働市場はタイトな状況が続いている。音楽は鳴り続けておりダンスは続けなければならない。これは壮大なイス取りゲームというべきだ。つまりある日突然椅子の数が極端に減れば彼らはすべてゲームオーバーになる。航空・小売は業績を下方修正しており椅子の数が減ることは間違いがなさそうだが、企業は失った人員を取り戻さなければならずそのためには賃金を上げるより他に手段がない。
マスク氏は大胆な福祉予算の削減を検討しており椅子を失った人たちには悲惨な未来が予想される。そのマスク氏はよくやく金融専門家をいれて福祉予算の削減に取り組み始めた。今まで誰も分析する人がいなかったんだなあという驚きがある。
ただマスク氏は社会的批判の対象になっている。テスラ車の売上は急減。テスラの販売店には攻撃が相次いでいる。Xがサイバー攻撃を受けた。マスク氏はウクライナから攻撃があったと言っているのだが親パレスチナのグループも犯行声明を出したそうだ。
こうなると慌てて株を売りたくなる人も多いと思うのだが実際の投資マネーは行場を失っている。結果的に政府の大規模な経済刺激策に期待して中国への投資推奨が増え、短期国債・短期社債などに人気が集まっている。長期的には金利の高止まり(国債の価値低落)が予想されるために「短期」にのみ人々が殺到するという不自然な状況だ。
つまりいずれマネーは株価に回帰せざるを得ない。リセッションの確率はそれほど高くないとして「周到に買いのチャンスを狙うべきだ」と推奨する金融チームもある。
JPモルガン・アセット・マネジメントのマルチアセット戦略チームは、米経済がリセッション(景気後退)に陥る確率を15%から20%に引き上げた。しかし同チームを率いるデービッド・レボビッツ氏が顧客に伝えているのは「押し目買いの準備を整えよ」という楽観的なメッセージだ。
景気後退を警戒も、買いの準備は周到に-JPモルガンのレボビッツ氏(Bloomberg)
ちなみに日本も低すぎた金利を修正するだろうという観測が高まっており安全資産とみなされる国債も人気が上昇しているようだ。ゾンビ企業・政府・変動金利で住宅ローンを支払っている人たちにとっては悲報だが、投資家は日本の国債に期待しているようだ。
10年物米国債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して4.17%。10年物オーストラリア国債利回りは10bp低下の4.34%となった。ドイツ国債と日本国債の先物も上昇している。
米国債続伸、米景気減速懸念で安全資産に需要-独・日国債先物も上昇(Bloomberg)
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