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自民党が年金改革を先送りを画策

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自民党が年金改革の議論を参議院選挙のあとに先送りする方向に傾いている。国民負担増加につながることが確実視されており党内から懸念する声が上がる。

このエントリーでは「自民党はどうすべきか」とか「有権者はどう判断すべきか」という問題は取り上げない。

代わりにこの問題には解がないということを分析する。ファクトとソリューションについて書くところや誰かを批判する人は多いが「解がない問題」について取り上げる人はいない。なんとなく何かを達成した気持ちよさが得られないからだ。だが現状認識は極めて重要だ。

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政府・自民党は国民年金の支給額を嵩上げするために厚生年金の負担を増やす改革案を推進している。終身雇用制が徐々に崩壊したため国民年金に依存した老後を送る人が増えると予想される。このままでは年金か福祉かということになる。このため企業の負担が入る厚生年金で国民年金の穴を埋めたい。

これ自体は正しい判断なのではないかと思う。

企業は国内投資を減らし設けを蓄えてきた。この過程で企業負担が多い正社員は抑制され国が面倒を見る国民年金側に労働者を押しやってきた。これはミクロでは正しい判断だが消費が冷え込み国内市場を破壊する。つまりマクロでは正しくない「合成の誤謬」だ。ミクロで人への投資が増えないのだから国家が介入して再分配を加速させるという政策には合理性がある。

しかしながら、立憲民主党はこれを選挙利用したい。党勢拡大を狙う判断はあるいはミクロでは正しいのかもしれない。さらに言えば政策立案のためには大勢の調査担当者や政策立案スタッフを抱える必要があり「コスパ」が悪い。

また有権者も「明日の自分の手取り」を判断基準にして政党を選ぶ。これもミクロでは正しい判断だろう。生活者には余裕がない。

みんながミクロに注目した結果、時事通信の記述はこうなる。

関連法案は、厚生年金の積立金や国費を活用して基礎年金(国民年金)の給付水準を底上げすることが柱。厚生年金の一時的な受給減や、将来的な増税につながる可能性がある。

年金法案提出、野党に協議提起 与党、参院選へ影響懸念(時事通信)

少子高齢化が進み企業の生産性も上がらない(厳密に言えばコストカット以外の生産性向上策が見つからない中)のだから、当然誰かの負担を増やして制度を維持する以外に道がない。

これを解決する策は3つある。

  • 現状の制度を放棄する
  • 誰かの負担増を甘んじて受け入れる
  • 国民の意識を変革し「少子高齢化と低成長」を転換する。

このうち3については当ブログ・Xのフォロワー・Quoraのコメント欄からの対話を通じて現役世代を中心にきわめて強い生理的拒否反応があるということを学んだ。低成長時代にしっかり適応してしまい理屈ではなく体で拒否しているようだ。最初に国民の意識変革を求めるのはほぼ不可能だろう。

先に河野龍太郎氏の「収奪国家論」を紹介した。日本の収奪国家論は「誰かが悪意をもって収奪している」のではないという点に特徴があるのかもしれない。無意識のうちにいつのまにかそうなっているのだ。

Quoraのコメント欄では「理屈はわかった」というコメントを貰った。かといって海外の事情も日本が高度経済成長していた時代も知らないという。Xのコメントも似たような論調だった。円安により海外旅行は難しくなり海外留学にも「成功する保証」を求める時代だ。現在の日本の状況以外の状況を知り得ないからといって、とても当事者を批判するつもりにはなれない。

自民党の次期リーダー候補の高市早苗氏や小林鷹之氏から「政策にピリッとしたものがない」という不満が出ているそうだが、かといって彼らが何らかの代替提案がでてくるわけではない。彼らは「あなた達は変わる必要がない」と訴えていた安倍総理の人気にあやかりたいだけだ。

民主党のテレビでの成功を受けて自民党もテレビ路線に切り替えた。安倍晋三氏が「皆さんは何も悪くない、悪いのはすべて民主党で、皆さんは変わる必要はない」と訴えたのだ。これが当時の雑誌保守(ネット保守はいなかった)や自称良識派」の心を捉えた。すでに「変わること・イニシアチブを取ること」に対する躊躇があったことがわかる。

しかしこれは不都合な現状を隠しソリューションを先延ばしにしただけだった。失ったものは極めて大きい。

自民党は国民に対して変革を求めるという選択肢を失った。またおそらく地道に党員を獲得するということもなくなっている。安倍人気にぶら下がり、安倍氏の名前でパーティーに人を呼び興行収入を「政治資金」と言い募りポケットに入れる議員たちが増えた。政治資金だから無税なのだという。彼らもできるだけ持ち出したくないのだ。産経新聞のお粗末な分析はこのあたりについてそもそも考えることを放棄し「自民党は保守回帰すべき」と訴えている。

民主党も「地道に政策を立てても意味がない」と考えるようになりシンクタンク維持をやめてしまった。現在の立憲民主党は単に自民党を批判するだけの政党に成り下がっている。自前の政策立案手段を自ら放棄してしまったため相手を批判するしか選択肢がなくなってしまったのだ。

結果的に「誰も持ち出さず」「なんの提案もしない」人たちだけが生き残り今の政治的な惨状がある。結果的に誰も何も提案せず自らが変わることもないのだからこの問題には解がない。林芳正幹事長は党内調整に時間がかかると言っているが解のない問題が調整されるはずはない。

関税についても「結果的に日本は関税の対象になります」と武藤経済産業大臣が手ぶらで帰国した。これは最初からわかっていた話なのでYouは何しにアメリカへ?という気がする。ファーストクラスで行ったのかエコノミーで行ったのかは知らないが出張旅費の無駄遣いだ。おそらく「何もやっていない」と批判されたくなかったのではないか。

確かにこんな状況で「まずあなたから変わってください」などと言ってみたところで「お前何を言っているんだ」となるだけだろう。かといって誰かが変わらなければこの先も政治は解を見つけることはできないだろう。

現在の状況は実は「対立」ではなく「膠着なのだ」と知っておくことは極めて重要なのではないかと感じる。

政治に対しては「リベラルな石破総理に変わったせいで自民党が本来の状況ではなくなった」と問題から目を背ける人と、そもそも政治を無意味化したい人たちの二極化が進んでいる。

自民党は方針を二転三転させ、結局衆議院に予算を差し戻すことにしたそうである。立憲民主党は高額療養費の集中審議や年金改革議論について自民党の非道ぶりをあぶり出し選挙利用したい考え。また維新は衆議院では予算に賛成し参議院では予算を批判するという「ジキル博士とハイド氏」ばりの二重人格状態に陥っている。

結果的に、期末までに予算が成立するかは極めて怪しい状況になっている。

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