杉田水脈氏の議論を通じてネット保守の不満について考えた。彼らは極めて受け身で持ち出しを嫌う。そして政治から気にかけてもらえること政府による救済を望んでいる。
しかし、石破総理は「財政健全化」と「日銀の金融正常化」を容認する姿勢を見せている。円安は止まるだろうが金利が高騰する社会がやってくることになりそうだ。また保守の人たちが望む大規模な金融緩和によるお祭り経済が実現することはないのだから「またしても自分たちの要望はスルーされた」と考えるのではないか。期待した分だけその憎しみは強いものになる。
石破総理は日銀が掲げる2%の物価目標を達成しつつあるという見通しを示した。また食料やエネルギー価格の高騰はそれを超えているとしている。アベノミクス推進派の人々を切り捨て現状を認めたうえで金融正常化と財政正常化へと舵を切ったことがわかる。
現状を認めること自体は正しい動きだろう。石破総理がその現状認識に沿った政策を組み立てることができるかが問題になりそうだ。
地方のゾンビ企業はかなり苦しい状況に置かれ変動性ローンを借りている人の中には返済計画を余儀なくされる人達も出てくるだろう。アメリカではトランプセッション(トランプ氏が作り出すリセッション)という造語もあるが、ことによっては日本では「石破不況」などと呼ばれるのかもしれない。
そのきっかけはトランプ大統領だ。トランプショックという外圧はヨーロッパでは安全保障の正常化(アメリカ依存の修正とヨーロッパの負担増)の議論を呼び覚ましたが日本ではそれが金融正常化だったということになる。
そのメカニズムは極めて複雑な様相が合成されたものである。
まずトランプ大統領の経済運営が行き詰まり「関税はインフレでなくリセッションをもたらすだろう」という予想が出てきた。これがトランプセッション予測だ。不況は政府の財政拡大につながるため長期国債の価格が下落している。逆に人々は短期国債をこぞって買われているそうだ。Bloombergは「絶望」という強い言葉を使っている。
株価は引き続き下落しており「市場など見ていない」とうそぶいてきたトランプ大統領も何らかの方針転換を迫られるのではないかと思うが、今のところは「短期的な混乱にとどまる」と強がっている。
またヨーロッパでは国債を発行して安全保障に対する費用を賄おうという動きも出てきた。これも当然国債価格の下落と金利の高騰につながる。
さらに日本では春闘の平均要求が6%だったという。賃金上昇を伴うインフレが始まると日銀の金利抑制が正当化しにくくなる。
ただし石破総理がこのまま日銀の金融正常化に向けて動くかどうかは未知数である。どうもかなり優柔不断かつ先を読まない(あるいは読めない)性格のようだ。
参議院の予算審議の方針が二転三転している。
高額療養費は衆議院を通過したが選挙を気にする党内の反発を抑えられなくなり、一旦は予算の再提出を行うものと報じられていた。ところがその後でまた方針が変わりつつあり「予備費でも行けるのではないか」と修正されている。石破総理は「予算再提出を指示していない」と言っており、一体どこで誰が「予算を再提出する」という見通しを語ったのかがよくわからない。
時事通信は維新に期待と書いている。維新は現在「野党色」を強めている。ここで衆議院に差し戻してしまうと「ハイド氏からジキル博士に戻る」必要がある。仮に衆議院で維新が予算反対に回ってしまうとそこで「ゲームオーバー」になる。誰かがそれに気がついたのではないか。
石破総理個人としては「筋を通したい」という気持ちがあるのかもしれないが、結果的には党内をまとめることができていない。
自民党内にも「提案まち」の意識が浸透しており「火中の栗」を拾ってリーダーに名乗り出ようという人はいない。仮にリーダーが出てきたとしても「何らかの変化」を支持者・有権者に要請することになるが自称保守は「持ち出し」を極端に嫌い相手が変わってくれることを期待する。
公明党からは「事実上の政権選択」という声も出てきたが、自民党と公明党はこのままでは参議院選挙でかなり苦労することになりそうだ。あらゆる方面からの反発を恐れ結局誰も満足させられていないうえに積極的な姿勢を持つプロアクティブな支持者(そんな人は日本にはもういないのかもしれないが)を獲得できていないからだ。