8,700人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

差別感情に期待してネット保守をつなぎとめたい自民党

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

先日、受け身の人々を奴隷に例えて日本が成長しない理由について考えた。今回はその続きとして混迷する自民党が差別感情を利用して党勢拡大を図ろうとしていると言う極論を展開する。おそらくこれが成功することはなく最終的には無意味化か破壊により自民党は内部から崩壊するだろう。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






産経新聞が「自民党から6万人の党員が消えた」と書いている。産経新聞の分析によれば保守党と参政党に人々が流れたせいだ。石破総理のもとでリベラル化する自民党が気に入らず「もっと雑誌保守化」してほしいという願望があるのだろう。これを裏付けるために3人に語らせるのは典型的なN1議論だ。厳密に言えばn=3の議論である。

産経新聞が掲げる自民党の党員グラフを見ると平成の前期とそれ以降で傾向が全く違っていることがわかる。平成前期でさえ定期的に山ができている。これは総裁選の参加できますよとして勧誘した党員が党費を支払わなくなったせいなのではないかと思うが産経新聞はなんら分析を加えていない。日本は大統領制ではないので日本のリーダー=総裁を選ぶためには党費を払って自民党総裁選に参加するしかない。

また安倍政権になってこうした動きがなくなった理由も解説されていない。党員獲得を通じたメッセージングがなくなり「安倍総理の発信力」に依存するようになったのではないかと思うのだがこれが正確なのかどうかはわからない。

最も高い山は600万人近辺にあるのだがそもそも「岩盤自民党員」がどの程度いるのかもよくわからないため「6万人というのは誤差なのではないか」と感じる。

産経新聞のち刹那論理構成に見られるようにそもそも日本人は戦略的思考が苦手だ。問題が起きても仮説を立てて検証することはなく信条に基づいた我田引水型の議論が好まれる。こうして話がまとまらないまま「仕方ない」で諦めてしまうのが日本人と言える。

しかしながら自民党執行部には雑誌保守・ネット保守に対する期待も強いようである。杉田水脈氏が参議院選挙の候補者になった。杉田氏は過去の差別発言について選定過程で問題にならなかったとしている。自民党はむしろ期待しているのではないか。また政治と金の問題については議員ではないので話をする必要はないと考えており政倫審に出席しさえすれば問題は解決すると安易に考えているようだ。

こんな人を候補にするとは自民党もどうかしていると思うが、これこそがむしろ問題の根幹なのではないかと感じた。つまりこんな人でもなんとかなると思っているのだ。相手になる「岩盤保守層」を理解していないのだろう。

おそらく自民党は雑誌保守・ネット保守(実は同じように見えて細かな違いがたくさんあると思うが)は「大体どれも似たようなもの」だと感じているのではないかと思う。真面目に理解するつもりもなく「杉田さん程度の問題発言を繰り返すお騒がせ人を一人混ぜておけば雑誌保守・ネット保守対策は十分だろう」と考えているのではないかと思う。

だって立花孝志氏だって問題発言を繰り返しているじゃないか。ネットのわけのわからない人たちは「ああいう人」が好きなのだ。

と考えると裏返しとして保守党や参政党がなぜ人気を集めるのかもわかる。彼らは「ネットの向こうにいるあなたがた」と直接対話をしようとしているからだ。

ここでようやく「奴隷化した現在の一般市民」が出てくる。彼らは現状に不満を感じている。しかし自由に対する恐れと「持ち出しを求められること」に対する生理的な不満があり、徹底的な受け身思考だ。

自民党は「杉田さん位の人を混ぜておけばこれまで通りに彼らを動かして利用できる」と考えて「彼ら」がどんな人なのかは理解しようとしない。雑誌保守までは既存の政治に組み込まれた意識を持っていたがネット保守は無意味化が進んでいる。

例えば選挙に立候補しても当選は目指さない。供託金さえ支払えば利用できる無料掲示板(選挙の立て看板のこと)に意味不明のメッセージとQRコードを貼り付けて回る。日本の政治は内部破壊のエネルギーを持たず腐ってしまっているために「政治の無意味化」を通じて機能不全に至る可能性のほうが高いのではないか。

安倍総理はネトウヨと呼ばれる人たちを動員してきた。彼らに直接語りかけることで「彼らを忘れてはいない」と感じさせることができていた。裏返せば彼らはその程度には社会から忘れられている存在であり「自分たちと対話してくれた」と感じるだけでやすやすと政治に動員することが可能だった。

しかし現在の「保守」と呼ばれる人たちはそもそも政治に組み込まれているという意識は持っていない。令和に新しく安倍晋三のような人がでてきたとしてもその人は「なぜあなたは政治に参加すべきなのか」から説得を始めなければならない。

その「彼ら」は極めて受け身であり自分たちからこうして欲しいなどという要望を述べることはないだろう。

実は自民党以外の政党も「極めて受け身」の人たちが何をしたら喜んでくれるのかを必死で探ろうとしている。現在の政治の膠着の背景にはリーダーシップを極端に嫌う様になった現代社会という背景が隠れているのではないかと思う。全員が全員「誰かの提案まち」なのだ。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

+10