シリアの死者が1000人を超えたそうだ。シリア人権監視団によるとそのうちの745名が民間人で女性や子供が含まれているという情報もある。今回の件で最も特徴的なのは現地で何が起きていないのかがよくわかっていないと言う点にある。
泥沼の混乱がそのまま世界から忘れ去られるというのはよくあることだ。スーダン、南スーダン、コンゴ民主共和国とルワンダの影響を受けた武装勢力の衝突は語られなくなっている。
私達の「世界」で語られるのはウクライナのようにヨーロッパの安全保障に直接影響を与える問題だけ。シリア、スーダン、南スーダン、コンゴ民主共和国などの問題はそもそも扱われさえしないのが実情だ。
攻撃対象になっているのはアラウィ派と呼ばれるイスラム教の一派。もともと少数派だったがアサド政権の庇護を受けシリアで支配的な立場に置かれていた。シリアの北東部の地中海沿岸に本拠地がある。
この本拠地(ラタキアとタルトゥース)が今回攻撃されている。
- Syrians describe terror as Alawite families killed in their homes(BBC)
- More than 1,000 killed in Syrian crackdown on Alawite region, war monitor says(REUTERS)
アサド政権下でのアラウィ派の暴挙は厳しく制裁されるべきなのだが、それはあくまでもも人道的に行われなければならない。
しかしシリアの暫定政府は国の一部を掌握しているに過ぎない。また90%は貧困状態にあるそうだ。長年の内戦で生活基盤が破壊されていて統治機構の復活どころか生業の再建さえままならない状況だ。当然旧勢力の清算など始められるはずもない。
こうした状況で反乱が起きるとネットを遮断して集団行動を制限するというような手段が取られる。ネット環境が極めて不十分なためやっと接続できたFacebookで知人の死を知るというような悲惨な状態なのだという。
当初は政権がアラウィ派を粛清しているのではないかと思ったのだがそもそも誰が攻撃しているのかすらわからなくなっているようである。ロシアの基地に逃げ込んだとか言葉が通じない人に襲われた(チェチェン人なのではないかなどとされている)という証言もありロシアの関与も疑われるが状況が混乱しており「よくわからない」としか言いようがない。
何も確定的なことは言えず「当初懸念されていた通り知りは紛争は終わっていなかった」ということになる。
このところアメリカ合衆国のヨーロッパ離脱のような「派手な」安全保障の話題が多かったがやはり足元の地域レベルの紛争も全く解決していないのだと改めて痛感した。