場当たり的な経済運営を繰り返してきたトランプ大統領がついに開き直った。アメリカがより良い国になるためには痛みが伴うのだから文句を言うなというのである。よく考えもせずバラ色の未来を夢見てきた支持者たちはさぞかしがっかりしているのではないか。
おそらく熱心な支持者以外は「まあこうなるだろうな」と感じているのではないか。トランプ大統領が発言の修正を図っている。
施政方針演説では「多少の混乱はある」としていたが、株価の急落を受け「株価など気にしていない」と言い出した。投資家はあまり根拠なく「トランプ大統領の優先順位は株価対策である」と信じてきた。しかし具体的な政策が打ち出され始めた2月の初旬をピークにして選挙当日の水準に戻りつつある。トランプ氏が当選したことで株価が落ちたときの水準だ。
投資家たちのうっすらとした疑念は「株価すら見ていない」という本人の発言でさらに確信に変わりそうである。
また最近の報道を見るとトランプ関税に振り回されるスモールビジネスというようなモチーフのものが増えてきた。トランプ関税は「on-again, off-again tariffs」と表現される。やるかと思えばやめたり、やめるとおもったらまたかけたりという場当たり的なトランプ政権の関税政策をうまく言い表しており、各紙がイデオムとして使っている。
ただし日本から見ると評価できるなあと思えることがいくつかある。
政策がうまく行っていなくても日本政府はそれを認めたがらない。しかしトランプ政権は素直に「多少の混乱はあります」と認めている。仮に混乱が続けば共和党の議員たちがタウン・ホール・ミーティング(これも公開されている)で支持者たちに突き上げられる。これがプレッシャーになってトランプ政権の政権運営が修正されるきっかけになるのだ。
また卵の価格を不当に釣り上げてきたという疑いで大手の卵供給会社が司法省に強制捜査されることになった。
第一印象は「どこにでも悪いヤツはいるものだ」と感じる。しかしよく考えてみると日本ではJAと自民党の近すぎる関係があり大手供給会社が捜査対象になるのかさえ疑問だ。
アメリカは市場原理至上主義の国だ。しかし卵業界は寡占が進んでおり大手が価格操作をやりやすい状況が生まれているという。鳥インフルエンザの流行は収まりつつあるようで卵の値段はわずかながら下がっているそうだが、これまでの損を取り戻したい業者が価格を下げ渋っていると分析されているそうだ。
トランプ大統領にとってインフレ抑制は「政策の一丁目一番地」なのだから、政府は多少無理筋であっても「卵の価格を下げさせたい」という動機がある。
当初予想されていた通りトランプ大統領の強引な経済・外交・安全保障政策は順調に行き詰まりつつある。今後調整局面に入り何らかの修正が加えられるのではないかと思う。