トランプ大統領の経済政策が早くも行き詰まりを見せている。
ABCニュースは関税をon-again, off-again tariffと表現していた。これはABCだけの独自表現ではないようだ。株式市場にも落胆が広がり「トランプ・プットはない」との観測が広がる。また暗号資産の国家備蓄も限定的なものなりそうだ。
またイーロン・マスク氏がルビオ国務長官と衝突したというニュースも入ってきた。ネタニヤフ首相とトランプ大統領の間にも亀裂が入っているそうだ。
ABCニュースはon-again, off-again tariffと表現していた。やったりやらなかったり関税というような意味なのだろうが、ABCニュースだけの独自表現ではないようである。関税政策は日替わり状態で企業は明日の収益目標さえ立てられなくなる。この関税政策はアメリカの経済を冷え込ませると予想されている。
株式市場は「トランプ大統領の優先課題は株価の維持である」と信じていたがこの期待も裏切られつつある。関税の撤回表明により株式市場の懸念は払拭されるものと考えられていたが、トランプ大統領は「短期的な犠牲はやむを得ない」とも発言しており投資家の間にはむしろ不信感が広がっているようである。株価のピークは就任式前後だったが、このところの関税騒ぎで大きく値を崩している。
また暗号資産の国家備蓄も「これまで没収された暗号資産」に限定されるようだ。大統領はドルを裏付けとするステーブルコインの創設を支援すると言っているが立法措置が必要であり、議会がどう反応するかは未知数である。
ガザのアメリカ所有、グリーンランドの編入など「一体どうするのだろうか?」と実効性を疑問視する声は多かった。経済政策でも「テーマは壮大でなんだか良さそうな話だがではどう実現するのか?」という話が多い。
トランプ大統領のディールは情報飽和を誘発し相手を混乱に陥れたうえで誘導するという手法を好む。このため長期的な視野が欠落することになり混乱が引き起こされる。
しかし仮に外から混乱しているように見えたとしても「実は内部では綿密な計画が寝られているのではないか」という希望的観測がある。特に「有能な実務者」の存在が重要だ。
そんな中、イーロン・マスク氏とマルコ・ルビオ氏が衝突したというニュースが入ってきた。ニューヨーク・タイムズが伝え各メディアが引用報道をしている。
- マスク氏とルビオ国務長官、閣僚会議で衝突 米政府機関の人員削減巡り=NYタイムズ(REUTERS)
- マスク、ルビオ両氏が衝突 閣議中、トランプ大統領が仲裁―米報道(時事通信)
- マスク氏、ルビオ氏らと衝突 報道をトランプ氏は否定(AFP)
ルビオ国務長官に代表される伝統的な共和党の政治家は対中国政策でかろうじてMAGAとつながっているに過ぎない。いわば「かりそめの同盟」といえる。ウクライナ・ディールではルビオ氏が築き上げてきた砂のお城をバンス副大統領が破壊しており「ルビオ氏は石のように固まってきた」という報道もある。ルビオ氏は我慢の限界を試される日々が続いておりいつキレてもおかしくないという状況。
結果的にならず者ばかりが居残り有能な人たちは疲れ果ててやめてゆく可能性がある。
またイスラエルのネタニヤフ首相がホワイトハウスのやり方に激怒しているという報道もある。アクシオスが伝えて時事通信が引用報道している。
どちらの「激突」も非公開会合の席で行われており表向きはみんな仲良くやっているということになっている。
トランプ大統領の戦略について扱うと「いやそうは言っても、トランプ大統領には何らかの長期的ビジョンがあるはず」と信じたい人が多いようだ。しかしながら実際の報道を見ているとそれを裏付けるようなものがあまり出てこない。むしろ行きあたりばったりで何をやりたいのかよくわからないというものが多い。
ヨーロッパのように「アメリカがいなくなった世界」の模索を始めたところもある。アメリカの迷走によりこれまで「もう持続可能性はないんだろうな」とみんなが薄々感じていたものが表に出てくるようになった。
トランプ大統領の迷走は「悪いこと」だがこれを変化の材料として利用することもできる。つまり変化のきっかけになると肯定的に評価することはできるのかもしれない。