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参議院で予算が再修正 戦後初の事態に

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高額療養費を巡り参議院で予算が再修正された。戦後初の再修正ということで石破総理が謝罪しており、日本人の極めて強い予定調和志向がわかる。と同時にこれまでの参議院での審議が儀式に過ぎず意味を持たなかったということも明らかになった。

とはいえ参議院議員たちの再修正の動機は国民生活ではなく選挙だ。政治家の「自分ファースト」ぶりには呆れるばかりだ。

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アメリカ合衆国では上院と下院でそれぞれ別の予算案が審議されることがあり連邦政府が閉鎖に追い込まれるまでギリギリの攻防が続くことがある。アメリカ人は「政治家たちは一生懸命にやってくれている」と感じ大統領も困惑することはあっても謝罪はしない。

一方で日本人は極めて不安耐性が弱く予期不能な状況に耐えられない。これが石破総理の謝罪に現れている。石破総理が謝罪したのは「混乱」であり「高額療養費の引き上げ」ではない。

そもそも参議院は衆議院の追認期間ではないのだから必要な修正を加えるのは何ら悪いことではない。憲法が定めた二院制の機能が果たされたことを意味するに過ぎない。

しかし修正の動機には問題がある。

参議院が良識の府としての機能を発揮したのであれば今回の修正を肯定的に捉えることができる。しかし、自民党と公明党が気にしているのは自分たちの選挙だった。あくまでも自分ファーストなのだ。政治家たちは国民生活にはさほど興味はなく、自分たちの生活と地位こそが需要だと考えていることになる。

この裏返しが維新だ。維新はプレゼンスの維持と万博の成功のために自民党・公明党政権にすり寄った。ところがこれが国民から反発されると一転し参議院では反対政党としての存在感をアピールしている。

これではジキル博士とハイド氏である。

教育無償化の成果を勝ち取ったと自慢げだった前原誠司共同代表は大阪組から突き上げを喰らい交渉相手の自民党を呆れさせていたが今度は一転して「既得権益の打破だ」と吠えている。維新はおそらく前原代表と一緒に沈没することになるだろう。

ジキル博士は快楽を貪るために薬を飲んで自身の欲望を満たしていた。この別人格がハイド氏だった。維新はなぜ国会で二重生活を楽しんでいるのか。その動機はよくわからない。やがてジキル博士はハイド氏の暴走に苦しめられ破綻してしまう。

夏に東京都議選や参院選を控え、維新内では「自民の補完勢力と認識されたら埋没する」(関係者)との危機感が拡大。前原誠司共同代表は5日の役員会で「モードを変えなければいけない」と宣言した。「既得権益の打破」といった看板を改めてアピールしようと模索する。

維新一転「野党モード」に 与党寄り批判を懸念(時事通信)

ただ、維新の二重人格ぶりについて議論しても仕方がない。この戦後初の事態は今後どのように推移するのかをみてみたい。予算案は一度衆議院に差し戻される想定になっているそうだ。

政府、与党は7日、「高額療養費制度」の利用者負担上限引き上げの8月実施見送りを受け、2025年度予算案を再修正する方向で調整に入った。石破茂首相は、早急に結論を出す考えを表明した。参院で再修正し、可決した上で衆院に送って改めて議決する運びを想定している。参院の審議日程は窮屈だが、月内の予算成立は可能だとみている。複数の与党幹部が明らかにした。

25年度予算案、再修正へ調整 政府与党「月内成立は可能」(共同通信)

予算案は衆議院が優越となるが意見が異なった場合には「両院協議会」が開かれるそうだ。今回は参議院の議決に合わせる形で衆議院の議決をやり直す方式が想定されているということになる。

ここでふと疑問が湧く。

維新は参議院では「反対野党」だった。では衆議院ではどうするのか。またジキル博士が出てきて予算に賛成するのか。それともハイド氏になって暴れるのか。仮にハイド維新が暴れた場合に立憲民主党はどう行動するのか。まだまだ見どころが多い国会になりそうだ。

各政党とも自分たちの行動が有権者にどう評価されているかがわからなくなっているようだ。極めて強い予定調和志向を持ちつつ何が正解なのかよくわからないということになりつつある。

今回の修正で「命かお金か」の選択を迫られていたガン患者はほっと胸をなでおろしているだろう。選挙が終わったとで「禊は済んだ」とならないことを祈りたい。

また、議論の過程で現在の診療報酬制度と漠然とした「低価値・無価値の医療」の無駄遣いには問題があることがわかってきた。

ぜひこのあたりをきちんと議論していただきたいとは思うのだが、政治家の振る舞いを見ていると選挙で頭が一杯になっており国民生活にまで気が回らないということがよくわかる。仮に参議院で自民党が惨敗すれば再度方針を決めるのは石破総理ではないかもしれない。

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