マクロン大統領がヨーロッパにフランスの核の傘を提供すると申し出た。ただし意思決定はフランスが独占すると言っている。力による現状変更を嫌うヨーロッパだがトランプ大統領がもたらした動揺を利用した主導権闘いが始まっている。
すでにイギリスが英仏が主導するウクライナの平和維持の枠組みを提案をしている。またドイツも今回の件を利用して債務上限の拡大を実現したい。
イギリスはEU撤退を通じて大陸ヨーロッパに対する影響力が弱まっており起死回生を図りたいのだろうし、ドイツも経済が好調なときに周りに押し付けてきた厳しい財政ルールを撤回させたい。今回、トランプ大統領がもたらした動揺はヨーロッパに積極利用されようとしており、ウクライナはそのための道具に過ぎない。
ただしマクロン大統領は意思決定はフランスが独占すると言っている。あくまでもヨーロッパの命運を握るのは自分たちでなければならないというマクロン大統領の考えがあるのかもしれない。
と同時に政敵に対する対策という意味合いもあるかもしれない。次期大統領選挙を狙うルペン氏が核共有に強硬に反対している。
このニュースをQuoraで提供したところNATOはドイツを抑える枠組みでありフランスが念頭に置いているライバルはドイツなのではないかと考える人が多かった。しかし、今回のニュースを見るとドイツとフランスは協力関係にありこの見方は正しくないようだ。少なくとも現実に起きている動きを説明できない。
なぜフランスとドイツが協力関係にあるのかはわからないがいくつかの仮説は立てられる。
第一にドイツは厳しすぎる財政ルールを緩やかなものにしたい。このためには域内協調が欠かせない。第二にドイツの次期首相もマクロン大統領も「極右」という共通の敵がいる。バンス副大統領やイーロン・マスク氏が露骨なAfD推しだったこともありマクロン大統領の警戒心が高まったとしても何ら不思議はない。
アメリカ合衆国はウクライナへの支援を再開する意向を示したなどと伝わっている。アメリカ国内でトランプ大統領はプーチン大統領の協力者であると言う見方が出ている上に同盟国ヨーロッパとの関係を重視する人が多いからだろう。
しかしトランプ大統領が作り出した亀裂はむしろヨーロッパの現状変更に利用されているという側面がある。
ヨーロッパはアメリカは対中国封じ込めにおいてNATOの中のアメリカ合衆国と協力するという体制に緩やかに移行し始めており地域におけるアメリカ合衆国のプレゼンスは弱まることが予想される。実はヨーロッパの指導者たちもアメリカ合衆国の強すぎるプレゼンスにどこか居心地の悪さを感じていたということがわかる。