トランプ大統領が「日本は為替操作国だ」と発言したことを受けて日本円が急騰した。将来の日本経済に不安を覚えた人も多いだろう。
実際に日本に関税がかかるのか。この参考になるのが対カナダ・対メキシコ・対中国関税だ。各国から反発が起きているがトランプ大統領はさほど気にしなかった。
しかしこの関税はまもなく弱まるはずだ。投資家たちは「本当にやりやがった」と動揺し株価が急落した。これを受けて商務長官が火消しに走っている。
ただしアメリカは謝ったら死んでしまう病にかかっているため、相手が情報してきたから寛大にも関税を取り下げた・実施しなかったと表明したいようだ。
トランプ大統領の関税発動宣言を受けて株式市場は2日続けて大幅下落した。またアメリカのテレビ局は「トランプ関税によってインフレが再加速する」と煽り立てている。
これを懸念した商務長官が「関税軽減」を仄めかし株価が反発している。
トランプ大統領は施政方針演説で強い交渉力を持った大統領がアメリカの栄光を取り戻すと約束した。つまり、トランプ大統領は交渉上手の大統領としての自己イメージを保持する必要があるのだから失敗を認めるわけには行かない。
インフレはすべてバイデン大統領の失策のせいであるということになっている。鳥インフルエンザの流行によって卵の価格が上がっているがそれもバイデン大統領のせいだ。
このためトランプ大統領は株価下落と物価上昇は許容できない。投機筋はすでにこれを見越しており「トランプ大統領は振り上げた拳をすぐに下ろすだろう」と予想している。この上下動で利ざやを稼ぐ手法がBloombergがタイトルにしたトランプ・プットだ。交渉の天才どころか投資家に見透かされている。
このためトランプ大統領が関税を軽減するにしても「相手から何か妥協を引き出した」と主張できなければならない。しかしながらこれはDV加害者への妥協に過ぎない。つまり次にもまた殴ってくださいねと言ってすがりついているということになる。
トルドー首相はアメリカ国民に向けて自分たちはこんなことはしたくなかったがこれはアメリカが始めたことであると理解を求めている。おそらくこれが正しい態度だろう。カナダはアメリカの隣人でアメリカ合衆国から逃げられない。
トルドー首相の対応は日本に対して教訓を与える。「大統領は間違っている」と伝えれば激怒するのだから一度やらせてみて痛い目を見させるしかない。つまり、何らかの衝突と犠牲は必要になるとういうことになる。
我々の側にも覚悟が必要だがなにかにつけて評論家的な論評しかしない上に英語が下手な石破総理にその覚悟があるのかやそもそも日本国民がこうした構造を理解できるのかが問われていると言ってよいだろう。
トランプ大統領は日本のリーダーに電話をかけたと言っているが、石破総理は電話など受けていないといっている。トランプ大統領は「こうあってほしい」ことを「こういうことがあった」と言ってしまう傾向がある。また実際に会っている石破総理の名前を覚えていないので「日本のリーダー」だと言っている。
トランプ大統領のポピュリスト的な施政演説は大勢のアメリカ人を不安に陥れる一方で一部の狂信的な支援者を喜ばせるだけに終わった。ポピュリストの発言だけ会ってそもそも自動車には関税が適用されていないなど誇張された側面がある。ただし象徴的な発言であってもカナダの首相とカナダ国民を怒らせるには十分なインパクトがあった。同じ言語を話すトルドー首相がトランプ大統領に妥協しない姿勢を見せるとトランプ大統領は振り上げた拳を下ろせなくなるかもしれない。
- カナダ・メキシコ関税、自動車は1カ月適用除外-ホワイトハウス発表(Bloomberg)
トランプ大統領の発言を聞くときには「その直後に何らかの発表があるか」「直前にトランプ大統領が失敗していないか」を調べたほうが良い。と同時にそのうちに誰もトランプ大統領の言うことなど聞かなくなるだろうということもわかる。