産経新聞が「自民党に対する30代の支持が落ちている」と書いている。ただし自民党の支持が落ちたとは書かずに「あのれいわ新選組に負けた」としているのがポイントだ。
立憲民主党も支持を失っており日本の政治言論がオールドメディア対新興メディアで二分されていることがわかる。新興メディアを中心になぜ財務省解体デモが報道されないのかという不満の声もあるようだが「新興メディア」もオールドメディアの攻略を研究すべきではないかと思う。
産経新聞の記事にはこうある。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が今月22、23両日実施した合同世論調査で18~29歳の支持率は11・8%、30代が11・2%とそれぞれ令和5年1月以降最も低い数字となった。30代は国民民主党(15・9%)に加えて、れいわ新選組(14・4%)にも後塵を拝する結果となった。
自民「れいわ新選組ショック」30代支持率で逆転、公明と対応協議へ「30代の意見大事」(産経新聞)
国民民主党に負けたと書かずに「あのれいわ新選組に負けた」としているのがポイントだ。立憲民主党も支持を落としておりオールドメディアしか見ていない人たちとそれ以外の間に大きな政治観の隔たりがあることがわかる。
ただしヤフーニュースのコメント欄には母数が少なすぎるので階級ごとの分析は意味がないのではないかとする指摘も出ている。
いずれにせよ、日本の政治観は大きく三つに分かれていることがわかる。
- 東西冷戦を背景にして「自民党・社会党対立」として政治を理解する人たち。主にオールドメディアと呼ばれる新聞やテレビを見ている。
- 就職氷河期世代と呼ばれた50代前半から40代後半の人たち。安倍政治に期待し自民党を支持したが成果はなかった。
- 安倍政治を知らない人たち。困窮の時代に適応した省エネ型という一種の合理的思考は身につけたが、政治的言語は持たない。
日本では個人が政治的意見をすり合わせする文化がないため一度獲得した思い込みは終生修正されることはない。結果的に全体がフラグメンテーション(記録の断片化)をおこしたままになる。これが反映したのがどの政党も支配権を握ることがない少数野党状態だ。
維新の会は予算案賛成直前に「このまま賛成してもいいのか?」と揉めたそうだが、背景にあるのは30代を中心としたネット世論を獲得できないのではないかという焦りなのかもしれない。はざまの世代として「自民党と折衝すべき」という気持ちはあるが「なんかアピールできていない」と思っている。元兵庫維新の県議会議員が維新の代表ではなくネットで反対運動を繰り広げる立花孝志氏を頼ったのも同じような気持ちがあるからだろう。
そもそも既存の政治とは意思疎通ができないので対話が成立しない。国民民主党のようにあえて対話を継続してみせる人たちとれいわ新選組のようにそもそも話が噛み合わないという人たちがいる。
そもそも対話ができない人たちが起こしたのが財務省解体デモだ。ネットでは盛んに語られているのにオールドメディアが取り上げないという点が問題視されている。兵庫維新の議員たちも「あえてオールドメディアが取り上げない問題提起をした」と主張していたが同じように「自分達は顧みられていない」という被害者意識がある。
日本の学校ではディベートも政治教育もやらない。また「察してもらう」という受け身の文化がある。このため「政治的な言語を身につけない」人たち拳を振り上げ体を震わせて不機嫌さを表明するしかない。この政治的赤ん坊が一つの大きな不機嫌な塊を形成しつつある。
話し合いによる民主主義が崩壊しつつあるともいえるだろう。
財務省解体デモが休日に行われたことから氷河期世代を代表する論客のひろゆき氏は「意味がない」と言っている。現在50代の堀江貴文氏も同意見なのだそうだ。ネット世代といっても30代とその上の世代には乖離があるのかもしれない。
ヨーロッパやロシアの事例を見ると相手を攻略するためには相手を研究すること重要という気がする。つまり財務省解体デモを見せたいのであればマスメディアにプレスリリースを出した上で(つまり報道材料を渡してあげた上で)実際に画を撮らせるという「小賢しさ」も必要だ。だが、日本人は極めて戦略下手で「どうしてみんなわかってくれないのだろう!」と一方的に不機嫌になる人が多い。