予定調和という言葉がある。国民のためのガチの真剣勝負を演出している通常国会だが、結局は単なるアピール合戦であり「まとまるところにまとまるのだろう」という気がする。
ところがこの予定調和にわずかではあるが狂いが生じ始めているようだ。予定調和的なプロレスだったとしても観客は必要だ。だがそもそも肝心の観客が集まらない。
年度内に予算を成立させるためには参議院を消化試合にしなければならない。そのためには3月2日までに衆議院を通過させなければならない。ここから逆算すると先週までに予算合意ができていなければならなかった。
イデオロギーを持たない維新が政党であり続けるためには政府・与党の提案する予算に賛成して有権者に分配し続けなければならず、自動的に与党の翼賛政党にならざるを得ない。
ところが土壇場で維新の両院議員総会が紛糾したそうだ。自民党・公明党・維新との間の合意は終わったが維新の党内調整ができていないという不思議な状況だった。
だが一体誰が何に反対しているのかが全く伝わってこない。極めて不思議なニュースだった。おそらく「抵抗する姿勢を見せたほうがトク」と考える議員が複数名いたのではないかと思うのだが、いくら調べても彼らがその先にどんな提案をしているのかが見えてこない。
結果的に「維新の主張を念頭に置く」というなんの保証もない文言が入っただけの合意文書がかわされたそうだ。医療費4兆円削減などを求めてゆく考えだが、高額療養費の改悪が世論から批判されており維新の側からも代替提案が出ていないため、努力目標にすらならない。
代替提案がないのだから「そもそも何も報道されない」のも当たり前かもしれない。
兵庫維新の議員たちの言い分を聞くと「根拠のない風評を流してでも県知事与党でいたい」という気持ちが強い人達が多いようだ。申し開きを聞くと「告発の内容が真実かどうか」にはほとんど興味を示していない。マスコミは自分たちの報道に責任を保つ必要があるが、兵庫維新の議員たちにはそれが理解できない。かといって訴訟を覚悟で嘘をばらまく気概もないため自党の代表ではなく他党の代表の「発信力」に期待してしまった。これでは除名されても当然だろう。
維新は「とりあえず与党でいたい」「どんな手段であっても議員としてしがみつきたい」という程度の人たちの集まりであり、政治で何を実現するのかにはあまり興味がないのかもしれない。
お騒がせ三人衆の処分を巡って「除名だ、離党勧告だ」などと騒がれている。しかし世間の関心は高くない。そもそも維新の議員への期待は乏しいため「裏切りだ」とすら感じられないのだろう。
さらに大阪維新も万博で政府の協力を必要としている。チケットがかなり売れ残っているようでこのままでは結果責任を問われかねない。
一方立憲民主党も苦しい立場に置かれている。
与党の代替選択肢であると打ち出したいが、期待を集めているのは「現役世代の代表」として認知されつつある国民民主党だ。日程闘争政党とも見られたくないが振り上げた拳を下ろせなくなっている。結果的に政府与党は3月2日までの予算の衆議院通貨を断念した。とはいえ立憲民主党も何も勝ち取ることが出来ず自民党の要求に従って質問内容を弱化させたそうだ。
野党が参議院選挙で成功するためには自民党との差別化を通じて漠然とした不満を募らせる有権者の関心を勝ち取らなければならない。
しかしそのためには自民党と協力する必要がある。有権者はそもそも政治には期待しなくなっているうえに「こうした事情」を薄々察しているためプロレスが成り立たなくなりつつある。