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ドル円が再び149円台に ドル資産の将来とマールアラーゴ合意仮説

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昨日、ドル円が150円を割ったというニュースをお伝えした。その後150円台を回復したため「意外とドルの下落(と円の上昇)は短かったな」と感じたのだが今になって再び149円台に入っている。

BloombergやREUTERSなどを読むと来週は円高基調だということになっている。合理的なロジックで動いているというよりは市場の気分で乱高下しているように見える。記事を出す前にもう一度確認したところ瞬間的に148円台に入ったところでドルが下げ止まったようだ。

今朝はBloombergにある小さな(つまりさほど注目されていない)記事をご紹介する。ドル建ての投資の価値が大幅に下落する可能性があるという仮説である。

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アメリカ合衆国は「予算案が可決した」とされている。ところがこの予算案は日本のような一括予算ではないようだ。記事を読んでみたが一体何が可決されたのかはよくわからない。少なくともトランプ大統領の要望が上院に聞き入れられることはなかったようである。こうなるとトランプ政権は別のところから予算を捻出してくるしかない。それが人件費の削減と関税である。どちらも様々な摩擦を生み出している。

政府は国民生活を犠牲にして債務を減らすことができる。敗戦後の日本は借金をすべて国民に「インフレ税」という形で背負わせた。Bloombergはいわば「マールアラーゴ合意仮説」のような形でこれを紹介している。ただしこれがメインストリームの説というわけではなく、あくまでもこっそりと紹介されているに過ぎない。

30年余りの市場経験を持つベテランのビアンコ氏によれば、米国の債務負担を劇的に再編するという考えは、関税を用いて国際貿易を刷新し、ドル安を誘導し、最終的に借り入れコストを引き下げるというトランプ政権チームのアジェンダ(政策課題)の一環であり、いずれも米国の産業を世界の他の国・地域とより対等な立場に置く狙いがある。

ウォール街が警戒する「マールアラーゴ合意」-国際金融秩序の再編も(Bloomberg)

現在アメリカの株式市場には多くのマネーが流入している。現在の基調が続くならば投資家はアメリカ人を坂のきついトレッドミルに乗せたまま大儲けできる。しかし仮にマールアラーゴ合意仮説が実現すればドルの価値は一夜にして下落する可能性がある。一方の関税政策は米ドルの価値を徐々に下落させる。いずれにせよ世界中の投資家たちは絶叫することになるだろうがお金を借りている側の企業は大儲けできる。借金の負担が劇的に減るからだ。

トランプ大統領はうってつけの大統領である。トランプ大統領は様々な形で世界から投資を集めているがおそらく自分が何をやっているのかはよくわかっていない。自分が何をやっているのかよくわかっていないのだから外から見ればもっとわからない。

カネを集めるだけ集めてからその価値を破壊すればトランプ大統領は恨まれることになるだろうが「借金した側」はトクをする。

スピードによっては現在金利が低い日本で資金を調達してアメリカで高値運用している人などは大きな被害を受けるかもしれない。これはアメリカの国債を大量に持っている日本政府も同じことである。

FRBはやるべき仕事をやっている。政治が不確実性を増すなかで余計なノイズは乗せたくなかったのだろう。QT(量的日引き締め)を減速ないし停止するという観測が広がっているそうだ。Bloombergは「政治の混乱に備えている」と書いていたがREUTERSは単にFRBと議会を切り離している。

いずれにせよアメリカ合衆国では政治の混乱が懸念されており金利が期待された水準までは下がらないのではないかという観測が支配的になっているようだ。ただしFOMCが一旦QT減速を決めたことで金利の高騰は阻止されたということになった。

一方の日本でも長期金利が上昇を始めた。石破総理は国際利払い費の高騰を懸念する発言を行い、植田総裁も長期金利が急速に上昇すれば国債を買い入れると表明したため、一旦ドル円市場が反転し150円台を回復した。

しかしながらどういうわけかニューヨーク市場の取引が始まると再び円高が進行し始めている。海外では日銀が早期利上げに追い込まれるであろうという観測が出ているようだ。Bloombergは来週は上昇の公算と見出しを打っている。

個人的にはこれを肯定する根拠も否定する根拠も持たないため「ああそうなのか」と思うしかないのだが、150円を挟んで市場の思惑に左右され激しい上下動を繰り返すようになるのかもしれない。

しかしながら日本の思惑と懸念(ここで金利が急騰すればゾンビ企業の倒産が増えかねない)とは全く独立したところで「日本の低金利政策はもうもたないだろう」と見られているのだなあと感じた。

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