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イーロン・マスク氏のDOGEがCOBOLに絶叫

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イーロン・マスク氏が率いるDOGEが連邦職員たちを激怒させている。確定申告のシーズンを前にIRSの職員が大量解雇された。背景にあるのは進まない議会対策だろう。この中で面白い記事を見つけた。それがCOBOLである。個人的にはCOBOLのプログラミンをやった経験があり「面白いな」と感じた。非常に古い構造化プログラミング言語なので今のエンジニアが頭をかきむしる気持ちもよく分かる。

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イーロン・マスク氏が率いるDOGEがIRSで数千人規模の大量解雇を行った。庁内では怒号が飛び交っているという。過去に高評価を受けていた人たちも「パフォーマンスが低い」と解雇されているようだ。アメリカでは評価が文書として残るため私はパフォーマンスが低いわけではないという人たちの主張には客観的な証拠がある。

背景にあるのはおそらく議会との調整不足に起因する政治の混乱だろう。上院はトランプ大統領の政策を推進するための予算を徹夜で通したそうだが、債務上限の引き上げや減税などは含まれなかったそうだ。上院と下院がそれぞれバラバラに予算(の一部)を編成する異常事態になっている。結果的に関税収入が「財源」になってしまうのだが、これは形を変えた内国課税似すぎないうえに外交上の軋轢を生み出す。

トランプ政権は「埋蔵金」代わりに人件費を削って歳出を抑えざるを得ない。このため何でもありの状態になっているようだ。マスク氏は社会保障は何者かに盗まれていると主張している。曰く100歳以上の人が大量に社会保障の対象になっているというのだ。CNNはこの主張は「根拠なき風評である」としている。

しかしながらCNNの主張は単にマスク氏を嘘つき呼ばわりするだけでなぜこんな問題が起きたのかについては調査していない。いわゆるオールドメディアにありがちなことだがIT技術上の評価ができないのだ。

これを解き明かした媒体がある。それがWIREDである。

COBOLには日付型がないので、一部のシステムではすべての日付を特定の基準日に基づいてコード化する方式が採用されている。よく使われる基準日のひとつに1875年5月20日があり、これはパリで主催された単位の確立と普及を目指す国際会議「メートル条約」の開催日である。

イーロン・マスクの「150歳が社会保障給付を受けている」という主張は“誤解”である(WIRED)

COBOLは日付型がないためカレンダーを「自作」する必要があるとされている。調べたところ日付を処理する関数はあるようなので「作られたときにはなかった」のか「特殊なカレンダー処理ができないのか」まではわからなかったが、基準日を作ってその差分でカレンダーを作るというハックが一般化していたようだ。

WIREDの記述がどこまで正確なのかはわからないが、COBOLは構造化プログラミング言語と言われる古い言語なのでこうした職人芸が多用されていたことは確かだ。だがドキュメント化が進んでいないためロジックが解析できず、結果的に手つかずのCOBOLが今動いているからという理由だけで採用され続けているそうだ。

とにかく動いているものは触るなというのがCOBOLの掟なのだ。だって動いているのだから。

DOGEの若いエンジニアたちがこうしたCOBOL依存の環境を見れば「生産性が低い」と絶叫することは目に見えている。まるで現代から中世にタイムスリップしたように感じるだろう。そもそも亡くなったにも関わらず大勢の記録が生きたまま残っているということじたいが社会保障当局の非生産性を象徴しているといえる。

だが取材しているCNNの記者もおそらくこのWIREDの文章は理解できないだろう。お互いに意思疎通ができず大騒ぎになっているというのが今のアメリカの現状なのだなと感じる。

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Comments

“イーロン・マスク氏のDOGEがCOBOLに絶叫” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    日本でも一部の金融関係で使われており、COBOLとメインフレームのセットで使われているイメージです。「数十年したらCOBOLはなくなる」と思われていましたが、今でもしぶとく残っていますね。
    しかし、富士通みたいにメインフレームから撤退する企業は増えるだろうし、COBOL技術者は高齢化して、若い人に教えるのも色々と難しいと思います。仮に覚えたとしても、複雑怪奇なCOBOLとメインフレームで構成されたシステムに対応は高難易度で炎上案件なので、メリットは無いに等しいですね。
    メインフレームを置き換えたり、COBOLから一部Javaにしているところもあるようですが、膨大な時間と労力と金が掛かるので、躊躇してしまいなかなか置き換えは進まないですね。

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    1. この時代のプログラムは理性ではなく「血と汗と涙」で動いているんですよね……

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