鳴り物入りで始まったロシアとアメリカの直接交渉だが結果的に大きくトーンダウンしている。結論を先に書くとルビオ国務長官がロシアの本気度を確かめるためにとりあえず会ってみるという会合になりそうだ。シロウトというのは恐ろしいものだ。交渉の過程でヨーロッパの関係国を不必要に怒らせ中国がヨーロッパに接近しロシアがヨーロッパを攻撃するるきっかけが作られた。トランプ大統領はうまくゆかないディールからは逃げてしまう傾向があり(日本製鉄の交渉がそうなっている)アメリカ合衆国は地域情勢を悪化・混乱させるだけで終わってしまうかもしれない。日本のメディアは将来分析と経緯の記述を行わなくなってきているので「一体何が起きているのか」がわからないという人も多いのではないかと思う。
ここまでで330語。
いいねに使っていたWP-ULikeに脆弱性が見つかりましたので利用を停止しました。ご迷惑をおかけします。
ミュンヘンの安全保障会議はバンス副大統領のルサンチマンに満ちたヨーロッパ批判から始まった。次に軍人出身のケロッグ氏が「ヨーロッパを参加させない」と表明しヨーロッパに動揺が走った。エリゼ宮で緊急会合が開催され今後日本語の要約記事が作られるであろうという状況だ。
会議にはドイツ、英国、イタリア、ポーランド、スペイン、オランダ、デンマークの首脳、欧州理事会議長、欧州委員会委員長、北大西洋条約機構(NATO)事務総長が参加し、アメリカ合衆国は呼ばれなかった。アメリカ合衆国側は決定内容を報告せよと要望している。
イギリスが平和維持活動への派兵を表明したが選挙を控えるドイツとロシアに近いポーランドは議論は時期尚早としている。イギリスでは野党の一部が「議会で議論をする必要がある」と反対している。
今回最も混乱しているのが代表団の陣容だ。当然ケロッグ氏が参加するものとみられていたが「どうやら参加しないようだ」ということになった。記述はBBCのもの。受動態になっており主語が明確ではない。
Over the weekend it was revealed that Kellogg would not be in attendance at this week’s summit in Saudi Arabia where representatives from the US and Russia will meet.
Starmer says ‘there must be a US backstop’ for any Ukraine peace deal(BBC)
一方でルビオ国務長官はアメリカのガザ所有計画の推進で忙しく「ロシアとの会合は単なる顔合わせで重要な一歩ではない」と会議を軽視(downplayed)していた。
Meanwhile, Rubio downplayed the Saudi Arabia talks, saying one meeting would not solve the war and that a formal negotiating process – that would mediate between Ukraine, Russia and third parties – had not yet been set up.
Ukraine not invited to US-Russia peace talks, source tells BBC(BBC)
そもそもバンス副大統領は上院議長も兼ねているので外国との交渉は行わない。ケロッグ氏も出ないようだ。外交シロウトが関わっても状況が混乱するだけなのだから「正しい判断」とはいえる。
肯定的に判断するならばヨーロッパに対して「アメリカに依存していても不安定さが増すだけだ」というウェイクアップコールにはなった。だが不必要な混乱を招いただけとも言える。成り行き次第ではロシアがヨーロッパを攻撃する口実を与えかねない展開だった。
では結果的にロシアとアメリカの会合には誰が参加するのだろうか。共同通信はルビオ国務長官とラブロフ外務大臣が参加するとしている。また国務省の報道官はロシア側の真意を確かめる会合になるであろうと言う認識を示しているそうだ。BBCによるとラブロフ外務大臣はヨーロッパとの交渉を拒否していると伝わっておりケロッグさんの発言はラブロフ外務大臣のを代弁したのかもしれない。
ここまでで1700語であるが結論は「最初の想定よりもずっと意味の小さい会合になりそうだ」ということになる。
日本の報道を見ると断片的な「〜によると」という情報が伝えられるばかり。現在は復活祭の4月20日までに停戦が実現するといいなというトランプ大統領の希望的観測が一方的に伝えられている。日本人はアメリカの軍事力と外交力に過大な期待を持っており「アメリカの大統領が停戦すると言えば停戦する(のではないか、詳しいことはよくわからないが)」という程度の認識なのかもしれない。
現在の傾向としてSNS上では「誰が何を間違えたのか」を監視する動きが出ている。このため「間違ったことを書くと世間からバッシングされかねない」という気持ちがあるのかもしれない。結果的に何もまとめられなくなってしまい読者がこうして情報を独自にまとめる必要が生じるということになる。
結果的に「今後の動向は流動的」ということを書いただけなのだが、ここまでで2200文字になっている。個人的にはあらましが理解できたので満足しているが、スマホでこの文章を読んでいる人でここまでたどり着いた人はいるのだろうか。
Comments
“4月20日までの解決を目指すも ウクライナ和平交渉がトーンダウン” への2件のフィードバック
自分がよく視聴している投資情報に関する動画チャンネルでは、どちらかと言えば、マスク氏の動向を含めて、トランプ政権の経済政策が肯定的に語られることが多いです。
この記事のおかげで、外交政策の一端も知ることができました。ルビオ国務長官の言動が、欧州に危機感をもたせるためのブラフではないとすれば、ウクライナ紛争の早期沈静化は容易ではないことを理解できました。ウクライナより中東を優先する米国の姿勢は明らかですね。
コメントありがとうございました。ビジネスにとってはいい環境だと思います。逆にいい環境過ぎて経済過熱と市場破壊を懸念しなければならない局面ですが、日本は真逆(心配しすぎて何もしない)なので羨ましく思う人は出てくるんでしょうかね。いつもご覧になるメディアの論調がどんなものなのかは気になるところです。
ご指摘のように「欧州に危機感をもたせる=ウェイクアップコール」という見方はできますよね。
バンス・ケロッグ組がヨーロッパを刺激してしまったのでヨーロッパに配慮したルビオ氏が沈静化を図っているという見方をする人もいるみたいです。また硬軟使い分けて交渉をうまく運ぼうとしているという事も考えられる。
ということで結局はボラティリティが高い状態で経過観察ということになりそう。特に投資をしている人には極めて厄介な環境だと思いますが、ここに勝機を見出す人もいるんでしょうかね。