2月17日から確定申告が始まる。確定申告を行う年金世代はこの中に「控除外額」という項目を見つけたことだろうがそのままスルーしている人も多いはずだ。
もらえるべき支給金が貰えていない可能性がある。
このブログエントリーには2つの難点がある。制度そのものが複雑なため当事者である年金世帯はおそらくこの文章の内容が理解できないだろう。さらに文章を理解できた現役世代は「なぜ高齢者ばかりが優遇されるのだ」と考えるのではないか。
医療費などの還付金のために確定申告を行う年金受給者がいる。E Taxが充実し申告自体はかなり便利になっているようだ。公的保険の対象分はマイナポータルからそのまま情報を流し込めるようになっておりレシートを整理する必要がない。
このときに「控除外額」という項目があり「これはなんですか?」と質問する人が出てくる。この時に税務署は「定額減税を受けられなかった額ですね、支給金を貰いませんでしたか?」と説明することになっているのだが「いやそんなお金はもらっていないなあ」と考える人もでてくるだろう。
実際にどんな事になっているのか。千葉市に問い合わせしてみた。
岸田総理は選挙対策として定額減税を行うことにした。当時バラマキと批判されたためなんとなく議論を覚えている人がいるかもしれない。バラマキなので減税しきれない高齢者には別途支給を行うことにした。(なお千葉市の担当者が「バラマキ」と言っているわけではないので念の為)
地方自治体にはリアルタイムで国からの徴税データは来ないので地方自治体は住民税から国税の納付状況を推定する。この時に国は「住民税がゼロの世帯は対象に加えなくても良い」というガイドラインを出し「多くの自治体がそれに従った」と千葉市の担当者は主張している。
しかし当然ながら住民税がゼロの世帯が所得税を納めているはずもない。この支給金は申告制だったので、該当世帯(個人ではない)に案内を送り申込みをして初めてもらえる制度になっていたが、すでに申込みは終わっており窓口も閉まっている。
ところが確定申告のシーズンになり別の問題が生じた。
源泉徴収票にある見慣れない「控除外額とは何か?」と質問が飛ぶ。税務署は「岸田政権が景気対策の一環として……」と説明する。すると「いや私はそんな支給は受けていません」という人が出てくる。
問い合わせが発生したために千葉市は「定額減税調整給付金(不足額給付分)」のための案内ページを作った。
まず不足額給付とはなにかを説明し、税務署から「市区町村に問い合わせろといわれた」際の「受け取り方」を説明している。
ところが千葉市役所は「受け取り方」と「受取額」の説明ができない。国からガイドラインが降りてきていない上に地方自治体は納税情報を持っていないため「一体いくら」が支払われるのかもよくわからないのだ。
調整給付金(不足額給付分)について、詳細が決まりましたら、市政だよりや市ホームページ等でお知らせしますのでお待ちください。
定額減税調整給付金(不足額給付分)に関するよくある質問(千葉市)
なぜこのような混乱が生まれたのか。
第一に日本は納税情報を管理する機関がない。主にリベラルが「国民総背番号制度」などと国の「監視」に反対してきた。
次に国税は財務省の管轄になっており地方自治は総務省の管轄になっているというセクショナリズムがある。ただ千葉市の担当者に言わせればこのプログラムは内閣府の管轄なのだという。おそらく地方自治を担当する総務省が嫌がったのだろうが、結果的に混乱を招く制度になってしまっている。
おそらく年金受給世帯の多く(確定申告をしない人たち)はこの「控除外額」という数字を理解しないだろう。さらに、この込み入った説明を理解できる人も少ないはずである。結果的に「貰えているものが貰えていない」と不満を訴える人たちだけが増えることが予想される。地方自治体の窓口職員は具体的な支払い方法も説明できず延々と文句を聞かされることになる。
さらにいえば、そもそも現役世代は「なぜ高齢者ばかりが優遇されるのか!」といらだちを覚えるだろう。
千葉市の担当者に「いつ頃か」と聞いたところ「夏頃」と言っていた。夏とはいつなのか?と聞いたら「6月・7月・8月」だという。では6月にわかるのかと聞くと「では8月を公式見解ということにしてくれ」とのことだった。ウェブサイト上では次のように説明されている。
手続き等につきましては、詳細が決まり次第、市政だよりや市ホームページ等でお知らせしますので、今しばらくお待ちください。(令和7年6月下旬から令和7年7月上旬頃を予定)
定額減税調整給付金(不足額給付分)に関するよくある質問(千葉市)
そもそも岸田政権は「今、物価高だから税金を減税する」と主張していた。しかし、高齢者の反発を恐れて高齢者にも割戻しをしたが、結果的に支払いが終わらない世帯が多く生まれている。おそらく岸田総理はなんの責任も取らないだろう。彼はもう総理大臣ではない。
なお今回のケースは「お金」に関することなので不安がある当事者は曖昧に理解せず地方自治体に問い合わせていただきたい。
Comments
“源泉徴収票の「控除外額」に注意 定額減税調整給付金(不足額給付分)について” への4件のフィードバック
こういう話は、税金だけではなくて許認可を得るような事務手続きでも聞いたことがあります。通達などで申請することが増えたのでその部分を聞くと、「まだ厚生省から具体的な記入等の内容が知らされていない」と言われたことがあると仰る年配の人がいました。それを聞いたときは、受付のお役人も御上に色々と振り回されているのだなと思いました。
日本の税金関係は複雑なところが多いなと感じています。納税情報を管理する機関については、たしかに監視的な部分はあるかもしれませんが、利便性や事務コストの低減などの利益と比較すれば、利点のほうが上回るんじゃないかなと思います。しかし、それと同時に税金に関わる制度の設計が、無駄に複雑すぎるのも問題だし、その部分を改善できなければ機関を設立しても無駄になるんじゃないかなとも思いました。
そんなことを考えていると、燃料費に対する税金について思い出すことがありました。ガソリン税を下げるのではなく、補助金を出していたのを見たとき、絶対にガソリン税を下げるほうがシンプルだと思いました(税金を下げるハードルは高いのかもしれませんが)。制度を作る立場の人たちは、それが複雑なせいで被る苦労をしないので、シンプルなほうに改善できないのでしょうか。
各方面に配慮した結果制度が複雑化するということはこれからも増えそうですよね。一度クリアするために政権交代すると良いと思うのですが変化を嫌う有権者は望まないんだろうなあという気がします。対トランプ会談の結果石破総理の支持率も若干伸びているみたいですから「これまで通り」に安心する人が多いんだろうと感じます。
税額から引いて引ききれない分を振り込む、なんてややこしいことをするから混乱するのですね。一律に一人○万円とか振り込めば同じことなのですが。
やはり日本人は馬鹿です。
もともと「増税メガネ」というあだなを払拭しようとしたある人が始めているわけですから、主語は「日本人」ではないと思いますが、まあ有権者は容認しているわけですからね。やっぱり主語は日本人なんですかね……