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SNS化するアメリカの政治 マスク氏がDOGE(政府効率化省)を擁護

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アメリカ合衆国の政治がSNS化している。それぞれが根拠のない主張を繰り返し収拾がつかなくなっている状態だ。

イーロン・マスク氏がホワイトハウスのオーバルオフィスで会見を開き自身が率いるDOGEの計画を擁護した。その主張はなんとなく「正しいのかな」と思わせるところもあるのだが根拠が示されていない。

例えて言うならば中居正広氏とフジテレビの問題における文春砲と似ている。

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マスク氏には「透明化」の懸念が指摘されている。このためトランプ大統領はマスク氏に説明をさせれば問題が沈静化すると考えたようだ。マスク氏は息子のXくんをつれてTシャツ・野球帽と派手なベルト姿で立ったまま自身の政策を擁護した。怒っている記者たちに忖度せずXくんが突然喋りだすのは確かにかわいいのだが、そもそもなぜ子供連れで説明をしようと思ったのかはよくわからない。

実際に内容を聞いていただけるとわかるのだが「マスク氏の言い分にも一理あるな」という気がする。今回の主題は連邦政府の大幅削減だ。マスク氏は「連邦職員の退職はすべて手作業で行われているためとても大量の解雇者を裁くことが出来ない」と言う政府の言い分を批判している。

そもそも連邦政府は生産性の低さが問題視されている。市場原理が届かない(つまり競合がいない)ため生産性が低いままで留め置かれている。つまりマスク氏の言い分を聞いていると「ああそうなのかな」という気がしてくる。

さらにマスク氏は「連邦職員が勝手に私腹を肥やしている」というような主張をしている。これもありそうなことではある。

トランプ氏は、DOGEが「何十億ドルにも上る無駄遣いや詐欺、不正使用」を暴いたと主張した。ただ、これも具体的な裏付けはない。

トランプ米大統領、連邦職員の大幅削減指示-マスク氏は合理化を擁護(Bloomberg)

ただしマスク氏の主張には根拠がない。説明責任(アカウンタビリティ)は関係者の疑念に応えることが重要なのだが一方的な主張を展開し気に入らない人を切ってしまうのがトランプ流・マスク流だ。

更にマスク氏はいくつものビジネスを抱えているため「利益相反」の恐れがある。また「貧乏人の救済は無駄」と考えているのではないかと思う。これはガザにリゾート地を作るために「汚らしいパレスチナ人」を追い出してしまえというトランプ大統領の考え方を見ればよく分かる。おそらく貧困者対策・中間所得者対策をおろそかにすれば死者数10万人ともされるフェンタニル問題の解決は難しいだろう。アメリカでは交通事故よりも多くの人がフェンタニルなどオピオイド系中毒で亡くなっているという記事を探すのは難しくない。

アメリカで最も懸念されているのが司法と行政府の対立だ。

連邦裁判所はすでにいくつかのプロセスを借り差し止めしている。しかしトランプ政権は「民意の支持がある」とこの司法の判断を無視する構えを見せている。BBCが指摘するようにすでにトランプ政権は「訴訟まみれ」になっている。

こうした混乱はすでに国際社会を無秩序化させている。国際政治学者の鈴木一人氏はあるネット番組で「WTOは裁判所のようなものだが裁判官がいない状態」と説明している。調べたところ上級委員会が機能不全を起こしているという記事が多数みつかる。

国連の安全保障理事会もEU+アメリカとロシア+中国の間に深刻な分裂があり実質的に機能不全の状態に陥っている。安全保障理事会が機能しなければ「正しくない」軍事力を行使する加盟国の動きを制限することは出来ない。

確かに連邦裁判所は差し止めの命令はできる。しかしながら軍隊を差し向けて強制するようなことは出来ない。このため圧倒的な民意を背景に行政府が司法を無視し議会がそれを承認してしまうと「法の支配」は崩壊してしまうのだ。

国際社会ではすでに法の支配の崩壊が始まっており結果的に様々な紛争(熱いものや冷たいものなど内容は様々だが)が起きている。おそらくアメリカ合衆国も連邦レベルでは今後そのような状況に陥るのかもしれない。

日本の報道を見ていると「とにかくトランプ大統領さえ刺激しなければ全ては丸く収まるのではないか」という希望的観測を持っている人がほとんどのようだが、その感覚はおそらく現在の世界情勢とアメリカの国内情勢を正しく反映したものとは言えないだろう。ただ、日本人には見たくないものを無視する自由はある。

現在の国際社会は無秩序が支配するSNSに似ていて、その傾向はますます高まっている。ただSNSの無秩序ぶりも「SNSが悪い」というよりは現在の政治状況の反映なのではなきかと思う。

こうした状況が進展する中「誰にも嫌われずに今まで通りの状態を維持する」など不可能なのだ。

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Comments

“SNS化するアメリカの政治 マスク氏がDOGE(政府効率化省)を擁護” への2件のフィードバック

  1. 匿名を希望のアバター
    匿名を希望

    マスク氏の素行ですが、これより前に話されてた繁栄の福音やそれを伝道し続
    けてるテレビ伝道師の人達(ポーラ女史もその代表の1人)もそうなんですが、
    優生思想が基本になってる感じがして非常に嫌です。ああ言う人達は自分が理解
    出来ない存在や意に沿わない存在や足手まといになると見なした存在を切り捨てるのが
    合法である社会や世界を渇望してる様にしか見えません。目障りな存在は全て
    排除してしまえば自分達の楽園と地位は安泰だと思ってるんでしょうから。

    1. 経済ダーウィニズムというそうですが適者生存で敗者は消えてなくなっても構わないという考え方ですよね。この手のイデオロギーがなぜ復活しつつあるのかが肌感覚で(私には)よくわかりません。