日本の高度経済成長を支えた2つの業種「家電と自動車」産業が消えつつある。パナソニックは解体されホンダと日産の合弁交渉は解消された。パナソニックに関しては「別に明日日本の白物家電がなくなるわけではない」がやはり大きな変化が起こりそうだ。
日本政府は「一貫して何もしない」という確固としたポリシーを貫いていて、経済現況把握にすら興味がない。日銀総裁は今はインフレだと言うが、総理大臣は決めつけてはいけないと答弁した。赤澤経済再生担当大臣はやっぱり日本はインフレですと言っている。
今の物価上昇について、日銀の植田総裁がインフレの状態にあるとの認識を示したことなどをめぐり、赤澤経済再生担当大臣は「経済学的に言えば、インフレの状態というのはそのとおりで、植田総裁の認識と特にそごはない」と述べました。
赤澤経済再生相 今の物価上昇“経済学的にインフレの状態”(NHK)
かつて自民党や民主党にもシンクタンクはあったそうだが現在は目立った政策立案のための装置を持たない。政党としての現状把握は行わず曖昧な姿勢を示し続けることによって「政治に期待するな」という力強いメッセージを送っているのかもしれない。
もう国会議員などいらないのではないかという気もする。
政府の狙い通り若者や女性は地方を捨て東京などに流出する。一般国民はいつ来るかわからない冬の到来に備え「NISA貧乏」と言われながらも支出を抑える。国内消費が伸びるはずもない。
かつて日本は「世界一品質にうるさい」日本人が満足する製品を作り海外に輸出するという成功モデルを持っていた。政府の力強い「私達はなにもしませんし、現状認識も持ちません」という一貫した対応はこの消費市場を徹底的に破壊し日本の経済構造を大きく傷つけている。
日産はプライドを捨てることが出来なかった。ホンダとの対等な合弁に安心してしまい積極的なリストラ策を打ち出すのをやめてしまったようだ。ホンダは「日産は危機意識を持っているのか?」と苛立ちを示すようになり子会社論に傾いてゆく。これが日産経営陣の高すぎるプライドを刺激し交渉は頓挫してしまったようである。
パナソニックは「元気なときでなければリストラは出来ない」と考えたようだ。日産の慌て振りを見る限りこれは「正しい決断」のように思える。具体的には従来型の家電に見切りをつける。NHKの記事では通り一遍のことしかわからないのだが電波新聞が詳細なレポートを書いている。
楠見グループCEOは「構造改革は、赤字の時に社員に寄り添うことはできない。今、構造改革をやらないといけない。自身の時にやり切りたい」と話す。また、家電事業について「私たちにとって大切な事業。そのためにも高収益にしないといけないし、大ナタを振るう部分もある」と話した。
パナソニックを25年度末に発展的に解消 傘下の分社を三事業会社に(電波新聞)
やはり希望観測的に「それでも日本のプライドである国産白物家電は残るのではないか?」と思いたくなる。松下電器産業は電球の二股ソケットから出発したと聞くので「自分たちの起点」は捨てないのではないかという希望がある。それを裏付けるような記事になっていない。
電波新聞の記事を拾うと次のようになる。モノになりそうな技術を選択的に拾ったうえで「国内マーケッティングもスリム化する」と言っている。今までのように宣伝販促に時間をかけてももとが取れないと判断したのだろう。
- 再建事業として空質空調事業、家電事業、ハウジングソリューション事業を選定。
- B2C事業はスマートライフに集約する。
- 国内マーケティング体制の強化・機能集約・スリム化を推進し、コスト力を獲得する。
従来の白物家電やテレビなどは中国・台湾・韓国の会社に任せて収益が上がりそうな「スマートライフ」に集中するようだ。電力会社は「オール電化」をスマートライフと呼んでいるため、ネットワーク家電や新築の家に備え付けるための総合ソリューションなどが思い浮かぶが具体的なアイディアはこれからのようである。
パナソニックはこれまで「街のでんきやさん」というパナソニックのお店を中心にAmazonなどと差別化を図ってきた。しかし少子高齢化の進展によりパナソニックのお店も存続は難しくなっているのではないか。今回のリストラ案にはパナソニックのお店に付いての記述はないがおそらくかなり影響を受けるのではないかと思う。パナソニックは住宅メーカーと組んで「大口契約」を狙い細かなメンテナンスを必要とする「街のでんきやさん」依存から脱却しようとしているのかもしれない。確かに元気があるときでなければ整理できないだろう。
やはり意識変革が出来ない「街のでんきやさん」対策と考えると「日産の系列販売店=街のくるまやさんはどうなるのだろう?」という気がする。日産の自動車も複雑化が進んでおり車は「走るコンピュータ」になりつつある。おそらく現在のメンテナンス技術者たちがこの「走るコンピュータ」にキャッチアップすることは難しいのではないか。
と考えると、今回の一連の変化は具体的に「あなたの街の働き口」に大きな影響がでるのかもしれない。「事務屋さん」と言われる人たちはAI化の流れについて行けず、複雑化するスマート家電や電気自動車化について行けない人たちが振り落とされてしまうのだ。
政治なんかなんにもしてくれなくて当たり前などと嘯いている間に我々を取り巻く環境は大きく変化しつつあるのかもしれない。