外出先でスマホを見て驚いた。暇つぶしにYahooニュースを見ていたのだが「コメント」が強調されている。そしてその上位はすべてフジテレビ・中居関連だった。これでは誰も国内の政治には興味を持たないだろうという気がする。そもそも目に触れないのだ。
そこで時事通信と共同通信から関連記事を拾うことにした。石破政権の迷走ぶりと自民党の右傾化がよく分かる。自民党は民主党に負けたときに「天賦人権は我が国にふさわしくない」とする前代未聞の憲法草案をまとめたことがある。右傾化というより「民意に負けてはいけない」と意地を張ってしまうのかもしれない。
まず植田日銀総裁と石破総理の経済に関する見解が食い違った。植田総裁は統計を見ながら「日本はインフレ状態にある」と言っている。しかしながら石破総理は「インフレと決めつけてはいけない」と主張している。
なぜこんなことになるのか。
安倍政権は「デフレマインドからの脱却」を訴えてきた。つまり「デフレはダメな状態」であり「対策が必要だ」というスタンスだ。だが実際のインフレはコストプッシュ型になり恩恵を感じる国民は少ない。つまり「ダメなインフレ」が起きていて、地方を中心に何らかの対策が必要である。
また、これまでの建前を維持すると「デフレを脱却できたのだからこれ以上の対策は必要がない」ということになる。過去の発言と統計の整合性が取れなくなっているため石破総理は身動きが取れなくなっているのだろう。
ただし表面上の発言からはわからないこともある。党内にはアベノミクスの継続を願う人達もいる。脱デフレ宣言を出してしまうと「アベノミクス」を終了せざるを得なくなる。つまり安倍派に忖度して脱デフレ宣言が出せなくなっている可能性もある。
このため「石破総理は本音ではどう考えているのだろうか?」ということが気になる。実際に自民党の内部で何が起きているかは田崎史郎さんにでも聞かなければならない気がするが、ワイドショーが中居・フジテレビ問題にかかりきりになっていることもあり政局報道が減っている。
石破総理が党内保守派を扱いかねている傍証が2つある。
一つは夫婦別氏制度だ。石破総理はこの問題を終わらせたいと考えているようだが高市早苗氏や小林鷹之氏など安倍総理を継承したい人たちが盛んに反対している。高市早苗氏は「通称利用」を拡大すべきという考え。
ただこの問題は「実利上の問題」というよりウヨクとサヨクの維持の張り合いになっている。女性の権利が守られていないと被害者意識を募らせるリベラル・サヨク側は「夫の氏を強制されない制度改正」を求めており戸籍の一体性を前提にした制度には断固反対の姿勢。一方で自民党の勢いが落ちれば落ちるほど自民党の保守派の態度は頑なになってゆく。
時事通信も共同通信も通称を使いたいか使いたくないかについての内閣府の調査を報道している。しかし内容を見ても国民がどの程度何を求めているのかがよくわからない。内閣府は政治問題化することを避けたのだろう。「法務省が聞くから」という理由で夫婦別姓についての賛否は問わなかったそうだ。そもそも女性もそれほど通称を熱望しているわけではなさそうだ。
さらにサヨクに負けてはならないという意地がよく現れているのが核兵器禁止条約への議員派遣だ。護憲政党の公明党は議員団を派遣するが、自民党の森山幹事長は議員団を派遣しないと表明した。ところが石破総理には報告が行っておらず「私は何も聞いていない」と言っている。
この2つの問題に関して石破総理の姿勢は一貫している。個人的には意見はあるがそれを党内には押し付けない。とはいえ議論をまとめるつもりもない。石破総理が安倍派を中心とする党内保守派に遠慮して自分のカラーを出せないのかそもそも党内をまとめることに興味がないのかはよくわからない。
予算については更に迷走している。高額療養費の負担額が上がることになっているが予算案が閣議決定されたあとでがん患者の団体から懸念の声が上がっている。厚生労働大臣は改めて患者の団体と面談をして修正案にも含みをもたせた。なぜ事前に調整できなかったのだろうか?という気がする。ただし改正を中止しますとまでは言わなかった。
また国民民主党・維新の間でもバラバラに協議が進んでいる。時事通信は(安上がりな)維新に傾斜していると書いているが、私立高校の無償化には応じないものと考えられている。石破総理はあくまでも「結論に期待します」と他人事のような答弁をしているそうだ。
そもそも国民の関心が政治から離れる中で「国会議論を聞かずに報道だけを読んでいる」状態なので断定的なことは言わない法が良いのかもしれない。だが、浮かび上がるのは石破総理の他人事感だ。これまでも当内外野として他人事感の強かった人がそのまま総理大臣になってしまった印象。維新は社会保険の負担軽減の議論も混ぜ込みたい考え。また立憲民主党は休職の無償化を勝ち取りたい。
「夫婦別氏」について考えると、実際には「なんだか議論がややこしすぎてよくわからない」と考える人が多いのではないかと思う。自分から進んで夫婦別氏を推し進めたいという人は少数で「制度としてあるのならば利用しても良い」程度という人が多いのではないだろうか。しかしこれが政治に関心のある人たちの間では大問題になっている。どちらかと言えば感情論で折り合う兆しは見られない。少なくとも石破総理は国民的議論を推し進めるつもりもない。ただ「なんか議論が暗いなあ」程度の認識を持っており「もっと楽しい社会を目指せばいいのにね」と言っている。
国民は政治が何かを変えてくれるなどとは考えていない。若者と女性は「地方の古めかしい価値観は変わらないだろう」と地方を捨てて東京などの楽しいことがありそうな都市圏に向かい少子高齢化にも改善の兆しはない。
このような状況を見ると「もう政治家などいらないのではないか?」という気もする。
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