FRBが4会合ぶりに金利を据え置いた。パウエル議長はトランプ大統領の経済政策を慎重に見極めたいものと見られている。積極的に借金をして消費に回す傾向が強いアメリカ合衆国は日本以上に金利引下げの期待が高い。市民の期待を受けてトランプ大統領はFRBに金利引下げを迫るものと予想される。
今回もトランプ大統領はFRBを批判しているが金利については言及しなかった。
パウエル議長は会見の中で何度も「利下げを急ぐ必要はない」と強調していたという。トランプ大統領の政策はどれもインフレ誘導的なものなので様子を見たいということもあるのだろう。
トランプ大統領は「とにかく支出を止めてからゆっくりと整理したい」というアプローチで臨んだため連邦政府は大混乱に陥っていた。連邦裁判所も「トランプ政権が何をやりたいのか」の読解に戸惑っているという報道もでている。
とにかく何をしでかすかわからないトランプ政権でパウエル議長が慎重になる気持はよく分かる。だが、この慎重な姿勢が利下げを求めるトランプ大統領と衝突するのではないかという懸念がでている。
トランプ大統領はロスアンゼルスの山火事やワシントンDCの航空機事故でもオバマ・バイデン大統領の政策を批判していたが、金融当局も「インフレを放置した」として攻撃対象になっている。
Bloombergによると次のように発言しているそうだ。
この決定後にトランプ氏は投稿したもので、「ジェイ・パウエル氏と連邦準備制度はインフレで自分たちがつくり出した問題をストップさせるのに失敗した」としたものの、金利決定についてはコメントしなかった。
トランプ大統領、インフレ巡りパウエル議長非難も金利に言及せず(Boloomberg)
トランプ大統領はまた、米金融当局が「DEI(多様性・公平性・包摂性)やジェンダーイデオロギー、グリーンエネルギー、偽の気候変動」などに費やす時間が少なければ、インフレは問題になっていなかっただろうと主張した。
トランプ大統領、インフレ巡りパウエル議長非難も金利に言及せず(Boloomberg)
トランプ大統領の「批判」はパターンが決まっているうえに根拠のない発言も多い。大統領選挙では大目に見られてきたが記者たちの追求は激しさをマシている。
例えば、トランプ支持者はアメリカ政府がガザにコンドームを支援していると主張している。ここで「ガザ地区にはそんなにたくさんのコンドームはいらない」と冷静に指摘されると「実はコンドームで爆弾を作っている」と主張を転換しているそうだ。
FOXテレビの保守系トーク番組の司会者、ジェシー・ワッターズ氏は、米国から実際には送られていなかったコンドームを材料にハマスが「コンドーム爆弾」を製造し、風船爆弾としてイスラエルに送り込んでいると主張。トランプ氏も同様の主張を繰り返している。
トランプ氏主張の「ガザ用コンドームに5000万ドル」、支援専門家らが否定(時事通信)
トランプ大統領は批判する立場から批判される立場になったということを十分に理解していないようだ。連邦政府の内外支援を一斉に差し止めると連邦政府は大混乱に陥った。報道官は「アメリカ市民は動揺すべきではない」と説明していたがその直後に政府は差し止めの中止を決定している。
ただし未だに大規模な資金カットを仄めかしており混乱は更に続きそうだ。
混乱が続けば続くほどトランプ大統領は「他人のせい」「前の政権のせい」にしたがる傾向がある。何もない状態であればこうした騒ぎも多少は許容されるのだろうが航空機事故や他国からの攻撃など有事に遭遇するたびにアメリカ国民の忍耐力の限界が試されるような事態に発展してゆくのかもしれない。