もともと英語の勉強でもしてみようかと気軽な気持ちでABCニュースを聞き始めたのだが、最近は中身の問題で「一体何を言っているのか」と感じることが増えた。ロバート・F・ケネディJr氏に対するいとこのキャロライン・ケネディさんの発言もその一つだ。RFK Jr氏はプレデター(捕食者だ)と言っているがよく意味がわからない。
CNNで確認するとキャロライン・ケネディさんは要するに次のようなことを言っている。
“I watched his younger brothers and cousins follow him down the path of drug addiction. His basement, his garage, his dorm room were always the center of the action where drugs were available and he enjoyed showing off how he put baby chickens and mice in a blender to feed to his hawks. It was often a perverse scene of despair and violence,” she said.
Caroline Kennedy calls cousin RFK Jr. a ‘predator’ ahead of his confirmation hearings to be Trump’s health secretary(CNN)
- 弟やいとこはRFK Jr.氏に引きずり込まれて薬物に溺れた
- 地下室・ガレージ・寮の部屋など薬物がいつでも手に入りそうな場所につるんでいた
- そこでRFK Jr.氏はヒヨコやネズミをブレンダーにかけてタカにやって見せびらかしていた
- そこは絶望と暴力の交錯した現場だった
確かに気味の悪いグロテスクな光景なのだがかといってRFK Jr.氏と弟やいとこたちがそこで薬物にふけっていた現場を見たり告発したというわけではないようだ。
父親とおじが不幸ななくなり方をした一族の状況がかなり乱れていたこととキャロライン・ケネディ氏がいとこを生理的に嫌悪していることはわかる。だが、かといってそれだけで彼が公衆衛生の責任者になれないと断罪するのは少し無理があるようにも思える。
とはいえRFK Jr.氏が公衆衛生の責任者として適性があるのかもよくわからない。公聴会では「自分は子どもにもワクチンを接種させているのだから反ワクチンではない」と主張しているのだが過去には非科学的なデータを持ち出して反ワクチンを煽ってきたことで知られている。RFK Jr.氏に言わせれば「問題を強調するための手段」に過ぎないという。
反ワクチンから急旋回、ケネディ氏は承認公聴会でこれまでの主張修正(Bloomberg)
混乱した家庭事情を背景に幼少期に乱れた生活を送っていた人が「多少の嘘」も厭わないおとなになっていった事がよく分かる。日本で言えば立花孝志氏に似ている。話が一貫しないことで知られる人なのだが嘘を追求されても「きょとん」とした表情をしており反論にならない反論を述べる。結果的に追求した人が戸惑ってしまうのである。
立花孝志氏にファンが多いようにRFK Jr.氏にもファンが多い。世の中がめちゃくちゃになってしまえば良いと考える人は日本にも大勢いて「RFK Jr.が反ワクだというのはマスコミの悪意のよる策謀だ」と言うような議論をXで見かけた。マスク氏がXを所有するようになってからこの手の議論は制限されなくなっている。
しかしながらこの問題も「問題の一部」にしか過ぎなくなっている。ヘグセス氏は上院で承認されてしまい国防長官になった。過去のお騒がせ発言について責任を取ることもなくその場限りの説明を続けている。
さらに国内外の支援が一律停止された。海外の人道支援の中止は被援助国に波紋を広げている。
国内でも混乱が広がっている。BBCにこんな一節がある。
レヴィット報道官は、連邦資金の一時停止がほとんどのアメリカ国民に影響を与えないと述べたが、メディケイドに関する質問には準備ができておらず、影響を受けるかどうかはわからないと述べた。
トランプ米政権、助成や融資の一時停止を指示 裁判所が差し止めるも混乱広がる(BBC)
レヴィット氏は、凍結は「一時的」であり、「アメリカ国民に対する個別の支援には影響しない」と述べた。
しかし28日、メディケイドなどのサービスの資金を追跡する連邦オンラインシステムは停止していた。
つまり、行政当局は自分たちが止めたのが何なのかがよくわかっていないようだ。このため一部必要なシステムも停止されてしまっており報道官も全容が把握できていない。例えて言うならば運転したこともない車のハンドルを握り好き勝手にそこらにあるボタンを押しまくっているような状態である。
案の定「米連邦助成金や財政支援凍結、「一律」でない-批判噴出で政権が釈明」という記事が出た。批判が噴出しているそうだ。
見るみかねて裁判所から「大統領令の差し止め」の命令が出ている。2月3日までの一時的な措置で「この間にきちんと状況を把握してください」ということになっている。バイデン政権は平和的な政権移行を強調していたが理由がよくわかった。トランプ政権なら「バイデンが政権に関する情報を渡さなかったから状況が混乱している」と言いかねない。
トランプ政権は全く反省などしていない。200万人の連邦職員に「resign」とメールを送れば早期退職プランの対象になるとするお知らせが送られてきたそうだ。これはイーロン・マスク氏がXを買収したときに起きた騒ぎによく似ている。Xが止まっても命に関わるような問題にはならないのだが連邦政府はそうはいかない。だがトランプ大統領にしてみれば知ったこっちゃないという感じなのだろう。
日本ではこのあたりの混乱ぶりはほとんど報道されていないのだが、ABCニュースを見る限りアメリカ合衆国では連日のようにめちゃくちゃな行政の様子が報告されている。中には大喜びの人達もいるのだろうが「気が気でない」人も多いのだろうなあと感じる。