埼玉県八潮市で道路が陥没した。ワイドショーなどでは救出作業の様子が映し出されたていたが単に大きな穴が映し出されるばかりで進捗が見られない。後でまとめようと考えてみるのをやめてしまった。
結論から言うと74歳のドライバーはいまだに救出されていないようだ。当然下水道復旧もできないために埼玉県は下水を川に流す緊急措置を始めた。ニュースを見ると全国いたるところでこのような穴が出来そうに思えるのだが実際に影響がありそうな地域は7都府県13か所となるそうだ。
穴が空いた原因はよくわかっていない。
生ゴミが硫化水素を発生させて下水道管を腐食させるのではと言われているそうである。下水道管の影響は広域に及ぶ。埼玉県と千葉県の県境に位置する東部地域は東武線が走っていて東京のベッドタウンになっている。政令指定都市並みの120万人が影響を受けたそうだ。
対象の12市町は、さいたま市岩槻区、川口市の一部(おおむね国道122号より東側)、春日部市、草加市、越谷市、八潮市、蓮田市、幸手市、白岡市、伊奈町、宮代町、杉戸町。
道路陥没…トラック転落、地下の下水道管が壊れたか 120万人に影響、下水道使用を控えるよう呼びかけ「流し続けるとどこかから汚水があふれ出す」 事故前後に住民から「電話が使えない」との情報が多数あった(埼玉新聞)
普段から「高度経済成長期に作ったインフラは限界を迎えている」という話を聞く。今回もテレビのコメンテータたちは「インフラの整備に懸念がある」というようなことを盛んに口にする。下水道の更新費用を利用料金で賄える自治体は2割程度しかないそうだ。このため大きな穴を見ると「なにか大変なことが起きて」いて「これから先も大変なことが続く」ような気がする。
しかし政府が緊急点検を要請した地域は意外と限られているようだ。どこも高度経済成長期に人口が急増した都市圏とのその隣接地域だ。
国土交通省によると、事故現場の下水道管は、同県内12市町から汚水が集まり下水処理場につながる太い管路だった。緊急点検は、同様の管路を管理する埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、奈良の7都府県13カ所が対象となる。
下水管、全国に緊急点検要請 埼玉の道路陥没受け―橘官房副長官(時事通信)
テレビはいたずらに不安を煽るのではなく「影響のでそうな範囲」を調べるべきだろう。必要があれば政治的アジェンダとして取り上げる政党もでてくるかもしれない。ただ「大変だ大変だ」と騒ぐばかりでは議論は先に進まない。
コメント欄に医療インフラについて書いたところ「高齢化が進んでいるのだからシステムの改築などとんでもない」というクレームが付いた。これは政治記事を書いているとよく聞く指摘である。日本人は大胆な変化の提案を見るとまずやらない理由を探す。
ただし、日本は輸入で稼いだお金を原資にして生活インフラを徐々に立て直してきた。埼玉県東部も高度経済成長期には東京のベッドタウンとしての役割を果たしてきた。戦後復興期から高度経済成長期にかけてインフラ整備が人口の急増に間に合わなかった地域は多い。このため地元の市議会議員・県議会議員などがインフラ誘致合戦をしていたなどという話も聞く。現在は「利益誘導ばかりしている」と批判されることがあるが、もともとは「生活インフラの整備」などが主な仕事だった時代がある。
カリフォルニア州の山火事の事件について調べていると水資源インフラや消防予算の問題が政治化していることがわかる。民主党は整備費用捻出のために増税を主張し共和党が反対するという構図がある。トランプ大統領はここに介入し問題をすべて民主党のせいにしようとしている。つまりこうしたインフラの劣化の問題は何も日本だけの問題ではないようだ。
仮に日本が「何も変えない」ことを選択するのであればこうしたインフラの劣化や地方の過疎化を受け入れるか増税や水道料金の負担増に応じる必要がある。さらにいえば地方の過疎化よりも近郊地域の生活インフラのほうが問題としては厄介だろう。
つまり何も変えずに高度経済成長期のままというわけにはいかない。だから建設的な提案ができない野党は消え去るべきなのだ。ただしお金の使い方に疑念のある政党に負担増をお願いされても応える気にはならないだろう。だから政治とカネの問題も重要なのだ。