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「パレスチナ人をガザ地区から追い出せ」 トランプ大統領が周辺国に働きかけ

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「さすが不動産屋だ」と妙に感心した。トランプ大統領はガザ地区にリゾート地としての魅力を感じているようだ。この開発事業の邪魔になるのが周辺をウロウロしている小汚い人々。彼らを周辺国に追い出して魅力的なリゾート地を作りたいというのがアメリカ合衆国の新しい外交方針だ。

おそらくこの件は日本では報道されないのだろう。だがアラブ圏は「エスニッククレンジングだ」と反発している。

世界平和の擁護者だったアメリカ合衆国が一転して民族浄化推進国になった。さすが実験的な革命国家だと感心させられる。

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トランプ氏は候補者時代に「ガザ地区は魅力的なリゾート地になる」との構想を語っていた。さすが「自称不動産王」だけのことはある。CNNの日本語版はダイジェストだが英語版は娘婿のクシュナー氏の発言を引用している。2024年2月の発言だ。

The comments echoed remarks made by his son-in-law Jared Kushner in February 2024 when Kushner called the waterfront property in Gaza “very valuable” and suggested Israel should move Palestinians out of Gaza and “clean it up.”

Trump suggests his plan for Gaza Strip is to ‘clean out the whole thing’(CNN)

一方でガザの和平には全く興味がない。パレスチナ人をなにか汚いものと考えているのだろう。「彼らの戦争」と呼んでいる。

しかし、イスラエルとハマスが停戦を維持し、合意を進展させていけると思うかと記者団から問われたのに対し、「われわれの戦争ではない。彼らの戦争だ。だが、私には自信がない」と答えた。

ガザ停戦合意の維持「自信ない」 トランプ氏(時事通信)

日曜日の政治番組を見る限り、日本人の関心は「トランプ大統領にいかに取り入って国益を守るか」という点に終始している。おそらくトランプ大統領の問題が語られることはないだろう。

だが、CNNはアメリカ合衆国が長年維持してきた「二国政府体制推進」を放棄したものと解釈している。これは国際社会(特にヨーロッパ)の考え方とは相容れない。

ヨーロッパの報道は限定的ながらも日本に入ってくる。しかしアラブの人たちが何を考えているかに至っては全く語られないだろう。中国はグローバルサウスへの関心を高めており中国人のほうがこの辺の事情をよく知っているようだ。日本は中国の報道が制限されているとみなしたがるが実は日本にもこの手の「制限」はある。日米同盟への依存がありどうしてもアメリカ側の見方に固執してしまうのである。

アルジャジーラは今回の提案を「民族浄化」と言っている。

不動産開発事業に夢中になりこれまでアメリカが培ってきた「平和の担い手」というヘリテージに経済価値を感じないトランプ大統領らしい新しい外交方針といえる。日本の取れる選択肢は限られている。自分たちに火の粉が飛んでこないことを祈りつつトランプ大統領の不都合な側面を見て見ぬふりをする鈍感力を発揮するのが日本が取れる選択だ。

ただしバイデン政権の4年間は「バイデン大統領の外交方針は建前に過ぎない」ことを証明する必要があった。トランプ氏は欲望を剥き出しにしておりこの面倒な証明が必要なくなっている。これじたいはあるいは「いいこと」なのかもしれない。

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