中居正広氏が芸能界を引退したとBBCとAFPがそれぞれ伝えている。BBCはジャニーズ問題も合わせて紹介しており「日本の芸能界には性加害を許容する文化があった」と受け取られても仕方がない紹介のされ方になっている。
フジテレビのガバナンスはほぼ崩壊したと言ってよいだろう。社員向けの説明会は紛糾し4時間あまりに及んだという。また番組単位で報道するところもあったそうだ。「局」単位で意思決定ができなくなっているのだ。
BBCはこの問題をジャニーズ問題と接続させて報道している。日本では違和感がある伝えられ方だが、局内の限られた人数に「中居問題」が共有されていたとき、同時にジャニーズ報告の総括が行われていた。つまり「今中居問題が露見するとジャニーズと接続して語られかねない」という気持ちがあった可能性は否定できない。
この問題に関して「和解金の支払い損だ」というコメントが見られる。被害女性さえ黙っていれば丸く収まったのにという感覚を抱く人が多いのだろう。確かに和解の条件の中に守秘義務違反の条項が入っている可能性はある。しかし、これは当事者間の問題である。そもそも「双方に守秘義務があるのになぜ和解金額だけが独り歩きして語られているのだろう」ということはあまり疑問視されていないようだ。
当初の中居さんのコメントに「芸能活動が続けられることになりました」と書かれていた。つまり中居さんサイドが事業を存続させるために被害女性に和解を飲ませた可能性が高い。だがジャニーズ問題と接続して語られる危険性を考え合わせるとフジテレビこそがこの問題の早期沈静化を主導していた可能性も高い。中居さん個人よりフジテレビのほうが失うものが大きいからだ。
今後独立調査委員会でこの辺りが調査される可能性はある。しかし捜査権限はない委員会がどの程度原因を究明できるかはよくわからない。
中居正広さんは当初から「フジテレビは関係がない」と説明していた。芸能界引退の声明でも「全責任は私個人にあります」と強調している。しかしながら週刊誌やSNSの関心は中居さんではなくフジテレビや放送業界全体の問題に移っており中居さん一人の問題と考える人はそれほど多くないのではないか。
当ブログのアクセス数を見る限り「CMの一時撤退が決まり経営に深刻な影響が出た」時点で気が済んだという人が多いようだ。自民党の政治とカネの問題などで「組織の隠蔽体質」に反感が集まっていることがわかると同時に真相解明ではなくある種の懲罰感情が満たされた時点で気が済んでしまった人かったのではないかと思う。
ただし男性の間には「たかだか性加害ごときで社会的声明が脅かされること」に対するわだかまりがあるようだ。同時に個人の資格で言及することは避けたいと考えて「私はこう思う」という言及を避ける人が多い。私は支持者というわけではないが、この問題に特別興味があるわけではないが、としたうえで「私」という主語を極力避けたうえで違和感を訴えるコメントが多かった。
ニュース記事を読んでいるだけではよくわからないがコミュニティの運営を通じて「個人で気持ちを伝えることで懲罰されかねない」という日本人の怯えはかなり根強いと感じる。このためわだかまった感情が「世間一般」の声となりSNSでのバッシングが過激化するのだろう。個人と集団の振る舞いの乖離がSNSによって増幅されている印象だ。
フジテレビのガバナンスは崩壊が進んでいるようだ。
社員向けの説明会は紛糾し実力者である日枝久さんの退陣を求める声が出たという。現在は相談役にすぎないことを考えるとかなり異様な状況と言える。
質疑応答は4時間半に及んだということだが組織の命令・報告系統を通じて情報共有すればいいだけの話だ。当時の専務だった多田亮氏も「自分は最低限のことしか知らなかった」「すぐにレポートを社長に上げたので細かいことは知らない」と責任回避の会見を行っている。実力者の存在が問題というよりは実力者のもとで組織運営に責任を取らない幹部たちが大勢いた事が問題なのかもしれない。つまり社員たちは直属の上司さえ信頼できなくなっているということだ。
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