1月24日から通常国会が始まる。今回のテーマは2025年度予算の作成だ。年度末までに成立すれば「自民党の勝ち」だが、与党だけでは予算が通らない。このため立憲民主党などの野党に「何をお配りするか」が争点となる。
- 立憲民主党は自民党に給食費無償化を要望
- 国民民主党は103万円の壁引き上げ(所得税減税)などを引き続き働きかける
- 維新は教育無償化を高校にまで広げたい考えだが、自民党は「私立は勘弁してください」と抵抗している
ようするに「負担を減らしたうえで何を無償化するか」というわかりやすい政策が前面に出ている。
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「無料」に反対する人はいないのだからこれは結構な流れだと思うのだが各論はかなりの混乱が予想される。これを2月までに(参議院の議論に一ヶ月かかるため2月が締め切りになる)すべて議論するのは無理があるのではないか。
高校無償化の目的は家庭事情による教育格差をなくすことだ。しかし裕福な家庭は浮いた学費を塾代に回す傾向があるとされる。このため教育環境が充実した私立高校に志望者が殺到し結果的に塾に通っていた人が有利になる可能性がある。
そもそも都立などの公立高校は「教育格差をうまないため」に公費で運営されてきたと考えると公立高校の存在意義がなくなってしまう。また私立学校の中にも設備投資で差をつけたいという学校があるだろう。市場原理には選択肢の多様性という効果もある。
有権者にアピールするために「無料である」ことを掲げているためにその他の議論がすべて置き去りになっている印象だ。
こうした「損得」を起点にした政策議論は別の問題にも影響を与える。
夫婦別姓問題に関して自民党の中で「党議拘束を外すべきだ」という議論があるそうだ。しかし森山幹事長はこれに反対している。党議拘束がない政党という概念を受け入れられないのだろう。
結果的に自民党は意思決定ができなくなり全体の議論が進まなくなってしまう。夫婦別姓問題は「世界のスタンダードに日本も合わせるべき」という議論と、そもそも明治以降の伝統に過ぎないものを「日本精神の根幹である」と主張する人たちの不毛な対立に陥っている。自民党は要するに「このどちらを取るか」という選択を迫られることになる。
日本の政治議論は「何を解決するか」ではなく「誰にとってトクなのか」を議論する傾向にありまとまるものもまとまらなくなってしまう。
政治改革議論も国民の政治参加を促しつつ理解・納得されるためにはどうすればいいかという目的を議論すればいいはずなのだが自民党ではそうならない。
自民党は企業献金は政治活動には欠かせないものであると主張している。であれば企業が自民党に献金することは何らやましいことはないはずだ。しかし企業は自民党への献金を隠したいと考えており献金企業の公開には一種の「懲罰効果」がある。自民党はこれを避けるために1000万円以上の企業だけを公開するという独自案を出しているという。
森山幹事長は「都議会の政治とカネの問題は都議会だけの特殊な問題である」と位置づけたかったようだ。このため「調査をしたところ問題のある道府県連はなかった」と報告した。しかしながら自民党の中からも「調査がおろそかになれば自分たちも疑われる」と懸念する人たちがいる。野党も当然このような調査に納得することはなく国会で話し合われることとなりそうだ。
共同通信は国会の慣行が都議会にも広がっていたと報道している。つまり言外に他の道府県連でも同じことがあるかもしれないですねということになるだろう。
フジテレビ問題でも視聴者が怒っているのは性加害そのものではなく組織の隠蔽体質だった。おそらく夏の選挙は自民党にとってかなり苦しいものになるのではないかと感じる。
国会議員への依存心は地方議会などに蔓延していると考えられる。本来は意識改革なども議論されるべきだが石破総理ら幹部にその意欲はない。また監視機関も独立させたくない。結果的に議員たちを監視するという仕事はすべて国会内に置かれる可能性が高い監査機関に依存することになる。公明党と国民民主党は予想される事務作業の膨大さをどう捌くかに頭を悩ませていると報道されている。