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尹錫悦大統領が逮捕

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尹錫悦大統領が逮捕された。日本の常識では逮捕=有罪だが韓国ではそうならない。ポイントになるのが高捜庁・公捜処・CIOと呼ばれる組織だ。日本で東京地検特捜部が踏み込んだというのとは意味合いが全く異なる。

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韓国で尹錫悦大統領が逮捕された。韓国で現職の大統領が逮捕されるのは初めてなどと伝わる。日本の常識では東京地検特捜部が踏み込んだと伝わった時点でほぼ有罪扱いされるが韓国はそうならない。

むしろ「これから始まった」と見るべきなのかもしれないという気もする。

背景にあるのが韓国の複雑な事情である。まず二元代表制のために議会・内閣が管理する「政府」とは別に大統領を警護する部隊があるそうだ。今回のニュースでは警護処と伝わっている。

韓国は軍政時代が長かった。これが独裁批判を生み民主化要求が起きる。軍は「自分たちは国民軍である」と強調するようになっていて、大統領とは一定の距離をおいている。戒厳令当時軍隊が国民に発砲することはなかったし2回目の創作でも積極的には大統領を守らなかったと言われている。その軍隊を無理矢理に統制しようとした金龍顕前国防大臣(彼も軍人出身だった)はすでに拘束されていて「下手人」の司令官は「兵士は悪くありません」と国民に涙ながらに謝罪している。

民主化の反動で力を持ったのが検察だった。朴槿恵大統領の弾劾で大きな力を発揮した。しかし「共に民主党」が尹錫悦氏を重用すると尹錫悦氏は「共に民主党政権」を攻撃するようになる。文在寅政権は検察の権限を剥奪し警察に権限を移した。

尹錫悦氏の暴走の結果作られたのが「公捜処」だったとされる。目的は自分たちがコントロールできる「検察のような存在」を作ることだったようだ。

文政権時代に民主党は「検察改革」の全てであるかのよう公捜処を押し付けた。文政権における違法を捜査していた検察に圧力をかける必要もあった。新たに国家捜査機関を作るという大事にもかかわらず、慎重な検討も世論の集約もなかった。法曹界の反対は全て無視した。国会で群小政党の賛成を引き出そうと、ついには選挙法改正を餌に使った。与野党間のゲームのルールかつ民主主義の骨幹である選挙法を、国民の力を排除したまま強引に変更するという暴挙を犯した。国の核心システムである選挙制度と捜査制度をトレードするかのように取引したのだ。その野合で出てきた連動型選挙法は、国会議員も内容を理解し難いパッチワークとなり、総選挙では衛星比例政党まで作り出された。

文政権時代に無理筋で高位公職者犯罪捜査処を作ったのに他人事のように「廃止」を主張する人々【1月8日付社説】(朝鮮日報)

朝鮮日報は保守系なのでこの言い分を100%信じてよいかはよくわからないが自分たちに都合の良い組織づくりに焦る一方で「どのような権限をもたせるのか」については十分な検討が行われなかったようである。今回も公民権剥奪秒読みの李在明代表を守るために弾劾裁判を焦っていると伝わっていて野党の支持率は下がっている。

文在寅政権は汚職などの事件を想定していたようで、公捜処は内乱のような予想外の事態には対処できなかった。すると野党は一転して「役に立たない猫は殺してしまえ」と言わんばかりに公捜処の廃止を主張するようになったというのが朝鮮日報の主張だ。

日本はこの組織を「高捜庁」と表現するが、韓国メディアの日本語版では「公捜処」と表記される。英語メディアはCIOという言い方を使っている。韓国語では고위 공직자 범죄 수사처という。日本語では高も公も「コウ」だが韓国語では고(高い)と공(公)を使い分ける。また処は「처(チョ)」で庁は「청(チョン)」になる。

日本の検察(特に東京地検特捜部)はGHQが日本政府を監視するために利用してきたとされる。こうした出自のために世論には極めて敏感で「立件できないものは事件化・起訴しない」ことが多い。しかし、軍政からスタートした韓国の共和制は「権力をどう監視するか」で常に揺れ続けている。

尹錫悦大統領は「そもそも自分がやったことは内乱ではない」と主張し続けている上に公捜処には内乱を捜査する権限はないと言っている。捜査当局は48時間以内に逮捕状を請求する必要があるそうだが大統領は黙秘を貫いているという。

さらに国民情緒法の存在を指摘する人もいる。日本人が韓国政治を揶揄するためによく使われる用語だが、ここでは韓国人の教授が説明のために用いている。良くも悪くも国民の「応援」次第で結果が変わるという社会なのだろう。

龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
もちろんです。過去において朴槿恵前大統領のときもそうですし、韓国は法律の上に国民感情、つまり「国民情緒法」というのがあって、憲法裁判所も刑事裁判所もほとんど大事件は世論動向がとても大きな影響を及ぼしてきているんですよね。これからもそのようなことが見られるというふうに思います。

韓国史上初 現職大統領が拘束“内乱を首謀した疑い”、尹氏「流血防ぐため応じた」【Nスタ解説】(TBS)

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