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ロスアンゼルスの火事の議論が泥沼化

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ロスアンゼルス市の火事はまだ鎮火していない。現在の死者は11人ということになっているが死者数さえよくわかっていないそうだ。災害に慣れた日本の常識から見れば「まずは状況を沈静化させてから次の議論を」ということになりそうだが、早くも水資源の問題などが泥沼化しているという。

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現地では空き巣が横行しており夜間外出令(curfew)が出されている。焼け跡から思い出の品物を探したい人たちも「自分たちが住民だ」と証明しなければならないとABCニュースが伝えていた。

アメリカ各地で異常気象が起きている。

東部・南部ではハリケーンや洪水などの被害が多発しており、西部では極端な乾燥から山火事が発生する。市場主義が徹底したアメリカ合衆国では保険会社の撤退なども起きていて無保険だった家が多くあるという。それでも保険損失は保険会社の予想を上回っているという

もともと裕福な家が多い上に街中が焼け落ちてしまった地域もある。山奥で起きる森林火災と違い今回の火災は都市火災という側面がある。ごみごみしたダウンタウンと自然豊かな高級住宅街が隣接しているのがロスアンゼルス特徴だ。

アメリカ合衆国では1980年以降に23の山火事が起きているそうだがその被害額合計は1480億ドルだったという。しかしながら今回の被害予測は1350-1500億ドルという予測になっている。単なる山奥の火災ではなく集積度合いの高い都市近郊の火災だったために甚大な経済被害が出た。Bloombergのこの記事では住宅用火災保険の解約や更新拒否をカリフォルニア州当局が禁止したと書かれている。

消防局の責任者は「市の幹部が予算を削ったために消化活動が出来なかった」と市当局を糾弾した。市長はこれに反論し「財政が厳しいのだから仕方ない」としたうえで「火事への影響はなかった」としている。

Xのフォロワーからも指摘があったが「水不足」については様々な意見が出ているそうだ。この地域はもともと水が少ない地域でシェラネバダ山脈から水を引いている。カリフォルニア州側をカリフォルニア・アクア・ダクトと呼び、その向こう側をコロラド・リバー・アクアダクトと呼ぶそうだ。

裕福な地域はロスアンゼルス市から独立する傾向にあるが「水利問題」で揉めることも多いと聞く。今回火事が広がったパシフィック・パリセーズはロスアンゼルス市の端にある高台のため水の勢いが届かなかったとされている。ただし独立したマリブでも大規模な火災が起きており「水があれば被害が防げたのか」はよくわからない。

The Los Angeles Department of Water and Power was pumping from aqueducts and groundwater into the system, but demand was so high that it wasn’t enough to refill three 1-million gallon tanks in hilly Pacific Palisades that help pressurize hydrants for the neighborhood. Many went dry as at least 1,000 buildings were engulfed in flames.

Fire hydrants ran dry in Southern California just when they were needed most(AP)

この問題を利用して支持を拡大したい人達も多い。災害の政治利用が嫌われる日本との大きな違いだ。日本人は昔から多くの大災害に見舞われているため天災と政治的論争を引き離す傾向にある。日本人から見ると、今のアメリカの状況は極めて異常に見える。

諸悪の根源を「意識高い系左翼」のせいにしたい人たちが部外者として盛んに攻撃している。先日の記事に書いたようにトランプ次期大統領も外からこの問題に参戦し連日煽り立てている。

そもそも水が少ないところに人工的な都市を作り水を外から引いている。ロスアンゼルス市だけでも400万人の人口を抱えるそうだが内部には複数の独立市があり水の獲得競争がある。裕福な地域は独立してしまうためロスアンゼルス市そのものは財政的に苦しい状況にある。このため消防予算は限られているうえにインフラの更新にも問題があったようだ。

さらに気象変動が大きく極端な乾燥と多雨を繰り返している。今回「ロスアンゼルス市は水が少ない」という論が展開されている。しかしシェラネバダ山脈には水が豊富にあるうえに一昨年は洪水が起きている。人為的な気候変動のために極端な多雨と極端な感想が交互にやってくる気候になっているようだ。都市水道と排水インフラにも問題があるうえに気候変動がそれに追い打ちをかける。

インフラの老朽化・自治体の予算・気象変動・市場の失敗による保険会社の撤退・何でも政治問題化したがる一部の政治家(次期大統領含む)など様々な問題が一気に降り注いだのが今回のロスアンゼルス市の火災だといえる。

ただ、人々の愚かさには限りがないようで、陰謀論を振りかざす人も出てきているそうだ。前回ご紹介したのは「トランプ派」の陰謀論だったがハリウッド・レポーターは左派の中にも陰謀論に耽溺する人がいると指摘している。

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