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アメリカ合衆国を「アメリカ・メヒカーナ」に シェインバウム大統領が逆提案

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トランプ次期大統領は「不動産売買」のノリで領土拡大の野心を隠さなくなった。特にグリーンランド購入に関しては「本気だ」とされており同盟国のデンマークを慌てさせている。

正常性バイアスが強い日本では過小評価されているが、アメリカ合衆国の民意は「力による現状変更は許さない」とするドクトリンを放棄しつつある。

そんななか、メキシコのシェインバウム大統領が「売られた喧嘩」を買った。歴史的経緯を持ち出しアメリカ合衆国こそ「アメリカ・メヒカーナ」と呼ぶべきだと言うのだ。

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歴史的経緯を見ればこれは突飛な提案ではない。アメリカ合衆国の西部はもともとメキシコと一体の領土だった。テキサスもメキシコから独立しアメリカ合衆国に編入された経緯がある。さらに付け加えるならばカリフォルニア州などはヒスパニック化が進行しつつある。

もちろんシェインバウム大統領がアメリカ合衆国やアングロアメリカを「アメリカ・メヒカーナ」などと呼ぶことはないだろう。あくまでもメキシコ湾をアメリカ湾にしたいとするトランプ次期大統領を嘲笑しているだけである。

アメリカ合衆国は第二次世界大戦で戦争被害から守られた。このため新しい世界秩序の構築に大きな影響力を持った。アメリカ合衆国が自由主義陣営と自国の優位を保つために作ったドクトリンが「力による現状変更は認めない」というものだった。つまりアメリカ合衆国は自国の優位性を担保してきた体制を破壊するものを許さないと言ってきたのだ。

現在のアメリカ合衆国は自らの手でこのドクトリンを破壊しつつある。REUTERSは、一連の発言はトランプ次期大統領の功名心に起因しているのだろうと説明している。

トランプ次期大統領は不動産事業を拡大するようなノリで他国から領土を奪おうとしている。街の不動産屋が「街の顔役」の力を借りて圧力をかけることはあるのだろうが、トランプ氏は軍隊の動員を仄めかしているのだ。

同筋は「真の功績は米国の領土拡大だ。米国は過去70年間、全く領土を拡大していない。(トランプ氏は)その点についてよく話している」と述べた。

トランプ氏のグリーンランド購入案、勢力圏拡大と歴史的功績狙う(REUTERS)

実際にアメリカ合衆国が領土獲得や勢力圏拡大に向けて動くかはさておき国連安保理が機能不全を抱えるなかで「不完全ながらかろうじて紛争を抑止してきたアメリカ合衆国」という存在がこの世から(少なくとも4年間は)消えてしまうという状況を我々は今目撃している。

今後の日本政治のテーマはこの「見たくない現実」からどれだけ目を背け続けるかということになる。不都合なものから目をそらすのが得意な日本人に対する壮大なストレステストが始まった。

ただしこれは今後起きるであろう混乱のほんの序章に過ぎないかもしれない。現在、アメリカの国債金利が上昇を始めている。トランプ次期大統領と議会の支援勢力は国家財政と予算で矛盾する要求を議長に示している。これは結果的に議会が放漫財政を容認する方向にあることを意味しており金利上昇圧力になっている。

現在の株価は「インフレ圧力が弱まれば経済は更に活性化するだろう」という見込みのもとに上昇しているのだから、これは株価の下げ圧力になるかもしれない。なお本日はカーター元大統領の国葬のため株式市場はお休みになる。影響が出るとしても明日以降ということになりそうだ。

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