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バイデン大統領が最後の嫌がらせ 海洋採掘を制限

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日本製鉄のUSスチール買収措置を通じてバイデン大統領の性格の悪さと一部支持者たちとの間の不適切な関係が浮き彫りになった。日本人が今感じている戸惑いはアメリカ国民がバイデン政権下で感じてきた戸惑いに似ていると感じる。

そんなバイデン大統領がアメリカ沖合の海洋採掘を広く制限する動きに出た。実質的な意味合いはなく「象徴的」とされている。象徴的というのはつまり「嫌がらせ」という意味である。最後まで性格の悪い大統領だった。

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バイデン大統領がアメリカの沖合でのエネルギー開発を幅広く制限した。恒久的な措置とされている。ただし今回制限された地域にエネルギー資源があるとは確認されていない。またアメリカの事業者は陸上の開発を優先しているため実質的な意味は持たない。このため「象徴的な」と表現されている。

ただ、現在開発が進められている地域には影響しないほか、採掘業者が重要視していない海域を主な対象としており、象徴的な意味合いが強いとみられる。

米大統領、周辺海域で石油・ガス掘削禁止 トランプ政権移行前に(REUTERS)

ただし、議会が新しい法律を作ればバイデン大統領の決定は覆すことができる。

大統領に今月就任するトランプ氏は、バイデン氏の環境保護と気候変動対策を撤回すると公約している。ただ、判例によると、大統領による掘削禁止を認めるこの法律は、以前の禁止措置を覆す法的権限を与えておらず、禁止措置の撤回には連邦議会による手続きが必要となる可能性が高い。

米大統領、周辺海域で石油・ガス掘削禁止 トランプ政権移行前に(REUTERS)

バイデン大統領の性格の悪さがよく現れている。バイデン大統領に限らずアメリカの大統領は大口の支援者たちに有利な政策決定を行うことがよくある。民主主義体制では合法的な行為だ。また大統領には広い免責特権が認められている。

こうした「合法的ではあるが偏った」政策決定の臭みを消すために「地球の環境は守られなければならない」とか「民主主義は大切だ」などという大義(キレイゴト)を振りかざすのが民主党系の大統領の特徴だ。

オバマ大統領はこの役割を爽やかにこなしたのだが、バイデン大統領の性格には固有の底意地の悪さがある。

この底意地の悪さは2つの面に作用する。

第一に挑発された側は頑なになる。ウクライナに対する度重なるアメリカの干渉はプーチン大統領を刺激した。また、今回の決定においてトランプ次期大統領は「即時撤回」を表明している。挑発された支援者たちも倫理を気にしなくなり、最終的に「やりたい放題」にやった人がトクをするという困った状況が生まれる。

トランプ次期米大統領は7日開いた記者会見で、米国の沖合などにおける石油・ガス開発禁止は「容認できない」とし、大統領就任の初日に撤回すると表明した。

トランプ氏、米沖合の石油・ガス開発禁止撤回へ 大統領就任初日にも(REUTERS)

第二に「環境問題」や「民主主義」などの大義が持っていた崇高な理想は失われる。バイデン政権は高いインフレに苦しめられた政権だった。このためサウジアラビアなどに接近し(この際に過去の人権問題で皇太子を非難しないことにしたが皇太子からは色よい返事をもらえなかった)国内の石油生産も過去最高を記録しているそうだ。わかりやすく「言っていることとやっていることが違う」のがバイデン大統領の特徴だった。イスラエル・ガザ地区問題ではこれが若者の民主党離れにつながっている。

一方、CNNの取材に答えたエネルギー業界のアナリストらは、採掘禁止の措置が米国の石油生産に際立った影響を及ぼすことはないとの見方を示した。バイデン政権下で米国の石油生産は過去最高を記録している。

バイデン氏、米沿岸の広範な海洋採掘を恒久的に禁止(CNN)

民主党は中間層・低所得者層に向けた施策も行っており必ずしも彼らにとって悪い政権ではなかっただろう。しかし、わかりやすい偽善も多く結果的に多くの支持者が離反した。結果的に誕生したのがトランプ政権だ。

今回の日本製鉄の買収阻止に関しては日本の企業から戸惑いの声が上がっている。しかし中には「合弁企業を使っているから問題がない」と言っている企業もある。トヨタ自動車は「ご祝儀」も支払済だ。12月の就任式に多額の寄付をしている。要するに中国とあまり変わらない国になりつつある。

日本人はアメリカ合衆国に「保護」という実利を期待しており民主党政権に代表される人権擁護にはあまり興味を持たなかった。このため合衆国の政治の変節にもそれほどショックを感じないかもしれない。

石破総理は就任式前のトランプ次期大統領との面会は求めない考え。代わりに口約束で投資額倍増を約束した(が実質的には果たさないと考えられている)孫正義氏と会合を持ったそうだ。こうした「へつらい」は政治家よりは商人のほうが上手だ。下手に政治家が介入すると形式的には主権国家同士の対等な関係を演出しなければならなないと考えると、しばらくは政治は前に出ないほうがいいのかもしれない。

アメリカ合衆国は大統領の意向が強い国(独裁とまではいわないが)になりつつあり、これは政権交代のたびに様々な軋轢をもたらすことになるだろう。要するに韓国型の政治に近づきつつあると言えるのかもしれない。

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