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時代錯誤の「令和の列島改造」論と石破政権の延命策

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コロナ禍や地震の影響で2年間行われていなかったという総理大臣の伊勢神宮参拝が行われ、その後で石破総理が新年の抱負を述べた。政策の柱は「アナクロニズム(時代錯誤感)漂う」令和の列島改造論だった。また自分たちの政治的野望のために若手官僚を地方に飛ばす悪夢の「島流し」改革も提案している。

一方、政権延命策はかなり練られたものだった。野党を各種協議の枠組みに誘い込み分断を狙う戦略はある程度効果を発揮するのではないか。

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そもそもメディアのヘッドラインは日本製鉄問題がトップに来ている。日本は戦後のアメリカの支配を正当化するために「どうせアメリカには勝てっこないのだから、懐に入り込んでうまく話をまとめてくれる」総理大臣を期待している。日本製鉄の買収拒否問題は「日本が拒否された問題」と捉えられておりマスコミと国民の間に動揺と不安が広がっているのだろう。

列島改造についてREUTERSは次のようにまとめる。石破茂氏はもともと田中派の事務局で働いていたが田中派から出馬することが出来なかったという経緯を持つ。

首相は、かつて田中角栄・元首相が唱えた「日本列島改造」は、道路や鉄道、通信網などハード面のインフラ整備を起点として人の流れを生み出し、国土の均衡ある発展の実現を目指した、と指摘。一方、石破政権が取り組む「地方創生2.0」は、ハード面のインフラを基盤にしつつ、ソフト面の魅力が人の流れを生み出すと説明。それぞれの地域の具体的な取り組みを全国に発信し、「いわば令和の列島改造として大胆な変革を起こしていく」と強調した。

産業界の懸念払拭へ米政府に対応を強く求める=USスチール買収禁止で石破首相(REUTERS)

日本は目標を抽出して戦略に落とし込むことを戦後一貫して避け続けてきた。戦後の立ち上がり期には戦略立案の自由度がなかったためだ。このため、日本の政治を一貫して引っ張ってきた自民党は政策立案能力がない。

このため、岸田総理は池田勇人総理大臣を模した所得倍増を訴え石破総理は列島改造を訴えることになったのだ。

田中角栄の列島改造は、高度経済成長を背景に首都圏と太平洋ベルト地帯に限られていたインフラ整備を地方にも広げるという戦略だった。つまり高度経済成長という財源がなければ実現しない。

仮に石破総理が「財政再建を諦めて国が積極投資をします」と表明していれば、あるいは評価することもできたかもしれない。さらに言えば企業の海外投資は好調だ。こうした「蓄財企業」からお金の流れを引き出せば積極投資は絵に描いた餅ではなくなる。しかし石破総理は企業献金存続も訴えており財務省と戦うつもりもない。

国民民主党の玉木代表は地方経験が長く「落ちこぼれ(記事の表現では劣等官僚)」とみなされることがある。

玉木氏は1993年に旧大蔵省に入省し、政治家に転身するまで12年間在籍したが、外務省や内閣府など他省庁への出向が多く、主計局や主税局のエリートコースを歩んだ有力OBからすれば「落第生」そのものに映る。

財務省が「落第生の玉木ごときに」と歯ぎしり…!次々と仕掛ける「年収の壁」「ガソリン減税」潰しの全内幕(現代ビジネス)

官僚組織から若手を分断し地方に送るという計画は「島流し」の不満を抱える離職官僚を増やすだろう。

地方創生に関し、首相は「政府機関の地方移転を推進する」との考えを示した。新たな人の流れを生み出すため、都市と地方の「2拠点活動」が必要だと主張。第一歩として「国の若手職員による2拠点活動を支援する制度を新設する」と打ち出した。

石破首相、米政府に説明要求 USスチール買収阻止で―地方創生「令和の列島改造」・年頭会見(時事通信)

自民党は政策を作ることができないということが明らかになりつつある。これは中間層の没落によりアメリカ合衆国の政治が混乱し同盟主義が自国第一主義に切り替わりつつある事の余波と言って良い。今回の日本製鉄を巡るマスコミの動揺も「アメリカが日本を見放そうとしている」と映っているのではないかと思う。

当ブログとQuoraのスペースを見ている人は「アメリカにはアメリカの事情がある」と知っている。特にQuoraではアメリカ在住の人達の声もライブで入ってくる。だが日本のメディアしか見えていない人たちにはこうした事情はわからないだろう。

安倍総理は「アメリカ合衆国とうまくやっている」という演出で「政策が作れない」という事実を隠蔽してきたが石破総理はその伝統を利用することは出来ない。

自民党は党内・党外の権力闘争には長けた政党だ。政策のおおもとをアメリカが決めていたため権力闘争だけに集中していればよかったという歴史的経緯がある。

そんな石破総理が目をつけたのが「野党の混乱」だ。野党の分断は民主党系の権力塗装がベースになっている。現在の主役は野田佳彦・枝野幸男・江田憲司・前原誠司・玉木雄一郎など民主党出身者たちが主役になっていて大阪を地盤とする維新が加わるという構造になっている。石破総理はこの野党間「競争」に介入し分断統治をする余地が残されている。

まず「大連立」を匂わせてそれを野党に否定させた後に「それでは個別のイシューで政策協定をいたしましょう」と持ちかけた。最初のゲームは玉木雄一郎氏が仕掛けた持続性のない「財源」ゲームだったが、これをさけてダラダラと話ができるイシューに切り替えたい。玉木雄一郎氏が不倫問題で「3マス休み」状態になっており今がゲームチェンジの好機だろう。

石破氏が持ち出したテーマが2つある。選挙制度改革年金制度改革である。選挙制度について当事者たちが話し合っても我田引水の議論に終止することは火を見るより明らかだ。また年金制度改革も現役世代の負担を増やすか支出を削減する議論にしかならない。

おそらく両方とも結論は出ず下手をすれば国民を現役世代と高齢者世代に分断するものになるだろうが「とにかく話し合っている間には離反ができない」ことになり、予算案への協力が得やすくなる。

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