新年早々、アメリカ合衆国のルイジアナ州ニュー・オーリンズとネバダ州ラスベガスでそれぞれ車を使った事件が起きた。前者の容疑者は元軍人であり後者の容疑者は現役のグリーンベレーだったと言われている。同じレンタル会社からの貸出だったこともあり両者はつながっているのではないかと言われている。
だが、なぜか当局とホワイトハウスはそれぞれ別個の案件として扱いたがっている。警察当局による中立な事件捜査がアメリカではそもそも成り立たなくなっていることがわかる。新年の平穏さや事件捜査の中立性など「日本の当たり前」はアメリカでは贅沢品なのだ。
ニュー・オーリンズの事件
ニュー・オーリンズの事件の容疑者はシャムスード・ディン・ジャバールと発表されている。CNNのタイムラインによるとかなり背景情報が集まってきたようだ。当局の発表の根拠は容疑者が残したとされるビデオテープだがCNNは独自で確認できていないとしている。
すでに射殺されているシャムスード・ディン・ジャバール容疑者はアフガニスタンに従軍歴がある。担当は戦闘部門ではなく人事と情報だった。退役後に不動産業を始めるのだがうまく行かなかったようだ。家のローン返済が滞り妻と離婚していた。そんな彼が頼ったのがイスラム教の信仰だった。次第にISISに傾倒するようになり「100%影響を受けて」犯行に及んだとされる。
当初は組織的な犯行の可能性があるとされていたが、なぜか当局はこれを否定した。多数の爆発物を残しており「とても一人では扱いきれないだろう」というのが組織的犯行説の理由だったようだ。
トランプホテルの事件
ラスベガスのトランプホテルの事件は死者1名と軽傷者7名を出した。死者は容疑者の可能性があるため「実質的には犠牲者のいない」事件となっている。こちらの実行犯は現役のグリーンベレーだったというのが最新情報。当初名前が高価淹れていなかったが後にマシュー・アレン・リベルスバーガーと特定された。容疑者は現在ドイツに配属されているが休暇中だったとのこと。米軍は死亡を発表したが事件については言及しなかったそうだ。
テスラ車は監視されている
今回のニュースで警察はテスラ社の情報提供に感謝していた。車両テレメトリシステムと呼ばれるものが搭載されており乗っていた人たちの行動履歴の捕捉が容易だったようだ。テスラ社は事件解明のために積極的に情報提供を行ったとのこと。
ただ、冷静に考えてみるとテスラ社はいつでも乗っている人の行動履歴を追うことができるのだなあと感じる。特にアメリカ合衆国においてイーロン・マスク氏はトランプ次期大統領と強い結びつきを持っている。社主がその気になれば国家に情報を渡すことも容易ということだ。
両者の共通点
前者は軍歴のある人の起こした事件であり後者は現役の軍人が起こした事件と見られている。また両者とも同じTuroという会社から車両を借りていたという共通点もある。このためメディアはREUTERSが「テスラ車爆発とニューオーリンズ死傷事件、FBIが関連性を捜査」と伝えるように「両者にはなにか共通点があるのではないか」という論調があった。
しかしながら当局は両者のつながりを否定している。背景にあったのがバイデン大統領の「結論を急ぐべきではない」発言だった。純粋に慎重さを求めていると受け取ることもできるが、現在はバイデン政権からトランプ政権への移行期にあたる。
仮に組織的犯罪であるという論調が広まると
- トランプ政権がバイデン大統領時代にアメリカの治安は大幅に悪化したと主張する根拠になり
- 陰謀論者が「ディープステートがトランプ政権への移行を阻んでいる」と主張する
のは火を見るより明らかだ。
外交でもマニュピュレイティブ(人を操作したがる)情報発信が多かっただけにホワイトハウスの政治的意図が気になるところだ。
ただ、当局は「今のところは関連性は見られない」と言っているだけであって実際に関連がないと断定されたわけではない。
新興宗教国家化
ニュー・オーリンズの事件を見ると経済的な不満がアメリカの統治機構に対する破壊願望につながっていることがわかる。当局が見つけたとされるビデオによるとシャムスード・ディン・ジャバール容疑者は当初家族をめちゃくちゃにしようと計画していたようだが「途中で気が変わり」ISISのために殉じることに魅力を感じるようになったようである。
経済的な行き詰まりから妻と離婚しイスラム教の教えにのめり込んでいった。
本来のイスラム教は穏健な宗教だ。このため彼がモスクに救いを求めていればまた違った道があったかもしれない。しかしオンラインにはISISの過激な思想も溢れている。宗教的バックグラウンドのない人には穏健なイスラム教と過激思想の区別はつかないだろう。
ただ、これはイスラム教固有の事情とも言い切れない。つまり伝統的な教えから切り離されたキリスト教徒も同じような過激化したキリスト教に洗脳されやすいということだ。トランプ次期大統領を支持する人たちの信仰を見ていると「異教徒の排除」が本来のキリスト教の教えなのだろうか?と疑問を抱くことがある。
伝統と切り離された革命国家が宗教回帰するとおそらく我々が考えているよりも危険な状態になるのではないかと感じる。