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「今のアメリカ人は怠け者だ」 トランプ氏側近の発言が物議

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トランプ支持者たちは今ある問題に揺れている。それが高度技能移民の受け入れだ。トランプ支持者の大半は中流階級のアメリカ人でありトランプ次期政権がアメリカ・ファーストの政権になると期待している。しかし財政的にトランプ選挙を支えてきたのはイーロン・マスク氏やラマスワミ氏などの「新アメリカ人」だ。

この金持ち「新アメリカ人」が「普通のアメリカ人」に対して「優秀さよりも凡庸さを重視している」と言い放ったのだ。これまで選挙キャンペーンを支えてきた人たちは今頃頭を抱えているだろう。また、民主党の支持者たちは内部分裂をチャンスだと捉えている。

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きっかけはイーロン・マスク氏とラマスワミ氏のH-1Bビザ擁護発言だった。技能を持った人たちを受け入れる3年のビザだが3年間で実績を付けて永住権につなげる人が多い。イーロン・マスク氏は南アフリカからの移民でラマスワミ氏もインド系アメリカ人の企業家だ。

ラマスワミ氏は「アメリカ人は怠け者になった」という趣旨の発言をしている。移民などの人々のうち内心でこう思っている人は多いだろうが普通は決してこんなことは口にしない。

ラマスワミ氏は「米国の文化はあまりに長い間(少なくとも90年代以降、あるいはもっと長く)、優秀さよりも凡庸さを尊重してきた。この傾向は大学ではなく、若い頃から始まる」とつづり、「数学五輪のチャンピオンよりも学生パーティーの女王、卒業生総代よりも体育会系を称賛する文化からは、最高のエンジニアは生まれない」と指摘した。

マスク氏とラマスワミ氏、外国人労働者ビザを擁護 トランプ氏支持者の反発招く(CNN)

当然こうした発言を快く思わないアメリカ人は多い。一連の発言は「アメリカ・ファースト」を訴える保守系の識者たちから反発を受けている。

トランプ候補はこれまではこうした分断を選挙キャンペーンに利用してきた。白人たちの優越感場を刺激すると同時にアメリカに根づきつつある非白人系の人たちにも「これ以上新しい移民が入ってくるとあなた達の優越的地位が奪われますよ」などと宣伝している。

この巧妙なメッセージをコントロールしていたのが選挙対策の責任者のスーザン・ワイルズ氏だ。古くから共和党の選挙戦略に関わっており共和党の支持基盤を維持したまま投票資格のある移民系の人々も取り込んでいる。

イーロン・マスク氏やラマスワミ氏が直接SNSで有権者とやり取りを始めてしまったことで「ゲートキーパー」だったワイルズ氏の影響力が落ちている。結果的にコントロール不能になり、トランプ支持の「普通のアメリカ人」と金銭面でトランプ氏を支えてきたお金持ち企業家との間に分断が生まれてしまったことになる。

イーロン・マスク氏の移民優遇発言に怒った保守系の識者たちがマスク氏を攻撃するとマスク氏は彼らの収益源を止める作戦に出た。少なくとも14人の収益化アカウントを差し止めたことで保守系の人たちがマスク氏を攻撃しはじめたそうだ。これまでセンサーシップに反対してきたと言われるマスク氏だが今度は保守系識者たちからセンサーシップを批判されることになりそうだ。

トランプ次期大統領はおそらく政策には興味がない。また選挙キャンペーンのメッセージングを仕切ってきたのも彼ではなくワイルズ氏だ。

今回は「マスク氏を支持する」と表明してしまい、アメリカ・ファーストを期待する支援者たちが落胆しているようだ。トランプ氏はH-1Bビザを守るために必要なら戦争すると表明したそうだが「一体何と戦うつもりなのだろう」という気になる。

当然民主党側はこれをチャンスと捉えており「事実上はマスク大統領なのだ」などと宣伝を始めた。マスク氏の影響力の拡大を恐れた自分大好きのトランプ次期大統領がマスク氏を攻撃するのを待っているのだろう。

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