様々な情報と憶測が飛び交ったカザフスタンの航空機事故に進展があった。プーチン大統領がアゼルバイジャンの大統領と会談し謝罪した。作動までは認めたようだが誤射は認めなかった。いずれぬせよ事実上はロシアがアゼルバイジャンの航空機を撃ち落としたと認めたことになる。
時事通信は次のように書いている。撃墜したと認めなかったという内容。
発表では、アゼルバイジャン側が訴える「ロシア軍の防空システム誤射」だったかどうかに触れていない。ロシア側は調査結果が出るまでコメントしないと説明してきた経緯があり、撃墜か否かの公式確認は避けつつ、相手国からの謝罪要求に応じた格好だ。
プーチン氏、アゼルバイジャン大統領に謝罪 航空機墜落「悲劇的事件」(時事通信)
REUTERSは少し書き方が違っている。タイトルは「プーチン氏、旅客機墜落でアリエフ大統領に謝罪 防空システム作動」となっている。つまり防空システムがアゼルバイジャン機を撃ち落としたことを認めていることになる。
当初はこの記事を読んで「誤作動」を認めたのだと思った。しかし、落ち着いて読んでみると「誤」とは書いていない。つまりアゼルバイジャン機は迎撃の巻き添えになった可能性があるということだ。
BBCは当初からかなり分析的な報道をしている。かなり理屈っぽい印象だが何が起きていたのかがよく分かる。
ロシア南部ロストフ州からチェチェン共和国にかけてはウクライナからのドローン攻撃が予想された。このためロシアの航空当局は領空を閉鎖していたそうだ。しかし、実際にはアゼルバイジャン航空はチェチェン共和国まで到達しているのだから、「閉鎖措置」がアゼルバイジャン側に伝わっていなかった可能性がある。それだけ切羽詰まった状況になっていたということだ。
加えて、チェチェン共和国上空は霧のかかった見通しの悪い状態だった。
クレムリン(ロシア大統領府)は墜落についてコメントを避けている。しかし、ロシア連邦航空運輸局(ロサヴィアチア)のドミトリー・ヤドロフ長官は、事故当時のグロズヌイは「非常に複雑な」状況下にあり、領空閉鎖プロトコルが敷かれていたと述べた。
アゼルバイジャン旅客機墜落、ロシア関与の可能性と米政府幹部(BBC)
こうした状況下で叱責されることを恐れたロシアの航空当局は「こんなややこしいときに飛んできたアゼルバイジャン航空が悪い」というコメントを出していた。機長はすでに亡くなっており「死人に口なし」という状況。
声明は、航空会社があるアゼルバイジャン側が訴える「ロシア軍の防空システム誤射」には触れていない。空港周辺は濃霧が立ち込めていた上、墜落したカザフ西部への行き先変更は「機長の判断」と主張しており、責任転嫁を図る姿勢がにじみ出た。機長も副機長も死亡している。
旅客機「撃墜」巡りロシア釈明 死亡機長に責任転嫁(時事通信)
アゼルバイジャン航空側は「どうかロシア領空に下ろしてくれ」と懇願したようだが認められない。結果的に459キロメートル離れたカスピ海対岸まで飛ばざるを得なくなり力尽きて不時着した。
事態が錯綜する中でそれぞれの担当官が自己保身に走り結局トップが事態収拾を図らざるを得なくなるという状況は終戦直前の日本軍の状況に似ている。日本では天皇が御聖断を下すまで終戦ができなかったがロシアではプーチン大統領が事態収拾を図らざるを得なかったということになる。仮にウクライナの戦争でロシアが末期的な状況に陥りプーチン大統領が不在になると核兵器を持ったロシアの混乱を抑えることができる人はだれもいなくなるだろう。
アメリカ合衆国側は当初からロシアの関与を仄めかしていた。アゼルバイジャンは民族的にトルコと近いがトルコはNATO加盟国なのでアメリカからの情報が入ってくる。アゼルバイジャンは「国際的な調査が必要」としたうえで証拠や証言などを積み重ねていたようだ。ロシア側は一度は「身内だけの調査」にこだわったようだが外圧を受けて方針を転換せざるを得なくなったことになる。
アゼルバイジャン・メディアの報道によると、ロシアとカザフスタンはいずれも、ロシアが支配的な地域組織「独立国家共同体(CIS)」の委員会に事故調査を行わせることを提案している。一方で、ゼルバイジャンは、国際的な調査を求めている。
アゼルバイジャン旅客機墜落、ロシア関与の可能性と米政府幹部(BBC)
しかし最後まで「どのように説明するのが良いのか」を探っていた可能性が高い。真実や事実よりも「どう取り繕うか」が重要な国なのだろう。
ロシアの首都モスクワでは、クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ぺスコフ報道官が、「(事故)調査の結果が出る前に、何らかの仮説を打ち出すのは間違っている。我々は当然、そのようなことはしないし、誰もするべきではない。調査が完了するまで待つ必要がある」と述べた。
アゼルバイジャン機墜落、「ロシア防空システムが原因」との指摘 「仮説」広めないようロシアは警告(BBC)