8,600人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

尹錫悦大統領が「選挙は盗まれていた」と真顔で指摘

Xで投稿をシェア

そろそろ韓国の状況ばかり書いていて飽きられるのではないかと思っている。「長い低迷状態に入り余談を許さない状況だ」で終わりにしたいのだが次々と新事実が語られて目が話せない状況だ。

ついに大統領が「選挙は北朝鮮に盗まれていたかもしれない」といい出した。もう泥沼だ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






韓東勳「国民民主党」代表の戦略は大統領から個人的に権限を委譲されたと言い張り国権を掌握することだった。これは第2内乱などと野党から攻撃されていた。しかし、内乱が成功するためには尹錫悦大統領が黙っている必要がある。ところがこの戦略があっけなく崩壊した。尹錫悦大統領が声明を発表し「俺は戦うぞ!」と主張したからである。

REUTERSは次のように書いている。要するに選挙が北朝鮮に盗まれたと言っている。もともと大統領一派は陰謀論めいた動画チャンネル(特に騒乱の影には従北勢力がいるという内容のもの)を見ていたと言われていたがどうやら本当だったようだ。アメリカ合衆国で言えばトランプ大統領のお気に入りがディープステート陰謀論であるというのに似ている。

尹大統領は12日、国民向けにテレビ演説を行い、先週の戒厳令宣布について、民主主義を守るための合法的な措置だったとして正当性を主張し、野党を「反国家勢力」と非難したほか、北朝鮮が韓国の選挙をハッキングしたと述べた。

韓国大統領「最後まで闘う」、野党は弾劾案再提出 与党分裂(REUTERS)

KBSはもう少し詳しく書いている。選挙管理委員会の電算システムを調べようとしたようである。普通に考えれば「出口調査まではハッキングできない」と気づきそうなものだが、あるいはマスコミもグルになっていると考えているのかもしれない。

尹大統領は、去年下半期、選挙管理委員会をはじめとする国家機関に対し、北韓によるハッキング攻撃があったことを国家情報院が発見し、電算システムの安全性を点検しようとしたものの、選挙管理委員会が、憲法によって独自の権限を付与される「憲法機関」であることを理由に拒否したとして、「選挙管理委員会は、令状による家宅捜索や強制捜査が事実上、不可能だ」として、戒厳軍を投入した理由を説明しました。

尹大統領「弾劾や捜査に立ち向かう」 早期退陣を拒否(KBS)

近視眼的なマインドセットに囚われた大統領が高校時代の同窓生たちとの間で陰謀論に絡め取られてゆくさまは集団思考の恐ろしさを示す教科書に乗せたいくらいである。

しかし、これは韓国政治の混乱のほんの一部にしかすぎない。

「第二内乱」計画が破綻した韓東勳代表(自身は国会議員ではない)は再び弾劾賛成を呼びかけた。8名が賛同する必要があるが造反者は7名になっているという。しかしながら議員団の代表は尹錫悦派になった。つまり国民民主党の中に「尹錫悦派閥」と「韓東勳派閥」が生まれつつあるということになる。

一方で野党「祖国革新党」の代表を務める曺国(チョ・グク)元法相の有罪が確定した。今後7年間は被選挙権が制限されるという。李在明「共に民主党」代表も同じような公民権停止の危機に瀕しており「自分で自分を恩赦したい」という意向を持つ。軍の一部が命乞いのためか「大統領は政治家たちを国会の下にある地下施設に監禁しようとしていた」と告げ口をしており、大統領内乱を印象付けたい野党幹部たちが盛んにこれを政局化しようとしている。

このように韓国政界は

  • 誰がどのように内乱(非常戒厳令)に関わったか?
  • 次の大統領は誰か?

という2つの問題を軸に回り始めている。大統領側は「弾劾裁判を辞さず」という方針のため裁判に不利にならないように皆必死である。

金龍顕前国防部長官は北朝鮮との間に局地戦を起こし有事状況を作ったあとで議会を停止しようとした疑いが持たれている。無人機を飛ばし北朝鮮を挑発した可能性があるのだが、軍は「ノーコメント」としている。事実無根とは言えなかったことになり核兵器を持っている北朝鮮を巻き込んだ朝鮮有事一歩手前だった可能性もある。

また韓悳洙国務総理は内乱(非常戒厳令)を共謀または容認した可能性がある。鍵になるのが5分間の「閣議」だが議事録は残っていないそうだ。記録は証拠として採用される可能性があるため余計なものはなかったことにしたいのだろう。

与・野党と大統領がそれぞれ自分勝手な主張を繰り返し、巻き込まれた国務委員たち(一部はすでに逮捕されている)と軍も命乞いのために様々な情報発信をしている。これが過熱気味にマスコミで伝えられ、韓国は政治家も有権者も一種の興奮状態に陥っているようである。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

“尹錫悦大統領が「選挙は盗まれていた」と真顔で指摘” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    アメリカのトランプ大統領の場合、ディープステート陰謀論に基づく主張を行っていても、ある一定数の熱狂的な支持者がいることは報道やSNSで知る機会があります。しかし、今回の韓国の場合だとそういう熱狂的な支持者がどれぐらい存在するのだろうと思いました。印象としては、戒厳令をだした人たちを支持する人たちは極僅かなんじゃないかなと思いました。
    そんな状況で、合う言う強硬的な手段をとるのは、正直に言って時流を捉えるのが下手すぎるし、陰謀論を活用するのではなく飲み込まれてしまっている感じがして、こんな人が政治の世界にいるが恐ろしく感じますね。

    1. ちなみに尹錫悦大統領の支持率はまだ11%ほどあるそうです。(ギャロップ調べ聯合ニュース報道)
      https://www.yna.co.kr/view/AKR20241213052500001?input=1195m

      > 대통령 직무 수행 긍정 평가 이유로는 ‘외교'(22%), ‘비상계엄 선포'(10%), ‘부정부패·비리 척결’, ‘열심히 한다/최선을 다한다’, ‘공정/정의/원칙'(이상 4%) 순으로 나타났다.

      支持する理由は外交22%、非常戒厳令10%ということで「不正腐敗追求など」に期待するという声も4%ほどあるみたいですね。多分11%の内数なのでしょうが個人的には非常戒厳支持も意外と高いんだなあと思いました。