週末「韓国の事情に着いてゆけなくなった」という声をよく聞いた。まとめて読もうとしたが何がなんだかわからないというのだ。そもそも国で一番えらい人であるはずの大統領がなぜ内乱(一部ではクーデターとも言われているが)を起こさなければならないのかが理解できないという人が多いようである。
さらにでてくる登場人物の「キャラ」がとにかく濃いためドラマのような展開になっている。おそらく「第一話」から見ないとわからないだろうなあと感じる。とにかく日本の常識は忘れて「そういう世界線の物語なのだ」と理解したほうがいい。
今回は金龍顕前国防長官と韓東勳「国民の力」代表について触れる。
金龍顕前国防部長官が北朝鮮攻撃を命じ合同参謀が拒否していたとする報道がある。
タイトルは「[단독] 계엄시도(攻撃試図) 있었다(あった)‥김용현(キム・ヨンヒョン), 北 ‘원점타격’(北「原点打撃」) 지시(指示)」である。
汚物爆弾が飛んできたら「発射ポイント=原点」を攻撃せよという司令があったという内容。
野党の告発なので全面的に信じるわけにも行かないのだろうが「すわ朝鮮半島有事」になってもおかしくなかったということになる。金龍顕前国防部長官は出身高校で派閥を作っていたという報道も出ている。
すでに内乱罪で告発されており「自ら出頭した」そうだ。潔く自分から出頭することで後輩の尹錫悦氏をかばっているのかもしれないが、いささかヒーロー気取りという気もする。
選挙管理当局にもストーミングしているのだから、北韓勢力(従北というそうだが)が選挙不正を働き野党を操っていたと本気で信じていた可能性もある。仮にそうであれば「内乱ではなく確信犯」ということになる。つまり悪いことをしたという気持ちはなく「裁判を通じて正当性を主張する」のかもしれない。いずれにせよ高校の先輩後輩がつるんで集団思考に陥り周りが見えない状態になっていた可能性が高い。
ただし「ドラマのキャラ」という意味では韓東勳氏には負ける。前回までの記事では「かつての上司と政党の板挟みになったかわいそうなキャラ」として描いたがそんなタマではなかったようだ。
韓東勳氏は実は国会議員ではない。22代総選挙への出馬も要請されていたようだがそれを断っている。おそらくは次期大統領を目指しているのだろう。今のまま現在の大統領が失脚し大統領選挙が行われると李在明「共に民主党代表」が大統領になる可能性がある。
そこで大統領と個別に会談し「個人的に」権限移譲を受けたことになっている。韓悳洙首相と組んで「政権を維持する」といい出した。韓東勳代表は「憲法を改正し大統領任期を5年から4年に短縮したうえで地方選挙と同時に大統領選挙をやればいいのではないか」などと訴えている。
当然、国会議長はカンカンだ。韓国の憲法に「大統領が権限を個人的に移行できる」などという規定はない。元上司(尹錫悦)が元上司なら、元部下(韓東勳)も元部下だ。
これに対し、禹元植国会議長は8日の会見で「大統領の権限を首相と与党が共同で行使しようというのは明白な違憲だ」と指摘。「国民主権と憲法を無視した極めて傲慢(ごうまん)な行為だ」と批判した。その上で、大統領の職務を即刻停止させ、混乱収拾に向け与野党が協議するよう訴えた。
尹氏排除、与党と首相で国政 国会議長は「違憲」と批判―韓国(時事通信)
与党「国民の力」の中からも反発がでているそうだが、これも当然といってよいだろう。まさに「大統領ごっこ」である。
「国民の力」は少数与党状態にある。このためどうすれば国民の支持を回復できるかを考えたほうが良さそうだ。しかしながら韓東勳氏は「この政局をどう使えば自分のトクになるか」を考えている。野心家の考えることは我々の想像を超えており恐ろしい限り。
大統領の権限を維持し李在明氏とともに民主党を政局から排除することで自分が救国のヒーローになろうとしている。つまり「尹錫悦より俺様のほうがうまく政権を回せる」と考えている可能性もある。そうすれば国民は自分の実力に気が付いて次は大統領になれるかもしれない。
ただ外見的に見れば予算審議はストップしたままであり「憲法まで変えて権力にしがみつきたいのか」と反発される可能性のほうが高い。権力欲に取り憑かれ周りが見えなくなっていると言える。
では、共に民主党に政権が渡ったほうがいいのか。日本では「反日政権」という評価もあり日米韓同盟に悪い影響が出るのではないかなどと囁かれている。しかし実際の問題は別のところにあるようだ。
李在明代表は裁判を抱えており現在係争中。
これとは別に曹国(チョ・グク)という人がいる。日本では一時「タマネギ男」と報道されたが今は別の政党の党首になっている。
実はこの人は奥さんがすでに有罪判決を受けており、自身も二審まで有罪判決がでている。実は12日に最高裁の判決が言い渡されることになっているそうで、有罪になれば国会議員として失職する。このため曹国さんは「国の有事であるため裁判なんかしている場合ではない」として判決の延期を訴えているそうだ。
韓国の大統領はほぼ例外なく訴追され有罪判決を受けることになっている。自らが主犯だったケースもあるし巻き込まれた人もいる。こうした腐った状況を打開すると期待されたのが検察出身の尹錫悦氏だった。
そもそもなぜでてくる登場人物がすべて野心家でなおかつ何か後ろ暗い裁判問題を抱えているのかはさっぱりわからない。
とにかく韓国の民主化はそんな調子のようだ。日本の常識を当てはめて考得ても理解は難しいため「世界観を織り込んで」理解したほうが作品としては楽しめそうだ。
ただし国民生活には混乱があり韓国人は政治に裏切られたと考えているようだ。また「まかり間違えば朝鮮有事に発展していた可能性」も否定できない。「まるでドラマみたいだ」などと言っていては怒られるかもしれない。
今回の件で軍隊の内部もかなり混乱しているようだ。だが政治が「ドラマ化・劇場化」する中でメチャクチャな命令がくだされていたと考えると、軍隊が持つ冷静さだけが「韓国の民主主義破壊」と「北朝鮮との衝突」を回避したといえる。言うまでもないことだが北朝鮮は核兵器を持っいて背景にはロシアの支援もある。