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武器化されるアメリカの司法と予防的恩赦(Preemptive Pardon)

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バイデン大統領が息子のハンター・バイデン氏を恩赦した波紋が広がっている。トランプ次期大統領も恩赦を連発するのではないかと言われているからだ。

しかしそれだけではなく政敵追放のためにありとあらゆる手段を使うのではないかとも予想されている。

バイデン政権の武器は限られているため予防的恩赦の検討が行われているとREUTERSが伝えているが実現するかは未知数だ。

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韓国の民主主義の未成熟を嘆く人が持ち出す言葉に「韓国では大統領が変わるたびに大統領が逮捕される」というものがある。ところがどういうわけかアメリカ合衆国がそのような状態に近づきつつある。政権が変わるたびに相手側から法的報復を受けるという状態になっているのだ。

韓国は激しい報復合戦を終わらせるために検察の権限が縮小された。今回大統領の非常厳戒令発動の一つの要因として、尹錫悦大統領が検察を武器化できなかったために自らが「正義の検察官」となって国会議員を制圧しようとした可能性が挙げられる。

一方でトランプ次期大統領はFBIの解体などを仄めかしている。その一方でDOGE(政府効率化省)を使って「無駄な」事業をあぶり出す計画もある。ポリティコに次のような一節がある。6桁の裁判費用が必要となるためにできるだけ高額の報酬が得られる仕事を探して備えようとする人も出てきているという。

Especially for those officials without significant means, the specter of six-figure legal bills in the coming years is unnerving. Some Biden appointees, I’m told by people facing scrutiny, are already considering taking the best-paying jobs next year in part to ensure they have the resources to defend themselves against any investigations.

Biden White House Is Discussing Preemptive Pardons for Those in Trump’s Crosshairs(Politico)

予備的恩赦は大統領権限に含まれるそうだがほとんど実施された前例がないそうだ。加えてこの予備的恩赦には一つ大きな欠点がある。予備的恩赦をするためには恩赦する罪状が必要となる。当然「罪状」を告げられた人は(予備的なので事件化されていない)「あなた達がやってきたことはグレーでしたが許してあげます」と突きつけられてしまう。これを正面から受け入れるのは難しいだろう。

法制度・司法制度は「政治の上位」に置かれており誰にでも平等であるべきだと考えられている。これを法の支配・法の平等という。

しかしそのためには「誰もが納得する善悪の基準」が必要だ。アメリカ合衆国ではこの前提がすでに崩れていることがわかる。民主主義の規範国であるべきアメリカでは法律が武器化され両陣営ともに正常な判断能力を失いつつあるということだ。

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