ジョージアのレジャバ大使がネット番組ReHacQsに出演し「親ロシア派と言わないで」と訴えていた。だが、実際に大使が一体何を考えているのかがよくわからない。ジョージアという国が置かれた複雑な状況がよく分かると同時に「親XX派」という言葉の曖昧さも伝わってくる。
人口400万人弱のジョージアは「旧ソ連圏の」と紹介されることがある。だがレジャバ大使は世界最古のキリスト教国であるという点を強調していた。カルトヴェリ諸語という独特の言語を残した地域でもある。山岳地帯にあるために言語がスラブ語、イラン語、トルコ語などに置き換わることはなかった。
レジャバ大使の表向きのミッションは「「ジョージアの夢」は親ロシア派の政党ではなくコバヒゼ首相はEU加入の手続きを遅らせたことはない」と説明することだったようだ。基本的にXでの10分間の説明と同じでありコバヒゼ首相の主張をトレースするものだ。大使として当然の責務と言える。
ところがこの主張は高橋弘樹氏の指摘で大きく展開する。このプレゼンテーションの一番の山場だ。テレビマンは「ラテ欄で言えないことを主張するために縦読みを使います」と発言する。「信ジな言で」となり「信じないで」と読める。大使はこの指摘を否定も肯定もしなかった。
総選挙の結果を受けてコバヒゼ首相はEUからの加盟手続きを遅らせると宣言した。しかし騒ぎが大きくなると一転してそんな事は言っていないと前言を撤回している。ビデオによる確実な証拠が残っている。翻訳による誤りではない。首相の英語は極めて堪能だ。
つまり、レジャバ大使は表向きはコバヒゼ首相の発言をトレースしつつ実はそれに反するメッセージを発しているという可能性がある。
ジョージア外務省はかなり混乱しているようで駐欧米大使の中には辞任をした人達もいると伝わる。彼らは何も対外発信をしておらず真の動機はよくわからない。BBCとAPによるとアメリカ・チェコ・オランダ・イタリア・オランダ・リトアニアの大使と外務副大臣・外務次官(同一人物なのか別々の人たちなんかはわからない)が辞任しているようだ。コバヒゼ首相の動機はよくわかっていないのだが結果的に国内に大きな混乱を引き起こしている。
プレゼンテーションの中で大使は「西側からの上から目線」を批判的に扱っている。番組側も「EU加盟国の中にも同じことを感じている人たちがいる」とバックアップをするコメントを出している。アメリカ合衆国も連邦に対する懐疑論が出ておりこれは世界的な兆候と言えるかも知れない。いわばグローバリゼーションや過統合の反動が出ているのだ。
ロシアに領土を奪われたジョージアが自国を存続するためにEU・NATOを利用したい。しかしEU側は自分たちの「意識高い系」の要求を突きつけてくるばかりでジョージアの伝統(世界最古のキリスト教国であり、各地で滅んだであろう古い非インド・ヨーロッパ語族の言語を未だに保持している)を尊重してくれないばかりかジョージアが持つ危機感も共有してくれない。
さらにウクライナの事情もジョージア人を刺激している。欧米は「ウクライナに多額の支援をしてあげた」とはいうものの、結果的にウクライナは多大な犠牲を強いられ領土を奪われつつある。これだけの代償を支払ってもなおウクライナはNATOにも入れてもらえない。トランプ氏が大統領になれば見捨てられる危険性がありゼレンスキー大統領は今でも叫びながらNATOの扉を叩き続けている。
ジョージアは巻き込ま不安感じEU統合プロセスを中断した可能性もあるが、途端に「ロシアに接近するに違いない」という悪意のあるキャンペーンが始まっている。
- 一体どうしろというのだ?
という気持ちになっても当然であろう。
これはジョージアだけの問題ではないのだろうが古くから様々な異民族に蹂躙され支配を受けてきた民族は表向きは非常に友好的だが腹の底は決して見せないようにみえる。また日本人のように相手に自分の気持ちをわかってもらおうというような仄めかしもない。
レジャバ大使も真面目な顔をしたりにっこりしてみたりと表情を変えはするのだが決して何が本心なのかはわからない。大使の日本語は極めて堪能なので「本音がわからない」という点が浮き彫りになる。
実際に彼が何を訴えたかったのかは「プレゼンテーションを見て判断してほしい」とは思うのだが1時間30分というプレゼンテーションなので見るのはかなり大変かもしれない。全部見終えたとしても決してすっきりと「わかった!」という結論は得られないのではないかと思う。