SNSのXで一時ICBMがトレンドワード入りしていた。日本では「明日学校が火事になればいいのに」程度の興味がある人が多いのかも知れないが、背景を探るとそれなりに哀しい事情が見えてくる。
一時REUTERSの報道などをもとに「ロシアがICBMを使用したようだ」との報道が駆け巡った。SNSのXではICBMがトレンドワード入りしている。第三次世界大戦は現実の脅威というよりも「明日学校が火事になればいいのに」程度の扱われ方をすることがある。退屈な生活にスパイスを求める人が増えているのだろう。
しかし、英語系のメディアでは次第に「これはICBMではないのではないか?」とする報道が増えてきた。複数の専門家が中距離弾道ミサイルだったとしている。そこでオリジナルのニュースを見ると「ウクライナ空軍」の発表になっている。
ではなぜウクライナ空軍はICBMが発射されたと主張する必要があったのか。
ゼレンスキー大統領はFOXニュースの番組で「アメリカが資金提供しなくなればウクライナは戦争に負ける」と主張したとBBCが報道している。FOXニュースは共和党の支持者たちが主に見ている放送局である。意識高い系で軍産共同体に支援された戦争狂のバイデン政権がアメリカの血税を無駄に使っていると漠然と考える人が多い。つまり、ゼレンスキー大統領がいくらFOXニュースの視聴者に民主主義の大義を訴えてもその声が届くことはないだろう。
中距離弾道ミサイルとICBMの違いとはなにか。中距離弾道ミサイルはアメリカには届かないが核兵器を搭載できるICMBならアメリカ合衆国に到達する可能性がある。つまり支援の打ち切りを恐れるゼレンスキー大統領がアメリカ人に危機感を持たせるためにこのように主張している可能性があるということだ。
さすがにBBCは冷静で「ICBMの「特徴」があった」とゼレンスキー大統領が主張したと書いている。つまりゼレンスキー大統領のコメントはゼレンスキー大統領の主観であって事実とは言えないと伝えていることになる。
CNNは「我々が知っていること(Putin says Russia launched a new missile in Ukraine. Here’s what we know)」としている。双方の言い分を両論併記して「わかっていないこともある」と示している。
CNNは「なぜこれが重要なのか」というセクションを作っている。バイデン大統領が状況をエスカレートさせる中で新しいミサイル攻撃があったとしたうえで、これが核兵器搭載可能なICBMであるかを気にしている。
だがなぜそれを気にしているかは書いていない。要するに「アメリカ合衆国の安全に関係があるのかないのか」を知りたがっている。なければそれはウクライナの事情であって優先順位はそれなりに低いということだ。
このように「伝わっていること」よりも「書かれていないこと」のほうが真実を包含している場合がある。アメリカ合衆国の有権者は「アメリカに関係がなければウクライナなどどうなってもいいのではないか」と考え始めており、ウクライナもそれに気がついているのだ。