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Recess Appointmentトランプ大統領の司法省報復人事とその行方

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自らも訴訟を抱えているトランプ次期大統領にとってゲーツ元下院議員はうってつけの長官候補だ。ゲーツ氏は本人も疑惑を抱えておりトランプ氏と共犯関係にある。

だがこの人事は「そもそもこのような人事が議会承認を受けられるか」という問題に直面する。議会共和党でも疑問視する声が出ているという。

ところがここにきて「議会承認は回避できる」とする意見が出てきた。それがRecess Appointment(休会承認)である。本当にそんな魔法が存在するのか。調べてみた。

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トランプ氏の人事には「中核課題」と「劇場課題」がある。ロバート・F・ケネディJr.氏の厚生長官人事は劇場課題だ。イーロン・マスク氏の「政府効率化省」も劇場課題と言ってよい。マスク氏の役割は憲法などで定められた正式なものではなく単なる「推奨」にすぎないため議会がそれに従う必要はない。

こうした劇場型の人事の目的は政策実現ではなく有権者の期待をトランプ政権に惹きつけておくことだろう。

ところが司法省人事はこれとは異なっている。トランプ次期大統領はすでにニューヨーク州で有罪評決を受けており「判決待ち」状態にある。これとは別の訴訟や疑惑も抱えている。つまり絶対に失敗してはいけないのである。

大統領任期は4年で切れる上に再選はできないので自分が在職中にこれらをすべて握りつぶしてしまう必要がある。また大統領在職中に新しい疑惑が出てくるかも知れない。このためトランプ氏は決して自分を裏切らない人物を任命する必要があった。こういった場合「自らと同じ利益を持つ人」を抱き込むのがよい。

下院議員のゲーツ氏は様々な問題を抱えており倫理委員会での調査が進んでいた。司法長官候補になったことでいち早く下院議員を辞任。このため調査は打ち切られた。常々司法省関連の役所が自分に逆らってきたら潰すなどと物議を醸す発言をしていてトランプ氏の利益に最もかなった人選と言える。トランプ氏は更にニューヨーク州での裁判で弁護団に入っていたトッド・ブランチ氏を「司法副長官」という役職に指名したそうだ。また同じ弁護団のエミル・ボーブ氏を「司法副長官代理」に指名した。副長官は司法省の11万人以上の職員を監督しFBIなどの捜査機関を監督するという。副長官だけでなく「代理」まで立てる念のいれようだ。

司法長官、司法副長官人事は上院の承認が必要になる。ところが一部「最大二年間は上院の承認をかわせる」と主張する識者がいる。「本当にそんな魔法のようなことができるのだろうか」と疑問に思った。

現在は便利な時代になった。まずChatGPTで「これは本当か?」と聞いてみた。Recess Appointmentという制度があるそうだ。上院が集まるのが難しい時代に(各州の議員たちが参集する必要があった)臨時措置として憲法に盛り込まれたのだという。規定によれば「次の議会が終わるときまで」有効になるという。

ここで不思議に感じることがある。つまり上院が議会を参集して人事を不承認にしてしまえば大統領の人事をブロックできるはずだ。しかし、ChatGPTによると上院の会期は1月に始まり2年間続くという。

ここまでわかればあとはキーワードを使ってGoogleに聞いてみるとよい。ガーディアンの記事が見つかった。

  • ゲーツ氏の人事案に一部の共和党上院議員は衝撃を受けた
  • 人事権は大統領にあるが憲法は上院の助言権限を保証している。今回はこれが極めて重要だとメイン州選出の議員は指摘する。
  • ここでトランプ氏は「休会任命」を提案した。
  • 憲法第二条第二項は上院の助言権限を規定している。上院議員の51人(過半数)の支持が必要になる。
  • しかし憲法第二条第二項は休会任命についても言及している。休会中に空席がある場合に利用でき次の議会の会期末まで有効になる。そしてその会期末は2026年末である。
  • この規定は議会が頻繁に開かれていなかった時代の名残であり現在は時代遅れになっている。
  • しかし、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ大統領もこの規定を利用している。
  • オバマ大統領は憲法違反の判決を受けている。休会は10日以上必要と憲法は指摘した。
  • 上院は共和党が支配しているため、そもそも休会任命に頼るかどうかは未知数だ。

ポイントになるのは上院の会期が1月に始まり2年間続くというものだ。また急回は10日以上必要なので上院共和党が本気で大統領人事をブロックしたければ10日以上お休みがでないように議会を開催し続ければいい。これは本会議ではなくてもかまわないのだそうだ。

いずれにせよ、トランプ次期大統領がどのような戦略を選択するかで「どの人事が劇場型(つまり実現しなくても別に構わない)でどれが中核(つまり絶対に実現したい人事)なのかがわかる」ことになる。また上位共和党も本気でトランプ氏に追従するのか何らかの手段で「抵抗を試みるのか」の踏み絵になるということだ。上院を開くかは共和党が決められるので、大統領と上院共和党が結託してしまえば問題の多い人事が承認されることになる。

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