国民民主党が「手取りアップ」のために103万円の壁の打破を目指している。だがこの提案はさっそく厚生労働省に潰されてしまった。130万円の壁があるのは厚生年金を免除されている人たちがいるせいなのだから「年収要件を取り払えばいい」という提案だ。大企業にて最低賃金近辺で働く人たちの年収減が予想される形となった。
共同通信は「議論の曲折」に期待しているが国民民主党も社会保障改革こそが本丸だと息巻いていた立憲民主党も抵抗していない。特に立憲民主党の関心事は「政治とカネ」の問題である。国民の収入にはさほど興味がなく議席獲得のための「プロレス」になっていることがわかるが、アメリカ大統領選挙を参考にするとこの「意識高い系プロレス」は却って野党からの支持者の離反を招くかも知れない。
日本の「税」は「税と社会保険」が分離している。国民は税に関心が高いが社会保険には比較的無関心だ。このため減税提案のあとには社会保険の増額提案が来ることが多い。子ども子育て支援金も「増税メガネ」というあだ名を嫌う岸田総理が医療保険の一部として組み込んだ。こうして国民の手取りは減らされてゆく。
まず国民民主党が単なるインフレ調整を「手取りアップの画期的な手法」と誇大宣伝した。一種の詭弁だが政府が応じてこなかったためこれが「画期的な提案」と一部で持ち上げられていた。
この議論は当初から錯綜しメディアや立憲民主党の一部の議員が「社会保障改革こそが本丸である」として130万円の壁の撤廃を求めていた。
「待ってました」とばかりに厚生労働省が動き出した。そもそも壁があるのは社会保険料を免除されている人達がいるからですとばかりに「106万円の壁」の撤廃を求めている。
- 従業員51名以上の会社で働く
- 週20時間以上働いている人たち
が影響を受ける。
共同通信は
一方、政府、与党は国民民主党の主張を踏まえ、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」を見直し、非課税枠の引き上げを検討中。これに対し厚生年金の年収要件をなくせば、手取り収入が減ることになり、曲折も予想される。
【独自】厚生年金、年収問わずパート加t入 「106万円の壁」撤廃へ、負担増も
と書いている。共同通信が「予想される」と書く場合それは「野党と有権者がこの問題について騒ぐことを求める」というような意味だ。曲折させてくれと訴えているのである。
しかし、国民民主党はこのニュースには反応していない。手取りアップではなく自分たちの交渉能力のアピールと与党とのパイプづくりが優先されているのだろう。マスコミはこれを「部分連合」と言っている。石破政権の延命に部分的に協力する勢力であるという意味合いだ。
早速、自民党と国民民主党の協議が行われたが自民党側の税調は参加しなかったそうだ。石破茂総理と国民民主党が勝手にやっていることであって「インナー」は預かり知らぬということなのだろう。メディアは税調や財務省が国民民主党の提案に対して抵抗するだろうと予想しているが「まずは協議にかかわらない」ことにした。極めて日本らしい受動攻撃性がうかがえる。
年収の壁の見直しを巡り、国民は非課税枠を現行の103万円から178万円に引き上げるよう主張している。自民には税収減への懸念から慎重論が強い。税制改正に関わるため、初会合には国民の古川元久税調会長も同席した。自民の税調会長は出席しなかった。
年収の壁、自・国が来週本格協議 ガソリン減税も、部分連合見据え
一方の立憲民主党も主戦場を「政治とカネの問題」「護憲」「夫婦別姓」としたい考えである。これらの議題を扱う委員会の委員長ポストを奪取した。これが有権者にどのようにアピールするかはを今の時点で予想するのは難しい。
参考になるのはアメリカ合衆国の大統領選挙である。アメリカでは民主党が「民主主義と価値観の擁護」を訴えていた。女性有色人種のエースであるカマラ・ハリス氏は社会的に成功したセレブたちを集めて理想を語るさまはリベラル系のメディアで大いに持ち上げられていた。
だがこの戦略は一部で「一軍女子の女子会のようだ」と言われていたようだ。結果的に「一軍でない女性」がカマラ・ハリス氏に共感することはなく「トランプ氏の勝利」につながっている。
このカマラ・ハリス氏の失敗と同じ風景は日本でも見られた。それが東京都知事選挙の蓮舫陣営の盛り上がりだった。東京は日本で最も先進的な地域で一部ではたいへん盛り上がっていたようだが、結局、無党派層を巻き込んだムーブメントにはならなかった。どこか「キラキラとした」眩しさがあり自分たちと無縁だと考えた人も多かったのかも知れない。
多くの有権者が求めているのが「価値観ではなく生活」であると考えると参議院議員選挙に向けた「劇場化」や「プロレス」は野党支持への追い風にならないのかもしれないと感じる。おそらく一般庶民が政治に期待するものは日米でそう大きく変わりないはずだ。
だがおそらく立憲民主党がこれに気がつくことはないだろう。仮に気がついていたのであれば蓮舫ショックは起きなかったはずである。