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ゴミの島論争:アメリカの不都合な「ポリティカルコレクトネス」の実相

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アメリカ合衆国の大統領選挙まであと5日となった。ハリス陣営の計画ではこの選挙は「分断か統合か」になるはずだったが、バイデン大統領の介入により醜い言い争いに支配されている。トランプ陣営が「プエルトリコはゴミの島」と主張するとバイデン大統領が「トランプ支持者はゴミ」と応戦した。これがアメリカ人の中にある本質的な差別感情を刺激している。まさにパンドラの箱が開いたのだ。

当ブログでは「日本では政策論争が行われない」と嘆いている。だがアメリカはもっとひどいことになっている。

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アメリカ合衆国では人種差別主義者と見られることは社会的な死を意味する。だが人々は何らの偏見を持っている。これを口に出さないことで多人種・多文化の共存をかろうじて守っているのがアメリカ社会だ。だからポリティカル・コレクトネスは重要なのである。

トランプ陣営の戦略は「人々が密かに持っている差別感情」を表に出すことで支持を集めようというものだった。ハイチ系移民はペットを食うなどと主張しコメディアンに「プエルトリコはゴミの島」と発言させた。

バイデン大統領はこれに対応し「トランプの支持者こそゴミじゃねーか」と対応した。支持者がコメディアンを指すのかトランプ支持者全体を指すのかは明確ではない。

ではなぜこれが大きく炎上したのか。

実は民主党の人たちには共和党支援者たちに対する差別感情がある。自分たちは成功していると考える人たちが「共和党支持者たちは知的に劣る敗者」とみなしたがる。共和党の支持者たちは被害者感情を持っている。

トランプ氏は「ハリス氏はあなた達のことをバカにしていて、バイデン氏はそれを代弁しただけだ」と訴えた。トランプ氏の機動力は凄まじいもので発言から24時間経たないうちに「TRUMP」と書かれたゴミ収集車を準備してそこに嬉々として乗り込んでみせた。共和党支持者たちがなぜ自分を支持し民主党を憎んでいるかが彼にはよくわかっているのだ。

この醜いに罵りあいにうんざりしている人達もいる。ニッキー・ヘイリー氏は「女性の有権者が離れる」と表明。シュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事(共和党)も「民主党も共和党も応援しかねるが分断よりはマシだ」とハリス支持を決めた。

結果的にハリスキャンペーンこの罵り合いに巻き込まれることとなり、当初の「分断か融和か」というメッセージの存在感は霞んでしまった。リベラル系のメディアの危機感は相当なものでどうにかしてハリス氏をこの騒ぎから切り離そうとしている。本来はアメリカの政治と関係がないBBCの扱いもハリス氏には同情的だ。

だが劣等感を持っているアメリカ人はマスメディアも「意識高い系で自分たちをバカにしているのだろう」と思っている。だからメディアを信頼しないという人が多い。

さらにIT産業の偉い人たちが「自分たちをバカにしているのではないか」という気分も蔓延している。だからマスク氏の「AIは意識高い系に支配されている」というコメントにも共感が集まる。

「ポリティカリーコレクト(人種・性別・信条などによる偏見・差別のない中立的)であるように訓練される傾向があり、サンフランシスコのベイエリア(Bay Area)で訓練されているAIの多くには、当然ながら、あのかいわいの人々の物の見方が取り入れられている」と主張。

マスク氏、「意識高い系」AIの危険性を警告(AFP)

この最終盤のバイデン大統領の発言は仮にトランプ大統領が誕生すれば後に「オクトーバーサプライズ」とみなされるかも知れない。単にバイデン大統領の失言であればここまで大騒ぎにはならなかっただろうが「分断」の背景をズバリ突いてしまった。

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