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トランプ氏が考える「愛」とバイデン氏が考える「正義」

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現在、アメリカ合衆国は政治的に分断されていると考えられている。かつて「アメリカは分断されている」といっても陰謀論扱いされて取り合ってもらえなかたそうだが今ではそれを疑う人はいない。

ではなぜ分断しているのか。トランプ氏の考える「愛」とバイデン氏が考える「正義」について見てみよう。

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トランプ氏はアメリカには内なる敵(enemy from within)がいるという。内なる敵はトランプ氏が大統領になるのを阻止しようとしている。だが、彼らは敵なのだから軍隊を使って排除しても良い。

一方で議会襲撃が起きた1月6日は愛の日ということになっている。これはトランプ氏を思いやっての行動であり平和的なものだった。確かに中を使った暴力に訴えるものもいたが「愛のあふれる美しい行動」にそんな暴力が入るはずはない。

この「愛の日」発言は日本語では紹介されていないが英語記事を見るとかなり大きく取り扱われている。BBCは「Trump calls 6 January ‘day of love’ when asked about Capitol riot」という記事にまとめている。

一方のバイデン大統領はシンワル氏の殺害を祝福し「正義が実行された」と言っている。

ネタニヤフ首相もビデオ声明の中で成果を強調し「イスラエル国民は自分を選ぶことで正しい道を歩んでいる」と主張した。そして最終目的はイランであるしたうえでイラン指導部の圧政からイラン人を解放しなければならないと主張している。ビデオを直接見るのがわかりやすいがBBCがこの声明を記事にしている。

もちろんネタニヤフ首相がイランの人民から何か頼まれたわけではなく勝手に解放を申して出ている。

トランプ氏の陣営とバイデン氏の陣営は敵対していることになっているため「愛」と「正義」は全く異なったもののように見える。

だが、実際には「自分たちと価値観が同じ人達と価値観が違った人たちを区分する」という意味では全く異なるところはない。結局のところ「価値観が違う人達」は敵と認定されて排除の対象になる。表現が違っているだけで「善悪」を決めたうえで「悪を排除しろ」と言っている。

イスラエルとアメリカはこの点では価値観が共通している。このため、イスラエル情勢はわかりやすく悪化している。駐留軍を攻撃された国連は怒り、ハマスもヒズボラも徹底抗戦を誓っている。ハマスもヒズボラも自分たちは「イデオロギー」と言っている。容易に地上から消え去ることはないだろう。不都合なのは何が正義で何が悪化を決めるのがバイデン氏ではなくネタニヤフ氏であるという点だけだ。

アメリカ合衆国の内部事情は少しわかりにくい。Enemy from withinは外形では区別できない。善悪が決まるのは大統領選挙ということになっているがおそらくトランプ氏側は敗北を認めないだろう。これが泥沼化するのは11月以降であろう。

ただしこの分断にはためらいもある。

CNNはネタニヤフ首相は目標を達成したのだからこの際撤退すべきだと言っている。今なら成果を出した首相として歓迎されるだろうと言っている。だがネタニヤフ首相さえいなくなってくれればリベラルが掲げる人道主義とイスラエル支援・民主党支援が両立でき「良心回路」の疼きは消滅する。

リベラル系メディアは「現在の状況がパレスチナ人の犠牲の上に成り立っている」ことに罪悪感を感じている。トランプ支持の人たちにはこのような「良心回路」は組み込まれておらずしたがって罪の意識に苦しむことはない。

ハリス氏はトランプ・バイデン氏よりも少し若く罵りあいを避けて政策論争を中心に支援を訴えるという方針を取っていた。しかし分断に慣れてしまった民主党支援者たちはこれでは物足りないと考えているようだ。ハリス氏には戸惑いもあるのだろうがここで負けては元も子もない。

米大統領選の民主党候補ハリス副大統領は、男性や共和党員の支持拡大に向け選挙戦の戦略を転換し、共和党候補トランプ前大統領への批判を強めている。世論調査でのトランプ氏の追い上げに民主党内から懸念の声が高まっていることが背景にある。

ハリス陣営、選挙戦の戦略転換 トランプ氏追い上げに懸念

このことから立派な主義主張を掲げるメディアや政治家が「不毛な対立は分断を生むだけ」と考えてもそこから自力で脱却することは難しくなっていることがわかる。

アメリカの有権者たちは愛と正義の陣営に分断されてお互いを罵り合っており、そこから抜け出すことは不可能だ。その間に国際秩序に挑戦するイスラエルは暴走し「アメリカが主催する平和(パックス・アメリカーナ)」を破壊している。

かつてアメリカ合衆国は分断されていると言っても誰も相手にしてくれなかった。今はパックス・アメリカーナが終わりかけているといってもおそらく誰も相手にしてくれないだろう。

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